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txt:岩沢卓(バッタネイション) 構成:編集部
えのすい×タケナカが表現する“相模湾”とは?
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相模湾ゾーン/岩礁水槽「魚たちとの夢がはじまる」
7月16日から新江ノ島水族館(えのすい)にて開催している、夜のスペシャルイベント「ナイトワンダーアクアリウム2016~月光に漂う水族館~」。同イベントは、パート1(7月16日~9月12日)、パート2(9月13日~10月31日)、パート3(11月1日~12月25日)の3つの期間で構成され、季節とともに内容も変化していく。
今回、その裏側を支えるキーマンのお2人、新江ノ島水族館の小宮雅純氏と、同イベントのプロデュースを務める株式会社タケナカの長崎英樹氏に話をお伺いした。
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写真左:新江ノ島水族館 企画部長 小宮雅純氏
写真右:株式会社タケナカ専務取締役・プロデューサー 長崎英樹氏
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ナイトワンダーアクアリウムは、毎日17時から開催。一般入場料のみで見学可能。当日であれば途中退場と再入場もできるので、通常の展示を見たあと、水族館周辺の江の島観光をしてからなど、再入場をしてナイトワンダーアクアリウム2016を楽しむ人も多いという(写真はエントランスの階段)
小宮氏:開業10周年の記念行事として2014年に初めて夜のスペシャルイベントを開催し、日頃みなさんが入ることのない夜の水族館の新しい楽しみ方を提案させていただきました。3年目の今年は「ナイトワンダーアクアリウム2016~月光に漂う水族館~」として、月光に漂う“えのすい”を体感してもらうことをテーマに展示や演出を構築しました。
――これまでは、チームラボやネイキッドなど、クリエイターとのコラボレーション的要素が強いように感じましたが。
小宮氏:3年目ということで、改めて新江ノ島水族館のアイデンティティとかカラーを強く出したいということを意識しました。そこで、えのすいのカラーとは何かと考えた時に、「相模湾」というキーワードが重要であると考え、それを実現してくれるパートナーを探しました。
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水族館の歴史は古く、1954年に誕生した江の島水族館は、創設者の堀久作(映画会社「日活」社長)の着想によって計画がスタートし、日本における近代的水族館の第1号として誕生した
長崎氏:技術力、提案力での不安はなかったのですが、過去2年間を担当された皆さんの知名度からすると、その点では、大丈夫かなぁという不安が正直ありました(笑)。
小宮氏:企画チームのメンバーから言われた言葉なのですが「舞台を貸している形にはしたくない」というのを聞きまして、確かにそうだなと。ゴールに向かって一緒に作り上げていくパートナーとしてタケナカさんが相応しいと思いました。
――準備期間はどれくらいかかりましたか?
長崎氏:3ヵ月未満という短い準備期間だったので、お話をいただいてから、すぐに社内の主要クリエイティブチームを、すべて押さえました。
小宮氏:タケナカさんは、実績も経験もある会社なので、実現できない提案はしてこないだろうなぁと思っていました。その上で、ロングラン、3パート制ということを活かして、何度も来てもらえるようなものを一緒に作り上げていこうという気持ちに、どんどんなっていきました。
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マッピング調整は、COOLUX社製Pandora Boxのmedia serverを使用
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「相模湾と星空の出会い」の施工前の投影範囲検証。イベントで使用するPJを持ち込み、投影範囲や明るさ等を最終確認
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「相模湾と星空の出会い」の最終演出
――準備期間で印象に残っていることはありますか?
小宮氏:会期が始まる3日前にプロジェクターを変更したことですね。
長崎氏:関係者向けのプレビューの時に、画質に関しての指摘を受け、私自身も気になっていた点ではあったので、迷わず全国のプロジェクターを掻き集めて、より解像度の高いプロジェクターに交換しました。
――具体的には、どういう内容の変更だったのですか?
長崎氏:もともと、スケジュールを見越して、4Kオーバーの解像度で映像を作りプロジェクターの選定もしていたのですが、機材も入れ替えて、6Kオーバーにすることを決めました。
小宮氏:私たちは、アマチュア視点というか、あくまでお客さま視点でコンテンツを見ているので、技術的な苦労や施工の大変さを知りつつも、そこは素直な意見を伝えさせていただきました。
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メイン展示の相模湾大水槽には、エプソン10000ルーメンのPJを8台使用
――通常の展示業務との連携は、どのように行ったのですか?
小宮氏:展示を休むわけにはいかないので、閉館後19:00~翌朝6:30くらいまでの時間に施工やテストなどをお願いしました。脚立などの道具は、毎回準備と片付けを行いながらという形になってしまうのですが、昼の水族館を楽しみにされているお客さまにご迷惑はかけられませんので、毎回準備と撤収をしていただきました。
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連日設営終了後は、明け方の江の島を眺めるのが日課に
長崎氏:美術館や博物館などの施工を多く経験している我々にとっても、スケジュールを組み立てていくのが大変だったことは印象に残っています。また、生物の飼育環境や生活リズムにも配慮しながら、施工を行いました。
小宮氏:展示飼育部門スタッフの協力・連動がなければ実現できなかったですし、3年間継続してきたことで、ノウハウが蓄積されてきたことも大きいです。
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© JAMSTEC
「しんかい2000」は初調査から最終調査まで、新江ノ島水族館の面している相模湾を最も多くの調査対象とし、2002年にその役割を終えた。今回の「ナイトワンダーアクアリウム2016」では、調査船が再び海へ出航するというストーリーのプロジェクションマッピングを見ることができる
――今後も展示内容をアップデートされると思うのですが、こだわった点などがあれば教えてください。
小宮氏:「また来たくなる水族館」づくりを目指して、コンテンツ開発に取り組んでいます。何度来ていただいても楽しんでもらえるように、細かなアップデートは日々行っていきます。
長崎氏:魚たちとデジタルテクノロジー、照明、サウンドが一体となった表現を楽しんでいただきたいです。
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水族館内では「ナイトワンダーアクアリウム2016」が自宅で体験できるオリジナルホログラムシートを配布中!ホログラムシート専用公式YouTubeはこちらより
「ナイトワンダーアクアリウム2016~月光に漂う水族館~」絶賛開催中!
新江ノ島水族館:神奈川県藤沢市片瀬海岸2-19-1
ナイトワンダーアクアリウム2016開催時間:17:00~20:00
※10月15日(土)は休催
WRITER PROFILE
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