txt:手塚一佳 構成:編集部

世界最大のスチルカメラの祭典が開幕

広大な横浜港南西部に会場が配置されている。このスケール感がおもしろい

今年も、世界最大のスチルカメラの祭典CP+が横浜で開催された。今回のコラムでは、その会場初日の様子をお知らせしたい。

5月に予定されていたPhotokina2019が開催中止となったため今年はCP+が文字通りに世界最大のスチルカメラのイベントとなった。言うまでも無く、今や、スチルカメラは動画機としても活用されていて、CP+は我々動画人としても重要なイベントの一つだ。

スマートフォン搭載カメラの高度化に伴い、昨年は3年振りに携帯機能非搭載のスチルカメラ売り上げが低迷する現象が起きたが、スマートフォン搭載カメラのおかげで写真人口自体は増えているわけであり、ちゃんとユーザーの欲する製品を出せば確実に売れる市場が出来上がっている、とも言える。事実、Sonyはついに一眼カメラで売り上げ1位となったが、これは、ミラーレスカメラが市場に受け入れられた結果に他ならない。

我々になじみ深い複雑なRIGを組んだプロユースの一眼動画のみならず、裾野ではネット動画投稿も盛り上がっていて、CP+の主な話題の一つが動画であるのは、もはや必然と言って良い。特に今回のCP+では、フルサイズセンサーに4K動画機能を載せたカメラが多数発表され、話題をさらっていた。

今回は、そうした新型カメラや、周辺機器の話題をブース単位で追いかけてみたい。

Panasonicブース LUMIX S1!!

Panasonicブースは、大きくLUMIX S1/S1Rの実機体験スペースを取っていた

まずは、Lマウントアライアンスの一角、Panasonicのブースから、話題のフルサイズセンサー4K動画機能搭載スチルカメラ「LUMIX S1/S1R」の展示について見てみよう。

先のPhotokina2018で、カメラの源流の一つであるLeica社のLeica TL、CL、SLを中心としたLマウントが、Panasonic、SIGMAの2社とアライアンスを組み、フルサイズセンサーカメラの新しいスタンダードとして提案されたのは記憶に新しい。そのアライアンスによるPanasonicの実機第一号が、この2機種、LUMIX S1及び、S1Rだ。

LUMIX S1実機。ほぼ製品版の仕上がり。こうした新型カメラを事前に触って確認出来るのは素晴らしい

フルサイズセンサー搭載ながら4K動画機能を搭載し、4K30P(フルサイズセンサー)のみならず、4K60P(S35サイズにセンサークロップ)にまで対応したLUMIX S1は、ミラーレスながらもまさにプロやハイアマチュア向けのハイエンドカメラと呼んで差し支えない存在だ。

ただし、同シリーズの高画素機であるLUMIX S1Rの方は、4K60p設定は存在するが、4Kは全てのモードで収録制限は15分となる。FHDであれば記録時間無制限で収録可能だという。読者諸賢にはS1の方がより適していると思われる。

このLUMIX S1/S1Rでは、大変興味深いことに、値段の安いS1の方が機能制限の廉価版、というよくある扱いでは無く、S1は鮮明に動画機としての位置づけ(4K30Pの時間無制限フルセンサー収録、4K60Pの29分59秒収録、ISO51200の超高感度)、S1Rは高画素スチル機としての位置づけ(4730万画素の超高画素、ISO25600、187MP相当のハイレゾモード)と、機能による明確な棲み分けが行われているのである。これは、従来のカメラの「高いカメラは全部盛り」という価格ヒエラルキー制度への挑戦であり、大変に面白い。

さて、肝心のCP+会場でのLUMIX S1実機だが、かなり最終製品に近い仕上がりになっていて、実用に耐えるレベルでの展示であった。今月3月23日発売とのことで、ハードウェア的にはほぼ完成し、ソフトウェアの最終チューニング、という段階だろうか。

同機の特徴として、将来的な4:2:2 10bit V-LOGの収録ファーム(外部出力可能)が別売り販売される事が約束されているが(S1のみ対応予定。S1Rは非対応)、残念ながらまだそのあたりは今後の発表ということで、CP+では本体収録機能のみの展示となっていた。

同機の収録メディアがSD UHS-IIとXQDのデュアルカードスロットである点も動画機としては大変期待ができる。XQDスロットはメディアメーカーの共通次世代プラットフォームであるCFexpressへの対応が予定されていることが発表され、これにより、比較的リーズナブルに4Kに対応した超高速収録が可能になる予定だ。

続いてLUMIX S1実機を同アライアンスの先行ハイエンド機、Leica SLと比較してみた。

上から見るとLeica SLよりコンパクトな印象だ

Leica SLはその高性能ながら、バッテリーの持ち時間が短い機種でもあった。その点、S1ではバッテリーが大型化されている点が安心だ。

また、Leica SLで話題をさらった機能の一つに、光学ファインダーと遜色の無いレベルの440万ドット・0.8倍高速EVF(EyeResファインダー)があったがPanasonicのLUMIX S1ではさらに高解像度化され576万ドット・0.78倍のOLEDファインダーを搭載し、同じLマウントアライアンスのハイエンド機としての面目を保っていた。LUMIX S1のEVFからの光景は、Leica SLに比べると若干狭く、青みも強めでさすがに若干リアリティに欠ける印象ではあったが、これはSLとの実売価格の差(Panasonic S1は338,990円。Leica SLは864,000円)を考えれば充分に納得の行くレベルだ。というか、おそらくLeica SL以外には、これだけのEVFを搭載した機材はプロ機材含めても存在しない。

