LTOvs光ディスクの戦いの幕が開いた?
ファイルベースによる映像データの運用時代に本格突入し、どのジャンルでも一番の問題になっているのは映像データの保存/アーカイブの問題だろう。そもそも何をどれだけとっておくのか?どのくらい保存しておくのか?など運用面での問題も多々あるなかで、データファイルは日々増え続けている。デジタル時代のアーカイブメディアの選択をどうすべきかは各部署において、また映画、放送、CM、ドキュメンタリー、業務用ビデオなど、それぞれの分野別においても非常に悩んでしまうところだろう。
HDD保存は別として、いま一番運用されているアーカイブメディアはLTOである。テープメディアであるLTOはその運用効率の良さと、通販でも平均5千円前後、安ければ3千円代から安価で入手できるメディアの安さもあって、ポストプロダクションなどはこのLTOによるアーカイブが主流となっているようだ。
映像アーカイブ専門の対応機器としては、朋栄の「LTR-100HS/120HS」がメジャーな存在として知られている。最新のLTOストレージ規格であるLTO-5 (Linear Tape Open) ドライブを搭載し、1.5TBの記憶容量のビデオアーカイブレコーダである。LTO-5の規格の中で、テープカートリッジをUSBやメモリーカードのように様々なOSが混在するPC環境でも共通のファイルシステムとして扱える”LTFS(リニア・テープ・ファイル・システム)”というファイルシステムの採用で、撮影素材や番組交換用のメディアとしての活用も可能。その他HD/SD-SDI入出力、MPEG-2対応、MXF (OP-1a) ラッピング/アンラッピング機能や、LTO-5に記録されたMXFファイルがノンリニア編集システム等での利用できるなどメリットも多い。
しかしデジタルメディアの最大の問題点は、世代間の互換性という部分が付いて廻る。LTOは現在LTO-5という世代だが、実は2世代前までしか遡ることが出来ない最大の欠点がある。つまり今後の技術進化でLTO-8になってしまえば、論理的には現行のLTO-5のデータを読む事が出来なくなってしまうという。その際は、また膨大な時間と手間をかけてLTOの上位メディアへのコピー作業が発生するわけだ。またテープメディアは摩耗回数に弱いという物理的短所からは逃れる事はできない。
30年以上前のデータを読める光ディスクの利点
こうしたLTOが持つ欠点の払拭案として、今回のIBC2011ではソニーから新たな映像アーカイブシステムが発表された。まだ具体的製品名は付いていないが、単純に12枚の光ディスクを1パックのカートリッジに収めて、ディスクチェンジャー方式で書き込み/読み出しができるというもの。操作端末からの認識は、個別のディスクではなく、1カートリッジを1つの大容量ストレージと見立てて、ファイルベースで取扱いができるというものだ。カートリッジも300GBから1.5TBまでが準備される予定で、ライトワンス方式、リライタブル方式の2タイプが用意され、今後はRFIDなどでのカートリッジ別管理にも対応出来るようにするとのこと。予定で2012年にも販売が開始されるという。
この開発に当たったソニーのシニアビジネスプランナー喜多幹夫氏は、
光ディスクは世代間コンパチブルなメディアであり、いまのPCで30年前のオーディオCDを聞く事ができるなど、保存状態さえ安定できれば実はフィルム以外のメディアとしては耐久年数が最も長いメディアです。またアクセスしたいデータに瞬時にアクセスできるなど、これらの利点は現存する他のアーカイブシステムよりも様々な面で大きなアドバンテージといえるでしょう。
さらにLTOでは品質保持される運用温度は16℃~35℃程度ですが、光ディスクは-10℃~55℃までと、世界のどんな国や環境でも耐えうる非常にアーカイブ向きの条件を備えています。ソニーにはこれまでXDCAM HDの業務用ディスクを開発して来た経緯もあり、今回はこの技術を応用して、この光ディスクアーカイブシステムを開発しました。また従来からある5インチのディスクをベースとすることで生産コストもかなり安くご提供出来るようになります。
この製品はカートリッジ自体が特殊なものになるので、今後OEM化などでどこまで汎用価値が高まるのかが見物だが、もしかなりの安価な製品となれば、業務用にも使える新たなアーカイブシステムとしての市場の広がりにも期待出来そうだ。
LTO vs Optical DISC
この構図が今後デジタルファイルベース時代にどのような市場変化をもたらすのか、注目していきたい。