着々と導入が進むラージフォーマット時代の新定番レンズがコンセプトのSupreme Prime

カールツァイスは11月13日、東京都内でハイエンドシネプライムのSupreme Prime Radianceの新製品発表会を行った。同社の小倉氏がT*blueコーティングやフレアの特徴を紹介したので、会場の様子を写真とともに紹介する。

トークセッションの様子より。左がカールツァイスの小倉新人氏

プロダクトプレゼンテーションからスタート。まずはSupreme Primeを振り返った。ツァイスは2018年5月に軽量小型のプライムレンズシリーズのSupreme Primeを発表。国内でも着々と配備が進んでいるという。フルサイズでT1.5、クリーンなルック、16枚や18枚の絞り羽根、eXtended Data搭載を特徴とするシリーズで、ラージフォーマット時代の新定番レンズをコンセプトにコマ-シャールをはじめ、いろんなシーンで使われているとのこと。

そして、11月7日にツァイスはレンズの新製品を発表。第一の特徴は、クリアでコントラストの高いSupreme Primeの描写特性を継承すること。かつ、これまでSupreme Primeは非常にシャープでクリーンな綺麗に写りながら、個性がほしいという希望にフォーカスをして開発したという。

また、ビンテージレンズの場合は、あるときは凄く綺麗な描写に撮れたが、同じライティングで撮るごとに結果が違うことが起こりかねない。そのようなことが起きないように、何度反復しても同じ描写ができる精密な描写設計を実現すること。現行のSupreme Primeとマッチングできることを追求したという。

製品名は、Supreme Prime Radiance。Radianceは輝きという意味だという。レンズのマウントは金色のリングが付いており、Radianceの刻印が鏡胴に刻まれている。前からレンズを覗くと、Radianceのほうがコーティングによってレンズが少し白っぽくみえるという。

開放値は全部1.5で、21mmから100mmまでの7本セットでの提供を予定している。

新製品ハンズオンより。鏡胴にはRadianceの文字が刻まれている

ツァイスは、Radianceの実現にあたり、「T*blue」という新しいコーティングを開発。ツァイスは過去80年間に渡ってT*コーティングを毎年改良を重ねており、これまでにT*XPコーティングなど、さまざまな新しいコーティングを経てきた。RadianceのコーティングはSupreme Primeのカラー特性やコントラストをベースにしつつ、靑だけ若干反射をするのを特徴としている。

順光では通常のレンズと同じで、逆光に入ったときに特徴がでるレンズと考えてほしいとのことだ。

T*の文字の隣に「T*blue」の文字が入っている

Radianceは、ノンコートレンズではなく、Radianceコーティングを行っている。透過率は落ちがなく、開放値はT1.5のままとなっている。セットの中でレンズを交換しても、露出倍率を変える必要はないのは便利だという。

また、広角や望遠ごとのコーティング方法をSupreme Primeが登場する前から研究を行っており、焦点距離を変えてもシリーズとしてフレアの見え方が統一されている。

Supreme Prime、Radiance、アンコートレンズの比較例を見ると、Supreme Primeは非常にコントラストがあり、画のメリハリが高い。中央のRadianceは、中央にレンズ構成をそのまま見せる円形状のフレアがブルーで出ている。ただフレアが出ているけれども、画面四隅のコントラストは落ちていない。ノンコートはすでに白っぽくなっているので、例えば役者が端のほうにいったときに表情がわからなくなると紹介した。

Radianceはきちんと画面隅のディテールが行きており、構図のことなどを細かく気にせず使えるのを特徴としているとのことだ。

左がSupreme Prime、中央がRadiance、右がアンコートレンズの例

フレア特性は一定で、「25mmから50mm」、「50mmから100mm」に変えた場合に、急に描写が変わってしまうことはない。どの焦点距離も似通っているようになっており、物語として一貫性が保たてるのが、大きな特徴だ。

Radianceは、21mm、25mm、29mm、35mm、58mm、100mmの7本セットで受注を行う。開放値はすべて1.5。値段は、17,41万5,000円。2020年3月まで受注を受付て、2020年4月から2020年6月にかけて、デリバリーを開始する期間限定の製品となっている。