実は、この高速EVFというのは動画撮影においては極めて重要だ。一眼レフカメラの跳ね上げ式光学ファインダーは動画撮影時には使用不能になってしまうし、遅延や外部光の影響の大きいバックモニターでは4Kのフォーカスを精密に追うことは困難だ。その点、高画素高速EVFであれば瞬時にフォーカスを追うことが出来る。これは大変大きなメリットだ。

後ろから見ると、LUMIX S1の方がLeica SLより一回り大きいことがわかる。巨大な550万ドットEVFを収める工夫だろう

さらに、3軸チルト可能なバックモニタも用意されている。動画撮影時の強い味方だ

こうした基本機能の充実のため、本体重量はバッテリーメモリカード込み898gと、Leica SLの847g(バッテリーメモリカード含む)よりも増えているが、本体形状が非常に工夫されていて、むしろ軽くなっているような印象を受ける。特に、Leica SLで特徴的な左手の手のひらへの食い込みが無いのは大変大きな安心材料だ。

唯一残念なのが、LUMIX S1で収録できるのが、4096×2160のDCI4Kではなく、3840×2160のUHD4Kである点だ。同アライアンスの先行ハイエンド機、Leica SLでは24P毎秒で29分59秒制限付きとはいえちゃんとDCI 4K搭載であるため、ここは踏襲して欲しかった。低予算シネマ用途と考えると横方向の画素数の都合で引き延ばしをしなくて済むDCI 4K搭載の価値は大きい。

とはいえ、Leica SLではS35サイズにクロップされていた4K映像がフルサイズのライカ判センサーで撮影できるわけで、それだけでもメリットは大きいだろう。

また、Panasonic製のLマウントレンズ群も、会場では大きな話題であった。特に、標準レンズであるPanasonic LUMIX S 24-105mm f/4L Macro OIS Lensズームレンズは、その軽さと写りの美しさ、そして何よりもオートフォーカス(AF)の早さで会場にいた報道陣をうならせていた。

24-105というズームレンズはどこのメーカーのものでも初期付属のおまけ的存在であり、旅カメラレンズ的な用途以外にはあまり期待はされないレンジのレンズだが、このLUMIX S 24-105mm f/4Lレンズは全く異なる。ワイド端からズーム端まで、画面の隅々まできちんと映りきっており、プロユースに耐える画質のレンズだと言える。

もちろん、同時に試してみたLeica SLの標準ズーム、VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.に比べれば、どうしても画質は一歩二歩は及ばないのだが、しかしそれでも105mmまで撮れる一回り広いレンジと、軽さ(Panasonic S 24-105は680g。Leica S 24-90は1140g)、AFの早さ、そして何よりも値段の安さ(Panasonic S 24-105は155,200円。Leica S 24-90は669,600円)を考えれば、充分にPanasonic LUMIX S 24-105mm f/4L Macro OIS Lensズームレンズにも選択の理由がある。

標準ズームレンズは24-105mm F4.0。なんだ、旅レンズかと侮る事無かれ。見事な画質を見せてくれた

Lマウントアライアンスの第一号機と言うことで、Leica SLをコストダウンしたいわゆる「プアマンズSL」が出てくるのかな、と思いきや、かなりしっかりとした作りでLeica SLに準じる性能を持つプロ向けのカメラが出てきた、というのがこのPanasonicブースでのLUMIX S1の印象だ。特に、撮影時間無制限でのフルライカ判センサーでの4KUHD 30P撮影はLeica SLには無い機能であり、これだけでも試してみる価値はある。

なによりも、誰もが認める世界最高画質を誇るLeicaレンズ群がメーカーアライアンスの公式サポートの下で使える、というのは愛機との末永い付き合いを考えればとても嬉しいことだ。手に馴染ませた同じカメラ本体のまま、レンズを世界ハイエンドに持って行けるというのは、手に馴染む道具であるカメラの性質を考えると、大きな魅力と言える。もちろん、時代の進歩に合わせて本体を刷新しても、世界最高峰のLマウントレンズ群がそのまま使えるという点も大きい。

さらに動画用途を考えると、LeicaからはオフィシャルにMマウントアダプターやPLマウントアダプターも出ているので、オールドレンズやPLシネマレンズ対応も容易だ(LeicaオフィシャルのPLマウントアダプターは非常に高額だが、KIPONなどのサードパーティからSL向けにLマウント向けPLマウントアダプターも出ているので安心を!)。

幸か不幸か、高画素機の姉妹機LUMIX S1Rの方にアマチュアスチルカメラマンの人気が集中しているので、S1は比較的触りやすい。是非ともショップなどで実際に触れて欲しいカメラだ。

