1989年のデビュー以降、『ベスト・ソウル・ゴスペル』『ベスト・ジャズ・パフォーマンス』など10度のグラミー賞を受賞した男性6人組のアメリカを代表するア・カペラ コーラスグループ、Take6。その高度なボーカルテクニックを駆使した世界最高水準のライブパフォーマンスは世界中の、そして日本でも未だに多くの観客を魅了して止まない。2005年に自らのレーベル”Take6 Records”を設立、以降の8年間のTakeスタジオワークとその卓越した驚異のボーカルテクニックを披露するライブパフォーマンスを支えているのが、プロダクションマネージャーのTony Huerta(トニー・ウエルタ)氏だ。

今年も昨年に続きTake6のワールドツアーで、この6月に再び日本を訪れたTony氏(6月28日(金)-29日(土)ビルボードライブ大阪、7月1日(月)-3日(水)ビルボードライブ東京)。今年のツアーでの大きな特徴として、ライブ会場でのサウンドミキシングは、会場のミキサー設備を一切使用せず、Tony氏自らがローランドのV-Mixer Live Mixing Console M-200iを持ち込んでミックスしているところだ。7月3日のビルボード東京でのLive会場のバックステージを訪ねて、Tony氏にTake6のライブサウンドプロダクションについて聞いた。

Take6を支えるライブサウンドプロダクションとは?

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――まず、日本の印象は?

Tony:日本ツアーはいつも最高なんだ。僕も日本が大好きだからね。人も食べ物も好きなんだけど、何より嬉しいのは技術面のことはいつもパーフェクトだってことなんだ。どこの会場のクルーも全て完璧に整えてくれるので、いつでも最高の状態でプレイできるよ。

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――今回は会場のサウンドミキサーを使わずに、わざわざRoland M-200iを会場に持ち込んでサウンドミックスをしているそうですが、これを使用するようになった理由は?

Tony:今回のジャパンワールドツアーは大阪から始まって、これがM-200iを使った初めてのツアーなんだ。会場に常設設置してあるミキシングコンソールは使用せずに、M-200iを自ら持ち込んでミックスしているんだよ。M-200iの第一印象は音質が良いこと。これは本当に最高なんだ。 M-200iのことは、インターネットで知ったのがきっかけで、知り合いのサウンドエンジニアのため小さなサイズのミキシングコンソール(ミキサー)を探していた。

彼はヤマハの01Vミキサーを使っていて、最初は以前使っていたのと同じヤマハのミキサーLS9を薦めたんだ。でも、他の小さなミキサーも色々と探してみたんだよ。SoundcraftやMidas、Behringerとかを探している中で、ローランドのM-200iを見つけたんだ。まだ発売もしていなかったんだけど、なんだか妙に気になってね。入出力などを色々と調べてみた。僕は前にもローランドのVS-2480でミックスしていたことがあったけど、色々と調べていったら、充分に小さくて僕の仕事にフィットすることがわかったんだよ。

――M-200iをわざわざ会場に持ち込んでまで使う理由は?

Tony:M-200iはツアーに持っていくにはパーフェクトなサイズだってこと。重量も20kg以下なので、航空機移動時に預け入れ手荷物でもエキストラチャージを取られなくて済むからね(笑)。ツアーの会場で僕がするのはメインスピーカーのEQだけだ。モニターはインイヤーミックスだからパーフェクトだよ。Take6のメンバーが常に同じミックスを聞けるからね。そして(ミキサーは)16入力かそれ以下くらいがちょうど良いんだ。出力も12アウトあるからミックスもそれでできるし、そこからハウスミックスに送ることも出来る。Left、Right、Sub、Fill、Matrixとか、4つのエフェクトユニット、必要な物が全て揃っているんだよ。

