txt:伊藤格 構成:編集部

25-100mm T2.9の領域をズーム1本で実現

Laowa OOOM 25-100mm T2.9は、中国レンズメーカーVenus Opticsから発売されたシネマズームレンズだ。国内では、Laowaブランドの正規輸入代理店であるサイトロンジャパンが取り扱う。

最近、中国レンズメーカーからシネマズームレンズの発売が相次いでいる。20-55mmと50-125mmを二本構成で実現するシネマズームレンズを発売。それに対してDZOFILMは、OOOMは25mmから100mmまでをT2.9の一本でカバーしているのが特徴だ。また、製品パッケージにPL、EF、ソニーEマウントが付属。使うカメラボディによって、マウントを自由に交換できる。交換時に必要な工具やシムセットも付属し、バックフォーカスの調整もレンズ側でも対応できる。他社のレンズと組み合わせる場合でも、バックフォーカスのマッチングも安心だ。距離表記については、feetとmから選択可能だ。

交換可能なPL/EF/Eマウントに対応

工具やシムセットが付属

カバーするフォーマットは、S35Plusとなっており、S35より少し大きいエリアに対応する。その他、ズームを動かしてもフォーカスは変化しないパーフォーカル設計、最小限に抑制したフォーカスブリージング、焦点距離全域で絞りはT2.9、そして最短撮影距離は60cmとこの手のズームレンズとしては短い、と至れり尽くせりなスペックである。

シネマズームとしてはかなりコンパクトにできている。フォーカス、ズーム、絞りの各リングももちろんレンズギア式になっており、フォローフォーカスやレンズモーターを使った操作も可能だ。動きも軽くスムーズでありながら、遊びやガタも少なく感じる。フォーカス回転角度は300°、ズームは163°、絞りは50.5°の回転角度となっている。

パッケージにはマットボックス用のアダプターもついており、114mmのマットボックにも対応できる。ねじ込み式のフィルタースレッドは95mmと少々特殊ではある。またレンズ本体にレンズサポートの受けがある。少々気をつけたいことは、レンズがスリムで19mmロッドの標準的位置からは遠いので、レンズサポートの軸は長めのものが必要である。

フィールド撮影でOOOMの性能をチェック

まずは軽く野外でテスト撮影してみた。カメラボディはRED Weapon Helium S35 8KにEFレンズマウントを搭載して、シグマの24-105mm F4 DG OS HSMとの比較をしよう。製品を受け取った時にはPLレンズ仕様だったが、付属の工具でEFレンズ仕様にした。軽量にしたいので、Weapon HeliumにOOOM、雲台はFSB8、脚はGitzo システマティック5型とした。

マウントを工具でEFレンズ仕様に変更

この構成だと、三脚をバッグに入れて、カメラ本体とOOOMはペリカンに入れて移動できる。同様なことをシグマ18-35mm T2 Cineと50-100mm T2の二本との構成でしたことがあるが、一本で済むのは気が楽である。

まずは試しに風景を撮影。引きボケのチェックをした。F値はT5くらいで撮影。お台場から東京タワーを望む景色で、西陽がビルの西側を照らしている。このカットは100mmから25mmまで手動でズームアウトした(5.5K 16:9画角)。まだシム調整は完璧ではなかったかもしれないが、引きボケは感じられない。引いてもビル群の質感は表現できているし、レインボーブリッジを通過するオレンジのタンクローリーも被写界深度に入っており、情景の良さを表現できる内容だと思う。

次にOOOMの焦点距離100mmと、シグマ24-105mm F4 DG OS HSMの焦点距離105mmを比較した。シグマのARTシリーズの24-105mm F4 DG OS HSMは、パーフォカルと謳ってないが、バックフォーカスを合わせれば、焦点距離を変えてもそこそこ維持する。筆者は、シグマのレンズをライブミュージックや舞台の撮影で多用している。

映像を比較するとシグマ24-105mm F4の方が解像度は高い。また、OOOMの方には少しオレンジ色の色収差などが確認できるが、取立てて悪い画でもない。

RED Weapon Helium S35 8K+シグマ24-105mm F4 DG OS HSM

RED Weapon Helium S35 8K+Laowa OOOM 25-100 T2.9 Cine

お台場の放送局をイメージセンサーフォーマット「8K WS」で撮影。ケラれも見られないのに注目してほしい。LaowaはRed Weapon Heliumの場合は8K HDまで対応としているので、当然2.4:1の画角の8K WSではケラれは出てこない。このようなワイド画角の映像が高解像度で収録できるのはとても価値が高い。