シグマブース Lマウントへの大規模対応を発表

シグマブース。Lマウント対応を前面に押し出していた

続いて、同じくLマウントアライアンスから、シグマブースをご紹介したい。

シグマブースでは、実機こそ無かったが、Lマウントアライアンスへの対応を前面に押し出して、その対応を謳っていた。なかでも、11本同時のLマウント対応は驚愕であり、これによってLマウントアライアンスは一気に78本のLマウントレンズを持つ事になる(それだけでは無く、元々Leica SL時代からLeica社がオールドレンズや他社レンズ利用に積極的であり、Leica MマウントレンズやRマウントレンズのほぼ全て、PLマウントレンズの大半など、各種マウントに対応しているためその対応本数は無数にある)。

シグマブースに掲げられた、Lマウントアライアンスの大看板。78本、という驚異的な本数のレンズが光る

会場には、14mm~135mmの11本のシグマArtラインレンズにLマウントが装着され、その対応が具体的である事が示されていた。Artラインはプロ御用達の単焦点レンズ群であり、光学的に優れたLマウントシステムには最適なものと言えるだろう。

シグマ製の11本のLマウントレンズ群。ローンチ時点で11本のレンズを出す、というのは驚きだ

実にシグマらしいことに、他マウントでの該当Artラインレンズ製品所持者には、有償でのマウント交換サービスも予定されているという。さらには、シグマ製SAマウントやEFマウントレンズからLマウントへのマウント変換アダプタMC-21も発表されていた。もちろんメーカーオフィシャルマウントアダプタだけに電子接点対応であり、こうしたメーカーオフィシャルのマウント変換アダプターの発売という柔軟な対応には本当に驚かされる。

無論、ハイエンドの光学系を持つLマウントシステムにこうしたEFなどの旧製品のレンズを付ける画質的な意味合いというのは薄いが、それでも、既存のレンズ資産をそのままLマウントシステムで使えるというのは、Lマウントシステム導入時に資金的猶予を持てるわけであり、ローンチ時点でこうしたマウント変換製品が提供されるというのは大きな安心材料だろう。

なんと、シグマ製のSA、EFマウントからのLマウントアダプト変換マウンタが発表されていた

さらには、同社ブースでのイベントで、来年中のシグマ製のLマウント対応カメラ本体の発表も発表されている。なんと、R:G:B=1:1:1の、本式のフォベオンフルサイズセンサー搭載のカメラになる模様だ。フォベオンの読み出し性質上動画機能は期待できないが、それでも、大きな変化を期待せざるを得ない。Lマウントで大きく躍進するシグマの展開から、目が離せない。

マウスコンピュータブース

マウスコンピュータでは、リアルタイムレイトレースに対応したNvidia RTXシリーズボードを搭載した画像・映像処理向けコンピュータDAIV-DGZ530シリーズの展示を行っていた。

マウスコンピュータブースは、例年素晴らしい(何が素晴らしいか、読者諸賢には一目でわかるだろう)

RTXボードは、いうまでも無く、同ボードに対応したレイトレース処理をリアルタイムで行うことが出来る、画期的なグラフィックボードだ。まだ対応ソフトウェアは少ないが徐々に広がりを見せており、近い将来、RTXボードの有無で、レンダリング速度に大きな差が付く事が予想されている。

RTXボードを搭載したPCは各社多数あるが、同社の優れたところは、高速な作業用SSDに保存用ストレージとしてHDDを組み合わせることで、全部盛りでも289,800円と30万円以下の小規模事業主の消耗品扱いの価格に抑えてきたところが挙げられる(税別、会計採用企業の場合)。

税法と価格高騰とのギャップで、本来消耗品の筈のPCが消耗品になりにくい事態が起きている今、価格面での気遣いは大変にありがたい

どんなに優れた機材であっても、PCは所詮2、3年で買い換える消耗品。それが30万円を超えてしまうと、税法上4年以上しっかり使わなければいけない建前になり、損失が大きい。ファイルサーバーを兼用していると、なんとその税務上耐用年数は5年だ。こうした消耗品の枠内での製品があるというのは、これだけで検討に値するだろう。

もちろん、ハイエンドのデスクトップと同じ性能のRTX搭載モンスターノートPCなども展示されており、こちらは40万円台中盤というなかなかハードな金額をたたき出していた。しかし「実用」という一点において、同社のコンピュータ非常に突破力のある選択肢となるだろう。

それにしても、今時同じPCを4年も使う映像系の会社なんて無いだろうに、なぜ30万円という理不尽な税務上の消耗品枠があるのか不思議でならない。

ケンコートキナー/KPIブース

無数のカメラサポート用品が揃うケンコートキナーKPIブースは圧巻だ

ケンコートキナー/KPIブースでは、無数の世界初公開となる新製品の展示発表を行っていた。

中でも筆者が注目したのが、フィルターアダプタ類だ。昨今、センサーのフルサイズ化によって、レンズ物理口径の巨大化が進んでいるのは、読者諸賢のご存じの通りである。

例えば、筆者がその画質を気に入っているAngenieux EZ-2では、114mmという巨大なフィルタ径を持つ。これに、15mmという超広角の性質が組み合わせると、ほぼフィルタの装着方法が無い、というのが現実であった。マットボックスもほとんど蹴られてしまうため、レンズに合わせた加工工作が必要な状況であった。蹴られた部分を削ると強度も下がるため、バリの処理を如何にしっかりしてもレンズやフィルタのあたり傷も心配なため、あまりやりたくない工作だ。

