4K納品が当たり前になり、HDRや縦型動画など表現の幅も広がる中、編集者が向き合うモニター環境は大きな転換期を迎えている。
今回話を聞いたのは、広告映像を中心に映画VFXやミュージックビデオまで手がける映像制作会社・エルロイ。編集部部長の小熊汰一氏と、エディターの原光向氏に、5Kカラーマネジメントモニター「BenQ PD2730S」を導入した背景と実務での手応えを語ってもらった。
5K解像度がもたらす編集環境の進化。BenQ「PD2730S」
「BenQ PD2730S」は、5K解像度(5120×2880)対応したカラーマネジメントモニター。27型パネルに高精細表示を実現し、映像編集やグラフィック制作において細部まで正確な確認が可能だ。
Display P3およびsRGBを広くカバーし、キャリブレーションによる高い色再現性も特長のひとつと言える。Thunderbolt接続による安定した映像伝送と給電に対応し、Apple社のMacを中心とした制作環境との親和性も高い。写真・映像・デザインを横断するハイブリッドクリエイターに向けた、信頼性の高いプロフェッショナルモニターといえる。
5K解像度がもたらす編集環境の進化。BenQ「PD2730S」をエルロイ編集部が語る
―― 本日はエルロイ編集部の皆さんに、PD2730Sを実制作で使用した感想を伺えればと思います。
小熊氏:
こちらこそよろしくお願いします。株式会社エルロイ 編集部部長の小熊汰一です。
原氏:
同じく編集部の原です。よろしくお願いいたします。
ワンストップで完結するエルロイの制作体制
――まずはエルロイさんの制作体制について教えてください
小熊氏:
弊社は2012年設立の映像制作会社で、テレビCMやWebCMを中心に、近年は映画のVFXやミュージックビデオなど、エンターテインメント分野にも制作領域を広げています。
制作部、企画部、撮影部、編集部がひとつのフロアに集い、映像制作を社内で完結できるワンストップ体制を強みとしているプロダクションです。原と私はポストプロダクション工程を担当する編集部に属しています。
――編集部の作業環境についても教えてください
小熊氏:
CG制作も含む案件が多いため、基本はWindowsマシンを使用しています。
作業用モニターを2台、最終確認用のリファレンスモニターを1台設置した、いわゆるトリプルモニター構成が標準です。
一部の案件や出張編集ではMac環境を使用することもあります。
――編集用モニターとして、特に重視されているポイントは何でしょうか
小熊氏:
映像制作においては、色の正確性と再現性、そして解像度が最も重要だと考えています。
最終的な色判断はカラーマネジメントモニターで行いますが、編集工程そのものの段階でも、できる限り正確な表示環境で作業したいという意識があります。
BenQが提示した「5K×カラーマネジメント」という選択肢

――その中で、PD2730Sを導入された背景を教えてください
小熊氏:
4K納品が標準化する中で、「4Kを正しく確認できる編集環境」は必須条件になっています。
その状況でBenQが提案してきたのが、単に解像度を上げるのではなく、カラーマネジメントを前提とした5K解像度の作業環境だった点に強く惹かれました。
解像度と色管理を同時に成立させるというアプローチは、長年プロ向けモニターを手がけてきたBenQらしい設計思想だと感じています。
――実際にはどのような案件で使用されていますか
原氏:
Web広告やテレビCM案件を中心に、デザイン工程からオフライン・オンライン編集まで、PD2730Sをメインディスプレイとして使用しています。
IllustratorやPhotoshopを使ったデザイン作業でも、解像度の高さがそのまま作業精度につながっています。
小熊氏:
最近では、Amazon Primeで配信中の番組「音楽の家」の編集作業でも、常時メインモニターとして使用していました。
マルチカメラで撮影されたドキュメンタリー作品だったのですが、5K解像度のおかげで、マルチアングルの表示でも以前より細かい部分が確認できて、作業の精度が上がりました。
PDシリーズを選択した理由
――SWシリーズではなく、PDシリーズを選ばれた理由を教えてください
原氏:
私は漫画のPR案件を多数担当しています。編集作業に加えてデザイン工程の比重も高いため、映像とデザインの両立を想定したPDシリーズは、実際の業務内容に最も合致していると感じました。
5K解像度がもたらす作業効率の向上

