みなさん、こんにちは。株式会社エンタミナの田口真行です。
私はこれまで20年以上に渡り、ウェブディレクターとしてウェブコンテンツの「ディレクション」を行ってきました。「ディレクション」は、その業務内容が掴みにくく、また習得が難しいスキルと言われます。
ディレクターが担う「ディレクション」とは、ずばり、コンテンツをゼロイチする「企画と設計を担うプランニング」と、コンテンツをカタチづくる「進行管理を担うマネジメント」です。その「ディレクション」次第で、クオリティや成果は大きく変わります。
ライブ配信コンテンツのクオリティを左右する「ディレクション」に向き合う上で、私自身とくに意識しているのが「3つのデザイン」です。
時間軸のデザイン
「時間軸のデザイン」は、シナリオの設計です。動画コンテンツは、静止画やテキストのコンテンツと異なり、開始から終了までの時間軸を持っています。そのシナリオの設計に、私たちの会社では「進行表」シートを用いています。
この「進行表」シートでは、ライブ配信コンテンツに登場する出演者のアクションに対応したビデオ&オーディオのオペレーターそれぞれアクションを一元管理してまとめます。
それぞれの人の動きを事前準備段階で定義し、それをチームメンバー全体で共有した上で、各シーン毎のプログラムを実行します。
もちろん、ライブ配信では「生放送ならではのアドリブ」も魅力のひとつです。進行がガチガチに固まることで、その魅力が半減してしまうのでは?と懸念する方もいるかもしれません。
しかし、アドリブはあくまでコンテンツを彩るエッセンス。しっかりした「仕込みの土台=進行表」があるからこそ、相乗効果でアドリブも活きてきます。「活きるアドリブ」を効果的に取り入れるためにも、事前準備段階でしっかりしたシナリオの設計が求められます。
環境のデザイン
「環境のデザイン」は、配信現場とシステムの設計です。ライブ配信を実施するにあたっては、映像や音響の専門機器を現場に持ち込み、それぞれのレイアウトを検討した上で配置する必要があります。
出演者とカメラのポジション次第で映像に映り込む要素は変わり、また、機器の配置次第でスタッフ間の連携や操作性も大きく変わります。さらにレイアウトは、人の導線(出演者やスタッフの動ける範囲)確保にも影響してきます。
ライブ配信を実施する現場では、様々なことに配慮して「人と機器のレイアウト」を考える必要があります。そこで、私たちの会社では「現場レイアウト」シートを用いて、準備段階で会場を事前確認し、出演者や機器の配置をプランニングしています。
また、機器間のケーブル結線は「ワイヤリング」シートで管理しています。
「現場レイアウト」シートと併用することで、会場毎のケーブル選び(長さや本数)、また変換アダプタの有無などを抜け漏れなくチェックできるので、ライブ配信当日の現場で発生しがちな「忘れ物」や「ケーブルの長さが足りない」といったトラブルを未然に防ぐマネジメントにも最適です。
表現のデザイン
「表現のデザイン」は、ユーザーに届ける「画づくり」の設計です。もちろん、ライブ配信では「画づくり=映像」と合わせて「音づくり=音響」も考える必要がありますが、ここでは「画づくり」にフォーカスして解説します。
ユーザーに届ける「画づくり」の設計は、まず最初にカメラで捉える「カメラショット」を考えます。そして次に、PowerPointのスライドやテロップなどを映像合成する「ミキシングショット」を考えます。
それぞれのショットをナンバリングして「進行表」の内容と対応させることで、カメラマンやビデオオペレーターとの連携がスムーズになります。
ライブ配信ディレクションを支援するツール
今回は、ライブ配信コンテンツを作り上げるためのプランニング&マネジメント、そのディレクション業務の中で意識する「3つのデザイン」について解説しました。
解説の中で取り上げたシートは、ライブ配信コンテンツのプランニング&マネジメント支援する「ライブ配信ディレクション」ツールとして、下記のサイトで配布しています(無料でダウンロードできます)。ぜひ、ご活用いただければ幸いです。
▶︎プランニング&マネジメント支援する「ライブ配信ディレクション」
株式会社エンタミナのウェブサイトで無料配布中
次回もどうぞお楽しみに!
田口真行(株式会社エンタミナ代表取締役/ウェブディレクター)
1999年、フリーのウェブディレクターとして独立後、株式会社デスクトップワークス(現・株式会社エンタミナ)を設立。企業サイトのディレクションを手がける傍ら、攻殻機動隊トリビュートアルバムのアートディレクションやSKYPerfecTV!「DesktopTV」のプロデュース、セミナーイベント主催など幅広く活動。ウェブディレクター育成機関「ウェブディレクタースクール」、ウェブディレクション支援ツール「Webディレクター手帳」、書籍「ディレクション思考」、ウェブディレクターの能力を可視化する業界初の試み「ディレクション検定」などの独自サービスを展開。動画制作や動画配信にも意欲的に取り組んでおり、2014年~2020年の6年間で1,300本以上のライブ配信を実施。