しかし、同ブースにあったCokinユニバーサルリングX499Nと、CokinフィルタホルダーB100Aを組み合わせることで、130mmまでのフィルタ径に対応できる。

Cokinユニバーサルリ

ングX499Nと、CokinフィルタホルダーB100Aの組み合わせは、映像屋にも検討の余地がある

Cokin角形XPROフィルタXLを利用できるため、安価にフィルタ環境が整えられるのは魅力的だ。無論、マットボックスのようなハレキリなどは出来ないが、まっとうに大口径での広角に耐えられるマットボックスは、実際のところハイエンド製品でも厳しい状況のため、確実に蹴られにくいこうした製品の存在は、ハイエンドユーザーにとっても福音となるだろう。

また、KPIブースにおいては定番の映画用フルサイズセンサー向けハイエンドレンズVISTAシリーズではフルラインナップを取りそろえており、フルサイズセンサー時代に同社がいち早く対応したことを印象づけていた。

さらに、欧米ではLeicaショップで売っていることでおなじみの高級感溢れるOberwerthカメラバック類も充実しており、従来の小型なLeicaMシリーズ向けのみならず、少し大きめのLマウントシステムを入れるサイズにちょうど良い大型スチルカメラサイズの対応もしているあたりがさすがという印象だ。

Oberwerthカメラバックも大型なものが増え、Lマウントシステムをしまうのにちょうど良いサイズのものが揃っていた

メモリカードブース(TOSHIBAブース、Lexerブース、SanDiskブース)

TOSHIBAブースでは現行EXCERIA PRO SDHC/SDXCメモリカード(N502)がメインであった

4K収録を考えると、極めて重要なのが収録メディアだ。今回のCP+2019では各社から超高速メディアが発表されていたのが印象的であった。

例えばTOSHIBAブースでは、筆者も愛用しているEXCERIA PRO SDHC/SDXCメモリカード(N502)が展示されていた。これは現行のSD系メディアとはいえ、安定性と信頼性でトップエンドを誇るメディアであり、プロならばここぞという場面で必ず使っているメディアの一つだろう。

高級高速メディアの定番、Lexarもついに復活!

また、中国系資本に買収されて一時的に日本を撤退していたLexarもついに復活していた。世界最大容量の1TBという容量や、後述するCFexpressをひっさげての登場は、会場の話題をさらっていた。レキサージャパンとして日本にも直接販売を展開するということで、今後が楽しみだ。

SanDiskブースは、CFexpressの展開がよくわかるブース構成となっていた。また、収録用外付けSSDも力を注いでいた

SanDiskブースでは、SD系メディアの他、CFexpress対応カードを大々的に発表していた。CFexpressは、メモリカードメーカーやカメラメーカー各社が乗る新メモリカード規格であり、このCP+2019から大々的に各社乗り込んできた規格だ。

前述のPanasonic LUMIX S1/S1Rももちろん対応予定であり、また、Sonyでは対応カメラこそ未発表なものの、CFexpressカードそのものを自社発表していて、次世代のメインカードの座はほぼ確定していると言って良いだろう。また、CFexpress 2.0と銘打って、既存のCFexpressをTypeBと定め、より小さな小型カメラ向けのTypeAと大型で高速なTypeCの二種類も今後開発してゆくそうだ。

富士フイルムブース

富士フイルムブースは相変わらず巨大だ

富士フイルムブースでは、新型コンパクトレンズ交換式カメラX-T30の発表を行っていた。X-T30は、既存のベストセラーAPS-CハイブリッドカメラX-T3のミニサイズ版という位置づけで、サイズも価格もぐっと下げながらも、センサーは上位機であるT3と同じ、もちろん、エテルナカラーやF-Logも搭載という、非常にユーザーフレンドリーな製品だ。

X-T30は上位機種とほぼ同じ性能ながら、手のひらサイズの安く小さい素晴らしいカメラだ。ただし、録画時間は4Kで10分だが、実用を考えれば問題無いだろう

ただし、動画ユーザー的には残念なことに、4Kは30Pまでで、その連続録画時間は10分程度。小さな筐体での熱処理の限界だから、これは致し方ないとはいえ、実に惜しい。ただ、現実的に映画撮影において10分以上の長尺というのはほとんどの人が経験がないことだろう。そう考えると、サブ機としては全く問題がない、とも言える。ドキュメンタリには使えないが、サブ機として鞄の中に入れておくと安心、という位置づけのカメラだ。

