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米アーキメディア・テクノロジーは、ハリウッドの主要プロダクションや配給会社からのリクエストに応えつつAtlas(アトラス)メディアプレイヤーの機能を拡張してきた。そしてNABではこのプレイヤーを中心に、プロダクション間および各パイプライン間の垣根を取り払い、トータル的に作業管理を行うプロデューサーやテクニカルディレクターにも適した、「Iris(アイリス)」フレームワークという新しいシステムを一般公開した。
映画コンテンツは今や、DVDやテレビからオンデマンドと、多様なフォーマットで配信、配給されるようになった。それらを1つの統一したフレーム精度で品質を確認できるツールとして生まれたAtlasは、現在IMFやDCP、DPX、JPEG2000からXAVC、HEVCからモバイルデバイス用フォーマットまで、字幕・キャプションとオーディオファイルを同期させて再生できる。プレイヤーとしての機能に、波形モニターやベクトルスコープを実装させており、今回の新しいバージョン3.2ではオーディオフェーズとウェーブフォームにも対応した。プレイリストを作ることができ、従来のように都度、再生するメディアファイルを探す手間もなくなった。更にHDRで作成されたコンテンツも忠実に再生するという。
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Atlasメディアプレイヤー。オーディオモニタリング機能が強化された
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そしてIrisはAtlasメディアプレイヤーの機能を拡張させ、Atlasのユーザーインターフェイスのカスタマイズに、プロジェクトで各ワークグループがメディアの確認を共有できるシステムを加えた。Atlasメディアプレイヤー上で、フレームごとに注釈とテキストを書き加えることができる。このツールはネットワークを介して、プロジェクトに携わる作業関係者が行える。
特徴としては、それぞれの作業関係者がローカルで持つメディアコンテンツのフォーマットに関係なく、そのメディアの確認を同時に進行できる点だろう。注釈やテキストはオフラインでもローカルからアクセスして確認できる。Irisでは、個々が持つメディアのフォーマットに関係なく、タイムコードに合わせてコンテンツを解析するため、カラリストが持っている作業ファイルに対してディレクター側が持っているサムネイル的なフォーマットでコメントがされていても、Irisを通して共有できる仕組みとなっている。
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フレームごとにプレイヤー上に描画マークアップで印をつけ、コメントを加えることができる
またパワフルな機能の1つとして、メディアファイルの既定パラメーターを設定できることがあげられる。たとえば、Netflix側で統一した既定パラメーターが提供されたとしよう。Irisで作業しているメディアファイルを開いた段階で、そのメディアファイルが規定パラメーターに従っていない箇所にワーニングが出るようになっている。よってクオリティチェックシステムにメディアデータを通す前段として活用でき、作業時間の効率を図る効果が期待できる。
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字幕ファイルも映像に対して複数を同時に同期させて再生することもできる
Atlasの新バージョン3.2および試験版はリリース済み。Irisの正式リリースは今夏を予定。また一般社団法人日本エレクトロニクスショー協会およびNAB日本代表事務所が共催する「After NAB Show」にて、株式会社フォトロンが本システムを日本で初めて一般公開する予定。
(山下香欧)
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