ちなみに、Supreme PrimeとRadianceはガラスのエレメントがそっくりのために、同じ時期に同じ工場で同時に生産ができないという。工場ラインを区切ってつくらなければならないために、期間限定となったとのこと。

Radianceの特徴を生かしたショーリールを公開

ショーリール上映のコーナーでは、Radianceで撮影されたショートムービー「R&R」(撮影:ロドリゴ・プリエトASC/Rodrigo Prieto)と、「Metamorphosis」(撮影:石坂拓郎JSC)が上映された。ショートムービーはYouTubeでも公開中だ。

ロドリゴ・プリエト氏撮影の「R&R」

石坂拓郎氏撮影の「Metamorphosis」

石坂氏が撮影したSupreme PrimeとRadianceの比較映像も上映された。わかりやすい比較になっていたので、こちらでも紹介しよう。

左がRadiance、右がSupreme Prime。共に100mm

左がRadiance、右がSupreme Prime。共に100mm

左がRadiance、右がSupreme Prime。共に25mm

左がRadiance、右がSupreme Prime。共に85mm

「Metamorphosis」の制作を振り返るトークセッション開催

後半のローンチイベントでは、石坂拓郎氏、cutters studiosの水谷アキ氏、トボガンCEOの品川一治氏のトークセッションが行われた。最後のその様子を紹介する。

まず、プロデューサーを担当した品川一治氏は、「Metamorphosis」の実現にあたり、こう振り返った。

cutters studios 水谷アキ氏(左)、石坂拓郎氏(中央)、トボガンCEO 品川一治氏(右)

ロケーションの決定には苦労しました。どうしても一日で撮りきらなければいけないという前提で、1日の中でバリエーションをつくらなければいけませんでした。狭いところだとどうにもなららないので、広いところを検討しました。工場が候補になりましたが、普通の工場だと地面が緑になるのが問題となりました。地面が緑でない工場という条件で探して、一番やりやすそうだったのが、今回の埼玉県の元レンガ工場でした。

映画CM、映像制作などさまざまなプロデュースを手掛ける品川一治氏

監督を担当した水谷アキ氏は、3パターンの撮影のアイデアを出した経緯や、同作品に監督として関わるまでのエピソードを紹介した。

このプロジェクトは石坂拓郎さんにまず話があり、拓郎さんがプロデューサーの品川一治さんに相談をして、「監督必要だよね」ということでお話をいただきました。結構面白いユニークな流れでした。

ロケーションが決まらなかった理由の1つに、本編が三部構成になっているのと、最後の第三部の部分が倉庫だと辛いだろうというところで結構もめました。

最後の最後まで制作の方には頑張って探していただきつつも決定し、ではどのようにしたら画変わりを表現できるか?ということで、布というアイデアをだしました。

しかも撮影まで一ヶ月を切っていたぐらいで話をいただいていました。話を頂いた段階で、「ダンスでどうだろう?」という話が行われていました。私自身、ダンスを撮ることが大好きで、チャンスがあれば全部ダンスにしようと思っているぐらいなので、本当に喜んで参加させてもらうことにしました。

とはいえ、ただダンスだけみせてもダンス映像を脱しないものになってしまう。ちょっとつまらないので、そこにちょっとしたストーリーを付け加えつつ、画変わりや場面チェンジや状況の違いみたいなものをみせれる。ということで、三部構成を考えました。

今回の作品のディレクターを担当した水谷アキ氏

石坂拓郎氏ストーリーとフレアの実現の裏話を紹介した。

今回レンズのフレアを表現がテーマでした。かつ、物語を頂いて、その中でどうやってフレアを入れていくか?が課題でした。

ただ、物語性はいただいたほうがいい。キューブや布をつけるというアイデアも監督のアイデアでした。制限をもらったほうが、フレアだけにならないということで最終的にはよかったなと思いました。

非常にアクションが多い作品に関わることが多いカメラマンの石坂拓郎氏