Photokinaで発表された1億画素中判機、GFX100は、まだ製品が出ていないとのことで、モックアップ展示だけであった。こちらも大いに期待したい。

コシナブース

コシナブースはシックなデザインだ

マニュアル交換レンズメーカーであるコシナブースでは、既存レンズのEマウント対応製品の展開の他、Mマウント互換の新型レンズを展示していた。

Eマウントは、その軽量小型な設計の都合上物理口径が狭いため、マウントアダプターを使ってオールドレンズを装着すると、どうしてもパープルフリンジやマゼンダシフトが起きやすい。しかし、レンズ内に乱反射防止の遮光処理の仕組みを入れればこれは簡単に回避されるため、Eマウント用のレンズ改良の需要がある。こうした対応をレンズメーカーが積極的に行ってくれるのは、大変にユーザーフレンドリーと言えるだろう。

また、Mマウント(コシナではVMマウントと呼称している)向けレンズとしては、75mmのクラシックスタイル単焦点レンズNOKTON Vintage Line 75mm F1.5 VMの発表があった。75mmの望遠レンズは、レンジファインダー方式を主とするMマウントとしてはかなり長めの望遠であり、それがF1.5もの明るさで撮影できると言うのは、非常に魅力的だ。今までの同社現行ラインではHELIAR classic 75mm F1.8が最も明るいレンズであったから、それが大きく更新されることとなった。

NOKTON Vintage Line 75mm F1.5 VMは、超高速望遠レンズとして期待できる

コシナはレンジファインダー互換レンズを長年作り続けているという面白いこだわりを持つメーカーだ。そこから、マイクロフォーサーズ向けのハイエンドレンズで名を馳せ、最近はフルサイズセンサー互換マニュアルレンズ、という方向にシフトしている。シネマ系との相性も良いため、サブレンズとして愛用している読者諸賢も多い事だろう。今後もコシナにはこうした面白いレンズを期待したい。

KIPONブース

Lマウントアライアンス外のサードパーティながら、Lマウントを考えるときにKIPONは外せない

KIPONは、サードパーティマウントアダプタメーカーながら、いち早くLマウントに対応していたことで知られる。

もちろん、アライアンス外での対応のため、電子接点対応などの電子的な対応は出来ないメーカーだが、そのマウントアダプターの信頼性は高く、特に、LマウントからPLマウントへの変換コネクタPLSL PL-SLや、Mマウントレンズのマクロ対応Lマウントカメラ用アダプタLMSLM L/M-SL Mは、Leica SLユーザー必携のアダプタだ。

特に、後者のLMSLM L/M-SL Mは、薄いアダプタ本体の中にマクロヘリコイドが組み込まれており、回転によってどんなMマウントレンズでもマクロ対応のLマウントレンズに変えてしまう逸品だ。Mマウントレンズはレンジファインダー対応という性質上、どうしても最短焦点距離が遠く、食事などの近距離ブツ撮りや自撮りにはほぼ使えないのだが、それがこのアダプタ一発で解決してしまう。今後、Lマウント対応のカメラを買うのであれば、このLMSLM L/M-SL Mは必携と言っても良いだろう。

また、HandeVision IBERITという名前で独自の互換レンズも出していて、これもLアライアンス外ながら、Lマウント向けのシリーズが出ている。もちろんLeicaの公式レンズほどの画質は無いが、6~7万円台と安価で、しかもそれなりの画質のレンズがLマウント直結で使えると言うことで、意外に愛用者が多いレンズである。

HandeVision IBERITシリーズ。実は密かにLマウント対応だ。案外綺麗で価格を考えると超お得

KIPONには、今後もこうした、おッ!と思わせる製品に期待したい。

銀一ブース

銀一は手広く卸売りもしているが、旗艦店が月島にあり、大変便利なショップだ

銀一ブースでは、様々な周辺機器の紹介を行っていた。中でも筆者が気に入ったのが、RODEのロードキャスタープロ(RCP)だ。このミキサー・レコーダーは76,000円と安価なものながら、4チャンネル入力とUSB入出力等多彩な入出力を持ち、さらにはサンプラー機能まで一体化した画期的な製品だ。

安価で高性能なマイクで知られるRODEらしく、非常に高音質で、優れたノイズゲートも付属しており、ちょっとした放送やローバジェット映像程度であれば必要充分な性能だと言える。

RODEロードキャスタープロは、非常に高性能なサンプラー付きミキサー・レコーダーだ

また、撮影向けアパレルが充実しているのも面白いところで、中でも、有名高級アウトドアブランドFoxFireの防虫ウェアシリーズが置いてあるのが大変興味深かった。せっかくこうした撮影用ウェアをスタッフ向けに揃えても、個人向けじゃ無いのか?という会計からの突っ込みが入る、というのは業界あるあるの定番トラブルだが、ウェアをショップで扱ってくれるというのは一目で撮影用ということがわかるため、説明の手間が省け、非常にありがたい。

撮影定番のFoxFireの防虫アパレルも取り扱いがあった。こういう製品を業務ショップで扱って貰えるのは大変ありがたい

SmallRigブース

SmallRigブースは、NEPの日本人スタッフの全面支援を受けて、本社メンバーが直接対応していた。すごい気合いの入り方だ

筆者の周囲にも愛用者の多い低価格RIGメーカーSmallRigのブースでは、メーカースタッフが多数来日して製品説明を行っていた。本社からの直接来日ということで日本語を話せるスタッフがほとんどいないため、日本正規販売店のNEPからの日本語支援を受けてのブース展開とのことであった。CP+も規模が大きくなり、すっかり国際色豊かなイベントとなったと感じる。

