txt:岩沢卓(バッタネイション) 構成:編集部

広島ガス防災センタービルの12面マルチビジョンシステム

広島県内7市4町にガスを提供している広島ガス株式会社。同社の本社構内に2017年12月に竣工した「広島ガス防災センタービル」。災害対策本部をはじめ保安指令センター等の供給保安機能を集約することにより、災害発生時における復旧体制の迅速化を図るという。

広島ガス防災センタービルの中央監視制御室に新規導入された12面マルチビジョンシステムについて、広島ガス株式会社 導管事業部 設備管理部 導管維持グループ 課長代理 神垣康郎氏と、北辰映電株式会社 営業本部 チーフ 松前徹氏にお話を伺った。

広島ガス株式会社 導管事業部 設備管理部 導管維持グループ 課長代理 神垣康郎氏(写真右)、北辰映電株式会社 営業本部 チーフ 松前徹氏(左)

供給エリア内の監視状況や緊急災害時の対策本部としても機能する中央監視制御室に設置された55インチパネル12枚によるマルチビジョン

12面のうち8面の表示用途としてRoland XS-84Hが使用されている

――こちらの部屋では、どういったことをされているのですか?

神垣氏:ガス供給の保安や設備の維持管理機能を担う部屋となっています。マルチビジョンを用いて各拠点のガス管の状態や作業車両の位置などを、地図上に表示します。大型パネルを採用したことで、電話受付や指示担当者が、ガラス越しにリアルタイムの状況を把握することができるようになり、保安体制の強化を図っています。また、免震構造の建物になりますので、災害時の対策拠点としての機能も持っています。

松前氏:55インチパネルでベゼル幅の小さいものを選択しました。広島ガスの皆さんと都内まで実機を見に行き、部屋のサイズに合わせた構成を一緒に検討しました。大きすぎても一目で全体を把握することが難しくなりますので、監視業務への最適化を第一に考えた構成を構築しました。

ガラス越しの部屋からも地図上に表示された情報を確認することが出来る

神垣氏:画面同士のつなぎ目が気にならないように、地図や数値を表示する背景も黒に変更した画面にしています。見慣れたエリアの地図だからこそ、画面表示に合わせて視認性を高める工夫は必要だと感じました。

――設備選びのポイントは、どういったものになりますか?

Roland XS-84Hの背面。HDBaseT出力を使用している

松前氏:今回、各ディスプレイとの接続は全てHDBaseTにしています。それに合わせて、プロセッサーやスイッチャーなどの機材構成を行いました。

Roland XS-84HとPanasonic ET-MWP100が格納された機材ラック

松前氏:PCなどを含めた機器からの出力は、DVIに統一し、イメージニクスDVX-3232Aに全ての入力を集めています。DVIマトリクススイッチャーからの出力を、パナソニックET-MWP100を1台とRoland XS-84Hを2台に入力し、自由な画面構成を作り出せるようにしています。

――4枚の画面ごとにスイッチャーがある形になっているんですね。

松前氏:画面比率を意識せずとも使えるように、縦横2面づつの4面で、16:9比率の画面をひとつの単位としています。もちろん、12面を大きな1画面としても扱えるのですが、手元のPC画面との違和感を無くせるようにということと緊急時には、テレビ放送などを情報収集のために複数画面表示することも想定しているので16:9になるようにしています。

設備用途の場合は、動作の信頼性が大事になりますので、これまでも導入し、実績のあるRoland XS-84Hを左右それぞれの4面づつ8面分の出力に使用しています。HDBaseTの端子が最初から装備されているというのも選択したポイントですね。

――画面の操作方法はどのように行うのでしょうか?

タッチパネル式の専用コントローラー

松前氏:入出力のコントロールは、専用のタッチパネルコントローラーを用意しました。シーン登録機能もあるので、運用形態に合わせて登録と呼び出しをしていただけます。

神垣氏:維持管理のための監視業務が主になるので、専門的な知識がなくても、操作できるようにお願いしました。頻繁に画面構成を変えたりするものでもありませんし、運用しながらメモリー登録するパターンの最適化を出来ればと考えています。

4分割に切り替えた場合の操作画面

ガス管の監視体制やルートなど、顧客情報も含まれるものなので、記事中で紹介している画面は、取材用に一部を非表示にしたものとなっている。実際の運用画面には多くの数字が表示されており、表示の可読性や一覧性など、生活に欠かせないインフラだからこそ、その制御に用いられる機器も止まらずに安定した機器が選ばれていることを感じることができた。

XS-84H

WRITER PROFILE

岩沢卓

岩沢卓

空間から映像まで、幅広いクリエイティブ制作を手がける兄弟ユニット「岩沢兄弟」の弟。 デジタル・アナログを繋ぐコミュニケーションデザイン・プランニングを行う。