SHOGUNとFS7&α7Sで4K収録

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先日バージョン6.2にアップデートされたATOMOS社のSHOGUN。4Kからのダウンコン機能やLUTをかけてモニタリングできる機能が追加され、オーディオまわりのファンクションもかなり充実。記録コーデックにもDNxHD/DNxHRが搭載された。その使いやすさはフルHDモニターとしての役割はもちろんのこと、4K映像を収録し再生できる実力は我々に大きな可能性を与えてくれる。軽快なタッチスクリーン操作で行える様々な機能についてなどの特徴も含め前回いろいろと触れたが、今回は実際の現場での使用感をお伝えできればと思う。

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LUTをSHOGUN内のメモリにアサインできる!これは非常に便利。さらには4K収録・再生時にSDIからHDのダウンコンを出力できるようになった。最強のレコーディングモニターだ

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被写体となった5重奏。ハイレゾ・サラウンドの録音も行われた

雪がまだ残る軽井沢の大賀ホールで、クラシックのクインテット(奏者5名)による演奏を撮影した。バッハの「フーガの技法」を192kHzハイレゾ・サラウンド録音するという、音楽としてもかなり実験的な収録と並行して、そのプロモーションVTRを4K撮影することになったのだ。

実はちょうど一年前に、同じ大賀ホールにてカルテットの4K撮影をBlackmagic Production Camera 4Kで行ったのだが、今回はSHOGUNを投入し、「いまどき」な4K収録に挑んだ。使用したカメラはSONY α7SとPXW-FS7の2台である。それぞれにSHOGUNを4K HDMIで接続し、4K ProRes HQで収録。2台のカメラの特徴を活かしつつ美しいホールの雰囲気を4Kで捉えた。尚撮影の当時はファームウェアがまだ6.11が最新だったため、写真のSHOGUNは現行のものではないことを了承して頂きたい。

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今回撮影の現場となった軽井沢・大賀ホール。SONY PXW-FS7とα7Sの2台をそれぞれSHOGUNと繋げた

最軽量3軸ジンバルで4K!

今回α7Sを使った理由は、撮影で3軸のジンバルを使いたいという希望があったからだ。小型とはいえ、FS7をスタビライズさせるにはそれなりに大がかりな機材を必要としてしまう。そこでSHOGUNを使った3軸スタビライズを、小型のデジタル一眼であるα7Sで組んだ。

使用した3軸スタビライザーは、以前にも紹介したRedWolfのe-ジンバルである。私がこのジンバルを気に入っている点は、とにかく簡単で使い勝手が非常によく、何といっても「軽い」という利点があるからだ。両手でハンドルを持ってオペレートするジンバル機材は、重いと急激に機動力が落ちてしまう。e-ジンバルは無論最大耐荷重が2kgちょっとなので、汎用性という意味では劣る点もあるが、現場で威力を発揮するフットワークは他のジンバルでは実現できないほどの良さをもっている。

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e-ジンバルとα7Sの組み合わせ。モニターをSHOGUNにして最強のシステムが完成。片手でもオペレーションができるとなれば、その機動力の高さが伺えるだろう

そしてα7SとSHOGUNの組み合わせによる4K撮影は、驚くほど美しいと評判だ。α7SのHDMI出力からは8bit 4:2:2の4K信号がでており、高感度のα7Sらしい画をSHOGUNで受けることができる。もちろん4Kを内部収録できないα7SにとってみればSHOGUNは無くてはならない機材と言えるだろう。セットアップの方法については割愛するが、SHOGUN自体の重さが軽いというのも大きな利点も加わり、このシステムで組むとおおよそ4kg弱の重さで4K撮影が行えるジンバルが組めてしまう。なんと片手でもコントロールが可能だ!ここまで高機能にも関わらず、ジンバルのキャリブレーションはものの10秒と、言うことなしだ。左手のジョイスティックでチルト操作も可能なため、その撮影バリエーションは無限である。

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ジョイスティックでパン・チルトも操作可能だ。今回はパンの機能はOFFにしてチルトだけを活用した

ちなみにα7SではMetabonesのE-EFマウントアダプターでEFレンズも使用した。しかしジンバルに載せる際はEマウントの28-70mmのSONY純正レンズ(SEL2870 FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS)をメインに使った。その理由は2つある。

1つはレンズ自重が軽いのでジンバルのバランスがとりやすくコントロールもしやすい。もう1つの理由はオートフォーカスだ。動画記録中でも思いのほかオートフォーカスが有効に使える。4Kとなるとフォーカスはシビアだ。基本的に両手がふさがってしまうジンバル撮影では、フォーカシングは難しく、無線のフォローフォーカスなどを付けるとジンバルの重さがどんどん増していく。