BMPCC 4K等の安価なカメラに数十万円の専用RIGを合わせるというのは、全くナンセンスな話だ。しかし、汎用RIGではどうしても隙間が空いて大型化し、当然に重くなり、かゆいところに手が届かなくなってしまう。本来、そうしたちょっとした欠陥を埋めるためにRIGを組むのに、それが汎用リグだと無視せざるを得ないというのもこれまたおかしな話だ。

その点、SmallRigであれば、安価なため、個々のカメラ毎にRIGを組んでも惜しくない。作りもしっかりとしており、高級RIGに比べて実用上の問題はない。今までは日本語対応や企業導入時の国内ストックの対応が唯一の問題だったが、これもNEPを経由すれば問題ないということで、RIGの第一選択に成り得るメーカーへと躍進したと言って良いだろう(ただし、メーカー直販やAmazon購入の場合にはNEPのサポートは無いので要注意)。

人気のSmallRigのポケット工具も、NEP経由ならまだ買えるとのこと

現に、本社直販では品切れでメーカーからキャンセルされてしまった人気のポケット工具も、NEP経由ならまだ買えるという。最近はネット通販のお陰もあって世界各国のメーカーの製品を使う機会が増えたが、製品展開が各国のやり方そのままで困惑する場面が多くある。そんな中、SmallRigのこうした、日本の商習慣に合わせた対応は、大変にありがたい。

パール光学工業ブース

パール光学工業のブースでは、実際に同社製8K解像力のテストチャートを使ってレンズ解像度のチェックを行うことが出来た

パール光学工業のブースでは、レンズの解像度をチェックする解像度チャートの紹介を行っていた。

今まではメーカーや研究施設での需要ばかりだったと言うが、レンタルショップや学校など、レンズの精度低下に気をつけなければいけないところでも活躍の機会は多いだろう。様々なチェックに使える同社製のシートだが、最も頻繁に使う解像度テストは。カメラを固定して上下を画面にを合わせるだけという非常に簡単な仕組みで行うことが出来る。通りすがりに様々な人がレンズをテストしていて、非常に活気があるブースとなっていた。

チェック方法の案内。非常に簡単に解像度をチェックできた

今回のCP+のようなイベントに合わせ、従来の数万円の8K解像力の大型チェックチャートだけでなく、1万円以下の小型で手軽な4K解像度チャートも販売するということで、個人ユーザーにもありがたい展示であった。

ETSUMIブース

エツミネジで知られるETSUMIブース。現在では非常に手広い製品を扱っている

ETSUMIブースでは、定番のエツミネジやスチルカメラ用の周辺パーツだけでなく、Libecの三脚の展示も行っていた。Libecの三脚はスライダーなどと組み合わせられるリーズナブルなシリーズ、ALXシリーズが有名だがこれが、TH-Xシリーズと統合されてTH-Zシリーズとなることが展示発表されていた。

TH-Zシリーズの実機が展示されていた。小型軽量ながら堅牢な作りで、非常に期待が持てる

TH-Zシリーズのプレートはマンフロット互換のものとなるため、従来のLibecプレートと区別するために色分けがされているのも特徴だ。また、雲台穴のボール径がが75mmとなるため、ALXシリーズの雲台が取り付けられる。

新製品はマンフロットなどの他社製品と互換があるようになっため、旧来の独自プレートとはネジ部分の色を変えてある。こういう丁寧さがありがたい

さらに、同ブースでは、RS-250が値下げされる事が告知され、さらにはミドルレンジ名機RS-350の復活も予告されていた。最近中国に押され気味だと思っていたが、国産三脚も非常に今後に期待できると言って良いだろう。

LAOWAブース

LAOWAブースには勢いがあった。ただし、肝心のシネマレンズはカメラ電源が落としてあった。残念

先日のPhotokinaで本格的なPLマウントシネマズームレンズ発売をぶち上げて話題をさらっていた中国系レンズメーカーLAOWAのブースでは、今回、24mmF14 2×MACRO PROBEを展示発表していた。

このレンズは、見た目からして異様な、まるで蚊の刺し口のような形状のレンズであり、先端は防水。水中や草木など、様々なところに突っ込んで撮影するための特殊マクロレンズなのである。実際にブース内では水槽にレンズ先端を突っ込んでの撮影を体験することができ、大行列を作り上げていた。膨大な人口市場を背景にしてこうした全く新機軸の製品を出せるのが、中華系メーカーが世界で評価されている最大の理由だろう。

24mmF14 2×MACRO PROBE。異様な形だが、大変に役立つレンズだ

BenQブース

BenQのブースも実に素晴らしい(何が素晴らしいのかは読者諸賢なら一目でわかるとおり)

中華系高品位モニターメーカーのBenQブースでは、様々なカラーマネジメント機能付きPCモニターの展示発表を行っていた。

中でも、リファレンスモニターとバッテリをペリカンケースに詰めた山岳用特注品の展示発表は、その横に置かれた山岳用カメラウェアの展示と相まって、非常に説得力のある展示となっていた。

