更新され続けるRSシリーズ
DJIジンバルの地位を確たるものとしたDJI RS2から、約2年ごとにマイナーチェンジを繰り返してきたRSシリーズですが、今回も前モデルRS 4の発売から約2年を待たずして、Proモデルに先駆ける形でRS 5が登場しました。
RS3から3種類のラインナップが出ており、重量級カメラにも対応した「RS 4 Pro」、最軽量の「RS 4 mini」、そしてそれらの中型クラス全般をカバーした「RS 4」と、用途に合わせてバリエーションを展開しており、しかも更新の度に撮影が楽しくなるような要素を堅実に組み込んできました。
前作RS 4はワンオペ撮影を前提とし、軽量・安定・扱いやすさのバランスが高い次元で成立していた素晴らしい完成度で、ラインナップでも他とうまく棲み分けがされていた印象ですが、今回はどう変わったのでしょうか?
基軸となるモーターはきっちりと強化され、第五世代安定化アルゴリズムの搭載、そしてジンバルの最大トルクが50%向上しました。
3kgのペイロードは据え置きですが、重量が増した状態でも操作感が変わらず、スポーツなどの激しい動きやローアングル時の動作がより安定します。
ここはある意味期待通りの進化ではありますが、最大トルク50%向上という数値は、見た目にもかなり大きく感じます。
では、他はどう変わったのでしょうか?
その進化を見ていきましょう!
- DJI RS 5(単体):税込68,860円
- DJI RS 5コンボ:税込79,200円
全軸マイクロ調整ノブ
最大のブラッシュアップと言える、全軸に微調整用バランスノブが搭載されました。
これは、ジンバル最上位機種であるRONIN 2でしか搭載されていなかったもので、バランス調整にかかる時間が短縮できます。
具体的には、バランス調整時にアームを傾けたままスムーズに調整が可能になり、これまでの
「バランスを確認→アームを動かす」
という工程が、
「バランスを見ながらその場で追い込む」
という一連の動作に集約されました。
私もジンバルは相当使ってきましたが、レンズ交換や縦横切り替え後の再バランスが、体感レベルでかなり速くなっています。
急いでいる現場でのバランス再調整時のあのもどかしさは経験がある方も多いと思いますが、今回でかなり解消してくれると思います。
電動アシストハンドル
RS 5で新たに用意された電動アシストハンドルは、見た目は地味ですが実際に使うと撮影姿勢に影響する大きなアップデートです。
ブリーフケーススタイルと呼ばれる、ジンバルを腰より低い位置で構える際に活躍するアシストハンドル(RS 4にも同梱)に、ジョイスティック・ボタン・トリガーを配置し、左右の手を入れ替えたり、片手でハンドルを握った状態でもジンバルの操作ができるようになりました。
これにより、高低差のあるアングル変更が圧倒的にスムーズになるだけでなく、ジンバル操作のために利き手を固定する必要がなくなり、ジンバルワークの自由度を上げてくれます。
バッテリーが65W急速充電対応に
こちらも地味な進化ですが、重要なポイントです。
RS2時代から変わらず採用されてきたBG30バッテリーが、今回BG33にアップグレードしました。
バッテリー本体のサイズや重量はほぼ変わらずで(若干グリップが太くなったり、ボタンの位置が違う程度)、駆動時間が従来の12時間から14時間に延び、65W PD急速充電に対応したため、1時間で充電が完了します。
BG30でも充電環境があれば2本で十分1日撮影が可能でしたが、撮影が続いていて充電が追いついていない場合や荷物を極力減らしたい状況でも、1時間電源が確保できれば充電が完了できるのは、バッテリーの充電が多いムービー撮影にとっては大変有難いです。
私も撮影で実際に体感しましたが、ジンバルを使わないタイミングの充電で、完全に完了していて驚きました。
強化インテリジェントトラッキングモジュール
こちらも目玉の1つで、新たに強化されたインテリジェントトラッキングモジュールが導入されました。この小さなモジュールはRS 4から採用されていましたが(以前はスマートトラッキングモジュールという商品名)、認識可能なものは人物のみだったため、使用可能な場面が限られていました。
今回の強化版から人物・車・ペット・任意の被写体をタッチ操作で指定できるようになったため、より幅広い構図補助と追従撮影が可能になりました。
また、旧モデルは装着にアダプターを必要としましたが(RS 4 miniを除く)、RS 5には直接装着できるので、より手軽に持ち運べます。
ワンオペのVlog撮影はもちろん、カーマウント・バイクマウントや、スポーツ、足場の悪い環境での追従など、従来ではある程度ジンバル操作技術が必要とされる場面で効果を発揮してくれます。
私は今回初めてこのモジュールを試してみたのですが、決まったジェスチャーに反応してトラッキングを開始する対象認識の正確さや、タッチで簡単に追従目標を指定できる手軽さには驚きの連続でした。
未経験の方は是非体感していただきたいポイントです。
被写体認識の精度はとてもよく、手元のスクリーン上でもいくつか候補を表示してくれるので操作がしやすいです。ただジンバル任せにした場合の追従動作はまだ完璧とは言えず、特に35mm以上のレンズでは若干の遅れを感じる場面もありました。構図維持の補助的な感じで使うのが効果的かなと思います。
ただ運用次第では大きな戦力になり得る可能性を秘めたオプションです。