(M-200iであれば)僕の理想通りにプログラムされていて、必要なことは全てできるので、会場のコンソールをわざわざ使う必要はないんだ。またM-200iを使う大きな理由として、過去8年間のTake6のミックスに関わって来て困ったのが、会場によってミキサーが変わるごとにインイヤーミックスが変わってしまうことなんだ。僕はこれまでAvid VENUE、YAMAHA M7/PM5D/CL5、全てのDiGiCoミキサー、Allen&Heath、Soundcraft Vi6、Vi1など、ほとんどの有名メーカーのあらゆるコンソールを使って来た。それはどれも本当に素晴らしいサウンドだよ。

でも持ち運びは無理なんだ(笑)。そしてインイヤーミックスも会場とミキサーが変る度に毎回変わってしまう。でもM-200iを持ち込めば、高音質ミキサーを同じインイヤーミックスで毎晩使えるんだよ!これはTake6のメンバーにとっても非常に大切なことなんだ。良いパフォーマンスのためには(インイヤーミックスは)良く聞こえないとならないけど、M-200iはそれを与えてくれるミキサーだ。会場にあるミキシングコンソールと比べても音質も全く遜色ない。 あの小さな筐体からこんな音が!って驚くよ。今夜Liveを聞いてもらえば、すぐにそれがわかるさ。Take6のメンバーも本当にみんなM-200iが気に入っているんだよ。

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――M-200iのお気に入りの機能は?

Tony:まずはiPadとの連携機能だね。iPadにタッチしてコンソールを動かすという動作がとてもシームレスに連動する。iPadとコンソールのフェーダーやスイッチが連動するのでワークフローがシームレスでとても効率的なんだ。他の製品の非効率な例を挙げると、例えばDiGiCoの製品はコンソールにたくさんのボタンがある。でもそれらはメニューをいじると機能が変わってしまってミックス作業が混乱するんだ。エフェクトやコンプレッションを変えようと思っても一瞬考えなくてはならないから結果として操作をスローダウンさせてしまう。でもM-200iならコンプレッションを押して、ノブを廻すだけだから、タッチ&タッチ、ターン、それで終わりで、あっという間さ(笑)。

このビルボード東京にあるAvid VENUEも、エフェクトを立ち上げるのにマウスを使ってエフェクトボタンを押して、またマウスを使って設定を見つけてから数値を変えなくてはならない。でもM-200iならばそういう込み入った操作が不要だからね。僕のミックスを見て貰えばわかるけど、とても早くて驚くと思うよ(笑)。色々やらなくてはいけないからね。とにかく効率性だね。もう一つはステレオAUXのパニングが非常に優秀で、パンの別れ方がとても良いんだ。ソフトウェア上でどうやっているのかわからないんだけど、とても広いよね。これだけの機能と効率性をこの価格帯で提供できるミキサー、他にないと思うよ。

ライブステージの本番で、実際にサウンドミックス操作をする様子を見学させて頂いたが、6人のメンバーの声を巧みにコントロールするトニー氏の操作は、さながら7人目のメンバーといっても過言ではないほどのフィット感があり、メンバーごとの音質や音像配置のコントロール、曲ごとに変わる細かいサウンドエフェクトなど、曲中でのアドリブなども含めて瞬時に判断して操作するテクニックは、まさに驚嘆だ。またM-200iの操作以外でのiPadにおける他の機能の操作(例えば、キーボードソフトに瞬時に切り替えて曲のキー音出しなど)もすでに熟れたオペレーションとして、手足の一部のようになっているのが印象的だった。ボーカルサウンドのみで全てを表現するTake6。その優れたパフォーマンスにおける重要なポジションとして、トニー氏とM-200iはすでに欠かすことの出来ない存在になっているようだ。

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Tony Huerta / トニー・ウエルタ 

Take6 Production Manager


コロラド州デンバー出身。北コロラド大学でジャズボーカルを学び、卒業後自らもア・カペラグループでシンガーとして活躍、その後サウンドエンジニアへ。過去8年間、Take6のステージとスタジオでサウンドエンジニアとして活動。2013年、ローランド M-200iを使用してワールドツアーに同行中。

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。