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Eマウントの純正レンズを使用し、オートフォーカスを使用

今回はSONYのEマウントレンズによるオートフォーカスで乗り切ることにした。ちなみに4Kであってもその精度は「結構いける!」という印象だ。もちろん、意思に反する動きもするため、このあたりは上手に使う必要がでてくるだろう。ただし、こういった小型のミラーレスのオートフォーカスは、思ったより優秀なため、4Kであってもガンガンと利用するほうがいいと思う。下手に無線のフォローフォーカスなどをつけて、レンズ交換の度に訪れる難易度の高いセッティングを試行錯誤するのであれば、機動力の高いEマウントを使う方が現場のやりくりはとてもスムーズだ。確かに画質面を心配する人も多いとは思うが、このあたりのトレードオフには思い切ったワークフローがカギになるかと感じている。

ジンバルに載せたα7Sの素材の様子。オートフォーカスがそこそこ使えることが分かるだろう

全く違う2台でも、S-Log2で同じ4K画質を狙う

この2台のカメラを使う利点として、同じS-GamutのカラースペースでS-Log2ガンマを使えることにある。センサーのサイズや特性は違うものの、同じ色味で撮影できるのは大きい。FS7で「確実」な4K映像を収録しつつ、α7Sで飛び道具としての「動的」な4Kを同じ質感の画として捉えられると、いろいろな演出にチャレンジできる。

驚きなのは、SHOGUNを使うと、α7Sの4Kの画がFS7に肉薄するほど美しいということだ。無論、最新のLogであるS-Log3が使えるというだけでなく、動画カメラとしてのしつらえはFS7が圧倒的に上なのだが、単純に映像の比較となるとα7Sの4K映像には評価が集まるところであろう。

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FS7のS-Log2の画(写真左)と、α7SのS-Logの画(写真右)。ルックは少々違うものの、なかなかのマッチング。α7Sの解像感もなかなかだ
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価格を比較しても、α7Sのコストパフォーマンスには驚かされるのではないだろうか。FS7でメインをしっかりと押さえつつ、α7Sで攻めの撮影、まさにベストマッチの2台ともいえるSONYの4Kカメラコンビネーション。SONYの創業を支えた“大賀”さんのホールで、この2台を使った4K撮影というのも、時代を越えたつながりを感じざるを得なかった。

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α7SとSHOGUNのコンビは、ジンバルの使用だけでなく、通常のハンディや三脚用途としても十分に使える。フォーカスと露出のアシストが完璧なため、使い勝手はとてもいい

最強のレコーディングモニター、SHOGUN

SHOGUNの効率的な使用方法として、4Kフォーカスに特化した使い方がある。例えばFS7のビューファインダーには通常の画をモニタリングしつつ、同時にSHOGUNには×2の拡大表示をさせる方法だ。4Kであれば、事実上4倍の表示になるため大変心強い。ビューファインダーではステータスだけでなく、全体の画角を確認する一方で、SHOGUNには拡大表示をさせておいて、そのフォーカスを確認。こうすれば、いつでも被写体のピントを外さない撮影が行えるというわけだ。

SHOGUNの素晴らしい特徴として、REC中であってもあらゆる機能をON/OFF&調整できるという点が挙げられる。拡大フォーカスしかり、スワイプしかり、ウェーブフォーム表示しかり、ありとあらゆる操作をREC中に行えるとなれば、喜ぶカメラマンも多いはずだ。

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カメラのファインダーでは通常の表示をさせつつ、SHOGUNで拡大表示させる。スワイプで好きな場所を選べるので、REC中であってもフォーカスを確認できる

そして何と言ってもProRes HQを使った4K収録は、YUV収録において最強と言っていいだろう。4K30pで800Mbpsを誇るHQコーデックは、ポストプロダクションでの作業に多くの余裕をもたらしてくれる。

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ProRes・DNxHRの各種コーデックを選べるのは素晴らしい。HQで確実な4Kを。そしてLTでも堅牢な4Kを収めることができる

特に今回のようにLogで撮影する場合、色編集がマストとなるため、なるべく高画質に収録を行いたいというのが正直なところだ。XAVCは高圧縮・高画質の一面をもつものの、HQの半分以下のビットレートであるためガッツリ色をいじりたい場合はProRes HQで収録することをお勧めする。長尺のドキュメンタリー撮影などでは大活躍するXAVCではあるが、臨機応変にSHOGUNを使ったProRes HQの収録も多用するといい。