元砲台手前の野原の撮影でフォーカスブリージングをチェック。フォーカスリングを直接手で回してフォーカスワークを行った。奥の草木にフォーカスを送った時もフォーカスブリージングは発生しないので、自然な視点誘導ができたと思う。

お台場の波の映像。あまりシャープすぎると波の動きが不自然になることがあるが、ボケ感にクセはないので、ゆったりとした水の動きを捉えることができた。

移動して夜の銀座を撮影した。引きのチルトアップ映像で樽型になるバレルディストーションをチェック。これは7K 16:9で撮影した。高級デパートのディテールの高いデザインが表現できていて美しい。フォーカス送りも難なく行えた。バレルディストーションもないわけではないが、耐えられる程度だと思う。もしバレルディストーションを排除すると、逆に不要な補正を感じるくらいかもしれない。

次にフレアの出方をチェック。映像ではタクシーのヘッドライトが正面に来る前あたりから(きっとライトは少しずつ内側を向いている)少し正面を過ぎるまで、ふわっと全体にフレアが広がるが、フレア自体にはあまり無駄な色がついていないのは好印象だ。

ただ色収差からくる焦点ポイントにより、ヘッドライトのスターフレアの色が奥ピンの際の黄色い状態から前ピンでの青い状態に変化するのが伺える。これが許せない人もいるだろうし、いい変化と思う人もいる。この辺りがメーカーが言うところのクラッシックルックなのかもしれない。比較映像は撮影しなかったが、シグマのレンズではもう少しスターフレアも締まっていて、収差の色変化は起こらないだろう。これをつまらないと言う人もいる。

OOOMを俳優の撮影に投入

さて日が変わり、小林マルコさんの協力で、俳優さんたちが撮影に協力してくれた。前日より本格的なキッティングを行った。OOOMは普段使っているシグマの120-300mmや150-600mmなどと同様に全長が長くなるので、レンズモーターをしっかり設置するには、19mmロッドが必要になる(15mmでも工夫をすれば無理でもないが)。そのため、RED社の19mmロッド式ベースマウントと19mmロッドを用意した。

レンズモーターはTilta社のNucleus-Mを使うが、今回はワンマンオペレーションなのでNucleus-Mのハンドグリップを使ってフォーカス、ズーム、絞りを操作する。マットボックスはオコナー社製のO-Boxを114mm状態で、NDフィルターはFormatte社のFirecrestを用意した。

いざ撮影を開始。まずはTilta Nucleus-Mとハンドグリップを使ってのフォーカス送り。通常シグマのズームレンズで実行している方法なのだが、OOOMのフォーカス回転角度とNucleus-Mのハンドグリップのノブの回転角度があまり相性が良くないかもしれない。AポイントとBポイント設定してフォーカス幅を狭めても、設定したポイントにならないので苦労した(ノブのキャリブレーションも行なっているが)。そんな中でもなんとか成り立っている映像を紹介して、OOOMで得られる表現を紹介していこう。

まずは蒼野さんのウォークアップ。銀座中央通りの歩行者天国でカメラに近づいてくる様子をフォーカスで追った。筆者は本職のカメラマンでもフォーカスプラーでもないが、こういった映像表現には答えてくれるフォーカスリングの精度ではあると思う。

次に相良元城さんの顔アップと背景の時計台のフォーカスの動き。ブリージングはないので、ずいぶん離れた距離間でのフォーカスインアウトだが、嫌味のないボケ感で推移している。いくつか違うカットでもフォーカスワークを多用した。

最後に夕方と夜間の撮影もした。地明かりのみで、照明なし。T2.9とISOを高めに設定した。ボケ感含め、ズームであることはもちろん、絞りが変わらないことの便利さ、パーフォーカルであることの重要さ、ブリージングがないことの自然さが相まって、人物を撮影することの楽しさを感じられる撮影であった。

映像を少しまとめた。レンズの魅力は出ているのではないかと思うので、ぜひご覧いただきたい。

協力:エースビルジャパン、PROTECH、Rinn’s Entertainment、矢崎よしかつ、ピクト、eAreana、Qnap、Gigabyte Japan、Seagate Japan

■Laowa OOOM 25-100 T2.9 Cine
価格:オープン、市場予想価格は税込64万円前後(受注生産)
発売:2020年10月13日
LAOWA日本正規輸入総代理 サイトロンジャパン LAOWAウェブサイト
伊藤 格|プロフィール
テクニカルプロデューサー。撮影、DIT、カラーグレイディング、編集も手掛ける。Red Weapon Helium 8K、Epic Dragon 6K、Epic-MX 5K、BMPCC4Kなどを所有している。

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。