GoProに魅せられる人々
昨年のInterBEEのGoProブースの様子。初めてGoPro3が展示された
GoProのここまでの急速な進化を予想できた人はおそらくいないだろう。昨年11月のInter BEEで日本に初めてGoPro3の実機が展示され、私もこのカメラのスペックを初めて耳にしたときは正直驚いた。GoPro2の発売からちょうど1年の月日を経て、センサーの向上やWi-Fi機能だけにとどまらず、なんと240pのハイスピードや4Kといった新しい映像表現を手のひらに乗るサイズで実現した。GoPro3はいよいよウエアラブルカメラにして、ポストHDという言葉をとらえることになったのだ。
具体的にGoPro3には3つの商品ラインナップが用意されている。スペックの低い順に「White Edition」「Silver Edition」、「Black Edition」だ。値段もそれぞれ1万円程度ずつ異なるのだが、なんといってもBlack Editionの機能が実にすごい。まずはフルHDで60fpsの記録を実現。更には2.7K(2716×1524ピクセル、16:9)の30fpsも収録が可能だ。そして、4K(4096×2160)で12fps、QFHD(3840×2160)で15fpsの記録を行える。そして驚きなのはそのサイズだ。従来のGoPro2よりも一回り小さくなり(59mm×40.5mm×30mm/73g)、ウエアラブルカメラとしての価値を更に高めた。またBlack Editionは低照度に強いセンサーを搭載しているため、その描画力に期待が高まる。
GoPro3の実力とは?
記録形式が、GoProの新コーデックであるProtuneで収録できるのも注目に値する。このProtuneというコーデックは、GoProが昨年夏に発表し、GoPro2のファームウエアアップデートで使用が可能になった「高画質コーデック」で、1920×1080フルHD・24fpsでおおよそ30Mbps以上のビットレートを持つものだ。ビットレートだけを考えると、大体EOSムービーと変わらないデータ量を持っているといえば、その画質感を掴めるかもしれない。GoPro3 Black Editionの場合、通常の30fps撮影であればProtuneで2.7K撮影し、60fpsが欲しくなればHDサイズにするといった、ワンランク上の使い方ができる。また1280×720であれば、なんと120fpsの収録も行え、WVGA(848×480)のサイズでは240fps(Protuneの使用は不可)の記録も可能なため、あらゆる映像手法をこのカメラ一台で手にすることができるといっていい。画質の面でもGoPro2から大幅な改善がなされており、一度GoPro3の実力を体験してしまうと、もはや前には戻れないといってもいいくらい、画質には大きな進化がみられる。ちなみに採用するSDカードもMicroSDサイズに変更されており、スピードの高いClass10の使用が必須となるだろう。
そして今回さらに注目な点は、Wi-Fiモジュールがカメラ本体に内蔵されたということだ。GoPro2までのバージョンでは、カメラ本体とは別にWi-Fiモジュールを購入し取り付ける必要があった。別途購入ということもさることながら、カメラに取り付けると更にカメラのサイズが増し、ハウジングの変更も必要で割と大きくなってしまうカメラサイズに少々の不満を個人的には感じていた。ところがGoPro3の全ラインアップでこのWi-Fiモジュールの内蔵化を行い、「Wi-Fiの使用」を使用者全員が行えるようになった。Wi-Fiは主にiPhoneなどのスマートフォンからコントロールするために使用。iPhoneアプリとしてダウンロードする必要がある。App Storeから「GoPro」と検索すれば簡単に見つかるはずだ。12月14日ごろにバージョンアップが完了し、ようやくGoPro3のコントロールも可能となった。これによりGoPro3でもの最大の弱点でもあったメニュー操作が一気に簡単に行えるようになり、撮影映像も確認できるためLCDバックパックが必要でなくなっただけでなく、遠隔モニタリングができるようになった。しかしiPhoneで確認できる映像のレイテンシーはどうしても避けられないようで、長くて3秒以上の遅れがあった。モニタリングしながらのカメラ調整はちょっと慣れが必要だろう。ちなみにProtuneだとREC中の映像モニタリングは現在のところサポートされていない(スタンバイの映像は見られる)。