――初めて5K解像度を使用した際の印象はいかがでしたか
小熊氏:
27インチというサイズは変わらないにもかかわらず、作業領域が大きく広がったことに驚きました。
モーショングラフィックス制作時には、シェイプのエッジや細部までシャープに確認でき、5K解像度の効果を強く実感しています。
原氏:
画面のサイズは変わらなくても解像度が変わるだけでこれだけ違うのかという印象です。UIを広く配置できることで、作業全体に余裕が生まれました。
小熊氏:
Premiere Proはアップデートを重ねるごとにUIが複雑化していますが、5K解像度があることで、プレビューを大きく表示しながら必要なパネルをすべて配置できます。
これまで別モニターに表示していたコンテや資料も1画面に集約でき、視線移動が減ったことは大きな変化です。
インターフェース設計と現場対応力

――インターフェースや筐体デザインについてはいかがでしょうか
原氏:
メタリックな質感で、スタジオ環境にも自然に馴染むデザインだと思います。
小熊氏:
背面インターフェースの配置が分かりやすく、配線が非常にスムーズです。
特に現場編集では、MacBookとThunderbolt 4ケーブル1本で接続できる点は、制作フローを考えたBenQの設計意図を感じます。
ナノマットコートがもたらす判断精度
――ナノマットコートの効果についてはいかがですか? 2000:1の高コントラスト比はいいですよね
小熊氏:
ナノマットコートは単なる反射防止ではなく、判断精度を下げないための表面処理だと感じました。
アンチグレアでありながら黒の階調が潰れず、バレ消しや細部チェックの際にも安心して判断できます。
原氏:
照明環境の影響を受けにくく、作業中のストレスが少ないですね。
Palette Master Ultimateとチーム制作
――キャリブレーションソフト「Palette Master Ultimate」の印象はいかがでしょうか
小熊氏:
Palette Master Ultimateを使って感じたのは、BenQがカラーマネジメントを"特別な専門作業"にしたくない、という姿勢です。
誰が使っても同じ結果に近づける設計になっているので、チーム全体で色を揃えるという意味でも非常に理にかなっています。
原氏:
目的別にプリセットが整理されていて、初めてでも迷わず使える点が良いですね。
――小熊さんはVFXも担当で、海外を含め外部スタッフとの連携が多いですよね。異なるモニター環境でひとつのシーンを整えるのは大変ではありませんか?
小熊氏:
そうですね。外部スタッフと進めるVFXでは、どうしてもコミュニケーションエラーによる時間のロスが起きがちです。相手の意図が、モニター環境の違いによって想定とは異なる色で伝わってしまうこともあります。
その点、全員が正しくキャリブレーションされたカラーマネジメントモニターを使うことで、作業効率が上がり、クリエイティブに集中できる環境を整えられると感じています。
――PD2730SはDisplayHDR 400認証を取得していますが、HDR案件の状況はいかがでしょうか。
小熊氏:
現状はまだまだSDR案件が多く、HDRは徐々に増えてきている段階ですね。今すぐ具体的な案件はありませんが、今後を見据えてHDR表示に対応できるモニターへ先行投資しておくことは必要だと思っています。
――PD2730Sは「CAD/CAMモード」、「デザインモード」「暗室モード」など12種類のカラーモードを搭載しています。小熊さんはどのモードをよく使われていますか。
小熊氏:
WebとテレビCMが多いので、主にsRGBとRec.709を使っています。Web用に制作したものが後からテレビCMで使われたり、その逆もあるため、両者をすぐに切り替えられるのは非常に便利ですね。また、DualViewでsRGBとRec.709を並べて比較できる点も重宝しています。
――となると、モードをワンプッシュで切り替えられるホットキーパックG3も活躍していそうですね。直径7センチほどの丸型ディスプレイコントローラーです

原氏:
存在は知っていましたが実際には使用していないんですよ。試してみます。
――よく使う機能を物理ボタンに割り当て、手元で瞬時に切り替えられる便利なアイテムなので、ぜひ使用してみてください
総括:制作現場で信頼できる基準として
――最後に、PD2730Sを総合的にどう評価されていますか
小熊氏:
PD2730Sは、スペックを誇示するためのモニターというより、制作現場で正しい判断を積み重ねるための基準として信頼できる存在だと感じました。
解像度とカラーマネジメントの両立は、BenQが長年プロフェッショナル向けモニターを開発してきたからこそ成立している製品だと思います。
原氏:
必要な機能と投資額のバランスが非常に良く、現実的な選択肢として導入しやすい点も評価しています。
――モニターは「美しく見せる」だけでなく、「正しく測るための道具」。PD2730Sは、その役割をしっかり果たしている製品ですね。
小熊氏:
まさにその通りだと思います。