BenQに特注されたペリカンケースに入ったリファレンスモニタとPCのセット。実際に使われた製品らしく、迫力と説得力のある展示であった

実際、筆者周辺にはキャンピングカーや車中泊仕様車を業務で愛用している人が複数居るが、その最大の理由は、移動編集・現像オフィスとしての役割だ。大きなバッテリーと100V電源、そこに繋ぐPCさえあれば、今の時代はそれだけで仕事が成立する。車が入れない山の中であれば、BenQの提案するようなこうしたバッグでのカラーマネジメントBOXは、非常に活躍することであろう。

カラーグレーディングの本質を考えれば現地でその場で色を揃えるに越したことは無い。最終的に大きく色を変えるにしても、実際の色に正しいLUTがあるのと無いのとでは、まったく異なる。安全で高性能なLiFeバッテリの発展でバッテリーが小型化する中、こうしたアプローチは今後、ドンドン追求してゆくべきだろう。

キッチンカーグルメ&キャンピングカー展示エリア

キッチンカーグルメ&キャンピングカー展示エリアは非常に野心的なエリアだ。初日は不幸にして雨だったが晴れていればランチタイムは人で溢れる

最近のCP+の目玉の一つが、このキッチンカーグルメ&キャンピングカー展示エリアだ。特に土日にはみなとみらいエリアのランチ環境は厳しくなるため、その補填としての屋外食堂と、撮影で最近多用されるようになったキャンピングカーの展示を兼ねてしまえ、という野心的なエリアがこのエリアだ。

CP+開催初日は不幸にして雨天のため、全く客足のない状況ではあったが、展示は生真面目にしっかりと行われていた。もっともこのエリアのメインターゲットは土日の子連れなので、初日はまあ、こんなもので良いのかも知れない。

このキッチンカーグルメ&キャンピングカー展示の中でも筆者の目を引いたのが、ネッツトヨタ横浜株式会社のライトエースバン特別仕様車“キャンパーアルトピアーノ”だ。

アルトピアーノは、撮影機材運搬でもおなじみのライトエースの荷台をネッツトヨタ横浜自らが寝台&キッチン改造した車輌で、標準で500W最大1500Wの正弦波インバータ付きでセカンドバッテリーを搭載することが出来る。それだけの電力があればちょっとした撮影の休憩場所や編集作業も難なく行うことが出来るだろう。

しかも、このアルトピアーノは、価格が2,484,000円と、キャンピングカーとしては驚くほど安い。元々のライトエースDXと比較しても90万円弱程度の差額でしか無い。この秘訣は、FFヒーターが付けられないことと、断熱材が入っていないこと、もちろんポップアップルーフも無いこと。つまり、外装には塗装以外一切手を付けていないことにその特徴がある。あくまでも本体機能としては車中泊や軽作業向けであり、本格キャンプは想定外なのだ。

代わりに、本格キャンプ向けには屋根の上に荷物置きやルーフテントがオプションで搭載できるほか、アルトピアーノ蓼科というオーナー専用のコテージ付きキャンプ場を年2泊まで利用できることで補っている。

しかし、撮影向けと考えると、これは必要充分だ。トイレこそ、別途簡易トイレとトイレテントを持っていく必要はあるだろうが、この1台さえあれば、数日間にわたっての撮影も出来る。シャワー設備は無いので、まあ体が不快になるまでの間が限度だが、それでもテントでねばるよりずっと快適な撮影が出来るのは明らかだ。最近は山奥にも日帰り温泉がある事も多いので、買い物がてらそうした設備を使えば、相当に長期間の撮影が出来るだろう。

キャンパーアルトピアーノは、メーカーオフィシャルディーラーであるネッツトヨタ横浜自らの作った、オフィシャルキャンピングカーだ

キャンピングカーの欠点として、大変に高額な車輌なのに、車体重量があるため長距離を運用していると車体の劣化が早いことが挙げられる。その点、このキャンパーアルトピアーノであれば、そもそも車体が軽いために劣化も一般車並みで、元々商用車ベースなので長距離長期間運用に強く、さらに、もし買い換えるにしても、車体改造はしていないためそこまで高額では無いというメリットがある。もちろん定番のライトエースだけにアフターパーツも充実しており、長年乗る事が出来るだろう。

オーナー専用キャンプ場はなかなか心をくすぐるが、さすがに撮影ベースとすることは出来ない。しかし、カメラ機材屋カラーグレーディング機器が小型軽量化していちいちポスプロや局に戻る必要が無くなった昨今、そうした様々なキャンプ場や車中泊可能な駐車場をベースとして撮影をするスタイルは、今後、一つの定番となってくるのでは無いだろうか。

プロ向け動画エリア

今回のCP+でも、プロ向け動画エリアが大盛況であった。あまりに盛況すぎて業者日である木金のみ会議棟の外れでの開催となったここ数年だが、それでも常にセミナーは予約で満席、ブースにも人が絶えないという状況で、スチルユーザー、特にプロカメラマンの動画への関心が非常に高いことがよくわかる。