Wi-Fiの画面操作。iPhoneでの使用~大変使いやすい。映像の遅れはあるものの、使用感は素晴らしい
今回はデモ機としてカメラをお借りしたのだが、まず使用にあたり幾つか注意しておきたいことがあるので記しておきたい。まずカメラに「最新」のファームウエアを実装しておく必要がある。特にGoProのファームウエアは割と頻繁に更新されるため、最新の機能を使用するためにはiPhoneのアプリも併せて、最新の状態にしておく必要があるのだ。GoPro2までは無償の編集ソフトウエアであるCineForm Studioを使う必要があったが、GoPro3からはブラウザを使って行えるため、作業がとても楽になった。ところがGoProのサイトでアップデートをかける際にブラウザがJava 7に対応していなければならず、Google Chromeでは行えないため、Internet ExplorerやFirefoxといったブラウザを使わなければならない。
GoPro素材を編集するにあたって…
Premiere Pro CS6での使用。ネイティブで扱えるとProtuneの良さが更に引き出せるだろう
私はGoProの素材編集はPremiere Proを使っている。ちなみに4Kの素材はネイティブでPremiere Proに読むことができないため、CineForm Studioを使ってQTなどの中間コーデックに変換する必要がある。ここで注意したいのは、残念ながらこの変換によって、ダイナミクスレンジを広く撮影できるProtuneの素材がS字をかけたようなコントラストのかかかったものになってしまうことだ。実際にPremiere Proでも読むことのできる2.7KのProtune素材で変換を行った際の比較を見ていただきたい。
もっとも12fpsまででしか撮影のできない4K素材は「タイムラプス的」な使用しかできないため、そこまで汎用性はない。GoPro3の最大の魅力は前述のとおりProtuneで撮影する2.7Kの30fps、24fpsとHDの60fpsにあるといえるだろうし、その場合はPremiere Proで撮影素材そのものをネイティブで扱えるため、変換の作業は必要ない。やはりS字カーブを含め、色補正の余力は残しておきたいためCineForm Studioを使った変換はなるべく避けた方がいいだろう。また1280×720サイズによる120fpsや、848×480サイズによる240fpsといったHSの世界も大変面白いと思う。
Premiere Proの場合、HSで撮影した素材をフレームバイフレームによるスロー再生させる場合は、プロジェクトウィンドウにある該当する素材を右クリックし「変更」から「フッテージを変換」を選び、「フレームレート」内の「フレームレートを指定」を選び、再生させたいタイムラインのフレームレートを入力する。例えば240fpsで撮影した素材を24fpsのタイムラインで10倍のHS再生させたい場合は、「23.976」と入力すればOKだ。いとも簡単にネイティブでHSが編集できるというのも、ウエアラブルカメラとしては夢のような話である。
一番の驚きは価格かもしれない。米国でも$399.99、日本でも3万9千900円で、Wi-Fiモジュール内蔵、Wi-Fiリモートコントローラーやリグも付属していることを考えるとかなりのお買い得な一台となっている。執筆時には「品切れ続出」ということで、早速人気爆発といってもいいだろう。進化を続けるGoProはウエアラブルカメラとしての存在を逸脱し、カメラ市場の小さな巨人として業務用の映像制作でも十分に使えるスペックを備えたといっていい。
HDMIアウトなどのインターフェースも充実しており、今までのようなサーフィンやスキー、エクストリームスポーツといったジャンルだけでなく、様々な現場で使用者独自のオリジナリティ溢れる方法で使われていくのだと感じている。更には続々と発売になるタッチ型のLCDスクリーンや拡張バッテリーモジュールなどの周辺機器も併せて、カメラの付加価値をそれぞれがカスタマイズできるのも大きな魅力だ。センスあふれるプロモーションやマーケティングも追い風となり、2013年もGoProの勢いは止まらないだろう。