「安定させる」から「撮れる動きへ導く」ジンバルへ
特筆すべき機能の1つに「Z軸安定度インジケーター」が挙げられます。
撮影者の歩き方が安定しているかどうかをモニター上で色でフィードバックしてくれるというユニークな機能です。
- 緑:安定
- 赤:揺れが大きい
動画のように、手持ちの場合所謂「ジンバル歩き」ができているかで表示がはっきり変わります。極力ジンバルに振動が伝わりにくい歩き方・持ち方ができていれば表示が安定します。
ジンバル操作に慣れている人も、どういった動きがジンバルに負担がかかっているのかを知る指標にもなります。
これは単なる表示ではなく、”撮影者のフットワークを育てる機能”です。
機材が撮影者にフィードバックを返す、という点でRS 5はこれまでのジンバルとは一段違う思想を持った製品だと感じました。
初心者〜中級者がワンランク上の映像に近づくための、かなり実践的な仕組みです。
この機能により、ジンバルはあくまでカメラの「防振装置」というところから、撮影者の動き自体もサポートする領域まで踏み込んできた、と言えると思います。
実際の使用感
RS 5、RS 4、RS 4 Proの3台を使い比べてみました。(Proはセッティングの参考用)
まずモーターの限界値を見たかったので、RS 4/5にできる限り盛り込んだセッティングを搭載しました。
- フォーカスモーター×2(Focus、Zoom)
- DJI SDR Transmission
- 24-105mm ズームレンズ
- バリアブルNDフィルター
カメラ周辺の重量は2.3kgといったところです。
ペイロード的にはまだ余裕がありますが、縦位置撮影にした場合はバランスの問題でこのくらいまでが限界かなと思いました。
次にバランスをレンズの24mm側でとっておき、モーター始動後に105mm側に延ばしてわざとバランスを崩し、高負荷時の挙動をチェックしました。
結果としては、RS 4はバランスが取れていれば割と問題なく動いていましたが、バランスが崩れたとたんにパンモーターが全くついてこなくなりました。
RS 5に関しては、バランスが取れている方はもちろん、崩した側でもバランス注意の警告が出ているにも関わらず、破綻は見られませんでした。
また、落ち着いてバランスが取れている側の挙動をみてみても、RS 5の方が反応に余裕が感じられ、さすが50%向上!と思わず拍手を送りたい気持ちになりました。
アームの長さに関してはRS 4/5共にほぼ同じサイズで、Proよりも短いため色々オプションを付け足すとバランスが取り辛くなります。特に縦位置でのセッティングはバランスが崩れやすいので付ける位置の工夫が必要です。
そういった現場対応力では、アームの長さとパワーの違いでRS 4 Proに軍配があがります。
ただ、バランスの再調整の際に効いてくるのがマイクロ調整ノブです。
ツマミで微調整できるので、明らかにセッティングが早く楽になりました。
RS 5の難点としては、ジンバル側のUSB-Cアクセスが2箇所しかないため、フォーカスモーター、ワイヤレストランスミッション、カメラUSB-C接続を同時に装着する際にはジンバル本体からでは不足するため、フォーカスモーターの空いたUSB-C→トランスミッションと接続して給電するしかないようです。
そして今回最も驚いたのが、電動アシストハンドルとインテリジェントトラッキングモジュールです。
両方とも取り出してワンアクションで装着でき、即使用可能になります。
ハンドルは挙動もスムーズで、本体コントローラーと使用感は変わりません。
今までローアングル撮影の場合は、操作をする関係で利き手を本体に添え続けないといけなかったのが片手で操作可能になり、腰への負担も大幅に軽減されます。
またトラッキングモジュールも、挙動はまだ若干スムーズさが足りないと感じるものの、足場の悪い場所での追従や、乗り物へのマウントなどでも効果が期待できると思いました。
まとめ:RS 5はどんな人に向いているか
RS 5は、概ね既存機能のブラッシュアップといったところですが、いくつか実験的な機能も加わっており、「ワンオペ撮影をどこまで楽に、どこまで攻められるか」を真剣に考えて作られた世代だと感じました。
- ジンバル操作に慣れてきた
- ワンオペで「動きのある画」を撮る機会が増えた
- RS 4の安定性には満足しているが、もう一歩活用の幅が欲しい
- ジンバル撮影が増えてきて、色々工夫してみたい
こうした人にとっては非常に有効な機材となります。
また、RS 4からの乗り換えを検討していらっしゃる方にも、より使い心地が良くなっているのでおすすめできます。
私を含めたRS 4 Proユーザーとしても、インテリジェントトラッキングやバッテリー、電動アシストハンドルなどのオプションは、とても羨ましく感じる素晴らしいアップグレードですので、それらを盛り込んだ上位機種(RS 5 Pro?)の発表にも期待がかかります。
あなたのジンバルワークを一歩先へ進めてくれる今回のアップデート、是非一度お試しください!
北下弘市郎(株式会社Magic Arms 代表)|プロフィール
映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター。大阪生まれの機材大好きっ子。音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。