プロ向け動画エリアは今年も大盛況だ

中でも入り口入ってすぐの三友ブースでは、Leitz Cine Wetzlarが様々なシネマレンズを展示しており、大いに注目を集めていた。パンフレットだけとはいえ、ついに、フルサイズセンサー向けのLeitzシネマズームレンズの開発発表も行われていて、いよいよハイエンドの世界でもフルサイズセンサー対応が進んでいるな、と感じることが出来た。

また、CP+ユーザー層から見て現実的なラインとしては、MマウントLeicaレンズに映像向けギアを付けたLeitz M0.8シリーズの展示もあり、こうしたレンズをLeica SLに装着することで、その画質の高さを示していた。単に同じLeica系で揃えたと言うだけで無く、Leica SLの信頼性の高さと高画質が伺える一幕でもあった。

三友ブースでは、新しいLeitzシネマズームレンズのパンフレットが置かれていたほか、THALIAシリーズやM0.8シリーズなど、様々なLeitzシネマレンズをLeica SLに装着して試せるようになっていた

また、RAIDブースも筆者が注目したブースだ。こちらではREDシネマカメラが展示してあったほか、RAID社取り扱いのbebob社の小型Vマウントバッテリー、VMICROバッテリーを展示していた。

bebob社のVMICROバッテリーは半分のVマウントバッテリーのサイズながら容量はほとんど変わらず、さらに2個運用でホットスワップの連続運用も可能、しかも安いという素晴らしいバッテリーだ

これは、昨今のバッテリー革命で半分のサイズに小型化されたVマウントバッテリーで、二個横に並べることで、従来のVマウントバッテリーサイズでの運用も出来る。二個運用の場合には一つずつバッテリー交換することでホットスワップ運用が可能であり、これにより、バッテリーが全く切れること無く連続での電源運用が可能となっている。屋外での長時間撮影には必須のバッテリーと言えるだろう。

御苗場エリア

大さん橋では、アマチュア~若手写真家と、中小出版社のイベント、御苗場が行われていた

先に書いた通り、CP+は横浜市を挙げたイベントで、パシフィコ・アネックス棟からカップヌードルミュージアムを経て大さん橋までの、横浜港の南西エリアを広く使って行われる一大イベントだ。中でも、大さん橋のイベントは、若手作家と出版社を中心にした御苗場と呼ばれる写真展示エリアとなっていて、CP+のもう一つの顔となっている。

手前側のエリアでは出版社によるテキストや写真集、あるいはそうした写真集を作るための商材の販売が行われ、奥のエリアは写真の展示スペースと、若手写真家達向けのトークイベントスペースとなっている。

筆者が注目したのは、向かって右奥のグループ出展や、学生展示のスペースだ。知人の写真家(及びその卵)達も多く出展しており、普段はネットでしか見ることの出来ない彼らの作品に直接印画紙を通じて触れられるのは、なによりも得がたい経験であった。やはり芸術としての写真は、印刷して、展示して、人の目に触れて初めて意味を成すという部分もある、ということを改めて考えさせられる。

筆者注目のSエリア。グループ出展や学生展示のエリアは、非常に野心的で若々しく、面白い。写真を言われるまま撮って切り売りする内に忘れてしまった何かを思い出す、大好きな空間だ

御苗場エリアは大雨の中も写真家達でごった返しており、写真を見ながらそれぞれに思いや感想を語り、あるいは手法に苦笑し、と、大変に熱い空間であった。新製品ばかりが注目されやすい同イベントだが、これもまたCP+の大切な一面だ。

まとめに

CP+の夕方。御苗場の熱意を秘めたまま横浜の町にカメラ片手に帰るのが、また楽しい

さて、このように筆者が見たCP+であったが、筆者が注目しているLマウント周りを除き、敢えて、大型カメラメーカーブースは外して回ってみた。大型ブースに関しては、PRONEWSのオフィシャル記事やニュースリリースを読めば分かることなので、そうした歩き方もまあ許されるのではないだろうか。

CP+は単なる商業製品発表のイベントではなく、カメラユーザーが直接作り上げる場でもある。直接参加することに意味があり、また、そうして参加した人の意見を読み聞きすることに意味があるイベントでもある。だからこそ、個々人の考えた歩き方に価値があると考える。

写真や映像を趣味として捉えた場合、どうしてもマニアの世界は理不尽なことや不可解な人に出会ってしまう事も多いが、趣味を越えた本気のもの作りの人々が触れ合う場である御苗場ブースや中小ブースでそうした目に遭うことはまずない。結局、機材は所詮機材であり、どこまで行っても道具でしかないのだ。

写真や映像を撮り、それを見せ、伝える、という最終段階の大切さを忘れずにいられるカメラの本質に迫るイベント、それがCP+だといえる。是非ともまた来年も参加したい。

読者諸賢も、スチルカメラだから関係無いなあ、等とは思わず、是非次の機会にCP+に足を運んで頂ければ、と思う。その際には30分でいいから是非、御苗場にも足を運んで頂き、写真や短編映像というアートの最終出力部分に生で触れて貰えれば幸いだ。

WRITER PROFILE

手塚一佳

手塚一佳

デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。