今回DNxHRにも対応したため、その選択肢はほぼ「完璧」といえるだろう。各種ProResとDNxHRから、メディアの容量や解像度なども考えつつ極力効率的なコーデックを選ぶことになる。前回も記したとは思うが、割とProResLTを使った撮影が侮れない。ポストにかける時間やコスト、いろんなことを含めてSHOGUNは活躍してくれるはずだ。

IS-miniとの連携は抜群。色合わせはAdobeで一発

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IS-miniとSHOGUNの組み合わせは実は使いやすい。撮影後であっても、すぐに色編集を行える

ちなみにここで色編集のワークフローに少し触れておきたい。S-Log2からのLUT編集は、ズバリ富士フイルムのIS-miniで行った。先日のファームアップでいよいよ待望のFS7に対応したIS-mini。驚くことなかれ、α7Sのプリセットも完璧に備えている。今回は現場で色を見る時間がなかったため、SHOGUNを再生機として使い、それをIS-miniと接続。撮影後の色編集を行うことになった。

素晴らしいのはSHOGUNが4KからのHDダウンコン機能を搭載したということだ。これにより、4Kの収録・撮影時でもSHOGUNのSDI出力からHDのモニタリングが可能になった。FS7はHDMIから4K出力をさせると、本体のSDIからのHD出力が止まってしまう。そのため今まではSHOGUNと併用する際はHDのモニタリングをあきらめざるを得なかったのだが、これにより大幅に現場でのシステム構築が楽になる。更にIS-miniもHD-SDIを入力とするため、SHOGUNを介せば、FS7の4Kの色を編集できるようになるというわけだ。今まで「できなかった」ことが「簡単にできる」ようになったことは、本当に嬉しい限りである。

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FS7のプリセットにも最近対応したIS-mini。α7Sとの色合わせも簡単だ
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本来ならば現場で色を確認するために使用するIS-miniだが、後からじっくり確実な色作りをしたい場合などは、SHOGUNの再生機能を使って一気に色をいじることができるのもいいだろう。特にSDI出力をもたないα7Sなどは、SHOGUNを使うことでFS7同様に簡単にIS-miniを活用できる訳だ。α7Sの画をSDIでHDモニタリングできるとなると、SHOGUNの役割の大きさに注目が集まることだろう。とにかくHDのダウンコン機能をつかったSHOGUNとIS-miniの組み合わせは4Kの色編集を行う上では画期的な方法といえる。

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FS7(写真左)とα7S(写真右)の色編集後の切り抜き。異なるカメラだとは思えないほど、同じ色を非常に簡単に再現できる
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FS7で使用したSHOGUNとα7Sで使用したSHOGUNをそれぞれIS-miniに繋ぎ、それぞれのプリセットで色を決めていった。お互いの色を上手に合わせる必要があるため、細かい調整はAfter Effectsで行った。素晴らしい点は、IS-miniから一発でAfrter Effects用のLUTを書き出せるため、理想のワークフローを組めることだ。S-Log2からの709変換は見事に一瞬で行えるだけでなく、微妙な色調整も簡単。After Effectsに709に変換した2台のカメラの画を持って行けるため、ほぼ見分けがつかないほどのカラーマッチングが驚くほど簡単に行える。これは素晴らしい!!IS-miniとSHOGUNを使えば、カメラを使わずして、撮影後にじっくりと色を決められるという、これこそ新しいワークフローを完成させることができる。いやはや、夢のような時代が到来した。

総括

ということで、今回はSHOGUNを使った実際の撮影の様子を紹介した。これからハイレゾの音声とともに編集にはいることになるのだが、今回の収録だけで、なんとデータ量が2TBを超えることになった。4Kを高画質で抑えるとなると、今後はデータ容量とうまく向き合っていく必要がでてくるだろう。

とはいうものの、SHOGUN自体の現場での評判はかなりのものだ。今回は詳しく触れなかったが、SHOGUN内でのLUTを充てる機能や、オーディオ収録まわりの機能も相当重宝されるものだろう。ファームウェアの更新で次々と様々な機能も充実されるSHOGUNは4Kの新しい可能性を広げた一台となった。IS-miniといった次世代の機材との連携も含めて、新たな使用方法に注目が集まるに違いない。

WRITER PROFILE

江夏由洋

江夏由洋

デジタルシネマクリエーター。8K/4Kの映像制作を多く手掛け、最先端の技術を探求。兄弟でクリエイティブカンパニー・マリモレコーズを牽引する。