Osmo Action 6を使い込んで感じたこと。それは単なる"ナンバリングの更新"ではなく、アクションカメラを仕事道具としても使いたいユーザーに向けた、DJIが本気で踏み込んだメジャーアップデートだった。
新機能の紹介
新しいOsmo Action 6が打ち出してきた核心は、この2点に尽きる。
まず、アクションカメラとしては異例の可変絞りf/2.0–4.0。暗所では開放でノイズを抑え、明るい風景では絞ってディテールを引き出してくれる。
さらに、1/1.1インチのスクエアセンサーは、13.5ストップという余裕あるダイナミックレンジを備え、横位置のまま縦動画にクロップしても画角ロスがほぼない。あらゆる画角に柔軟に対応できるSNS時代の画期的なセンサーが搭載された。
他にも、50GBの内蔵ストレージや専用ケースなし本体のみでの20m防水などのスペックもしっかりとアップデートされている。
Osmo Action 6も10-bit D-log Mを備えており、Osmo Action / Osmo 360 / Osmo Nano / Osmo Pocket / DJI Droneとの間で、共通のトーンでの撮影・編集が可能になる。
これまで、マウントできる向きは固定されていたのだが、両方向にマウントできるようになった。これが地味にストレスだったのでありがたいアップデートだ。
また、Osmo Nanoのレビューでも紹介したが、Osmo Action 6の本体からの転送速度も極めて優秀だ。この転送の速さは限られた時間でのバックアップや、移動中のちょっとした作業時にとてもありがたい。
作例
昨年につづき参加した日光マウンテンランニングの道中、ちょうど見頃を迎えた紅葉をOsmo Action 6の簡単な作例動画として編集したので参考にしていただきたい。薄暗い石段の先の鳥居を狙ったカットはノイズを感じるが、その他のシーンでは、朝靄に包まれた日光のしっとりとした秋の風情が描写できたのではないかと思う。
Osmo Actionシリーズとの比較
筆者はOsmo Action 4ではじめてアクションカメラを所有したのだが、その後はOsmo Pocket 3、Insta360 Ace Pro 2と追加で購入している。Osmo Action 6の発売にあたっては、4からの乗り換えを検討するユーザーも多いだろう。そこで、両者の10-bit D-Log MをDaVinci Resolve上で揃えた、カラーグレーディングの比較動画を作成した。
Osmo Action 4とのグレーディング比較映像
編集していてもハイライトとシャドウの階調の滑らかさに明らかな違いがあり、Osmo Action 6のイメージセンサーの進化をはっきりと感じることができた。
動画上では同じような明るさに見える暗部の描写も、Osmo Action 4の1/1.3インチのセンサーと比べると、Osmo Action 6にはシャドウの持ち上げにかなりの余裕があった。
Osmo Action 5 Proとの比較はできていないが、5 Proは4と同サイズのセンサーにも関わらず、ダイナミックレンジを13.5ストップに押し上げていることを考えると、Osmo Action 6に明確な優位性があるのは想像に難くない。
Insta 360 Ace Pro 2との比較
2倍のデジタルズームに切り替えたい場合、Insta360 Ace Pro 2では画面をダブルタップすればよいが、Osmo Action 6では右下を正確にダブルタップする必要がある。これは即時性を求められる現場では不便だと感じた。
Insta360 Ace Pro 2の方が厚みと高さがあり、ぱっと見の印象としてはOsmo Action 6がひと回り小さく感じられる。Insta360 Ace Pro 2はずっしりとしていて、筐体にも存在感がある。
なお、立ち上がりの速度はOsmo Action 6が早い。ここは大きな優位点になるだろう。
新しいマクロレンズ
アクションカメラを使うようになって密かに感じていたストレス、それが「寄れない」ことだった。
そもそもアクションカメラといえば、広角レンズでの視野の広い世界が何よりの魅力であるため寄れる必要はそこまでなかったのかもしれないが、用途が広がり、料理や植物などあらゆる被写体に向けたくなる中で「あれ?寄れない」とか、「後で見たらピントが全然あってなかった」という残念な気持ちになることも増えたように思う。
そんな声が届いたのか、今回のOsmo Action 6の発売に際し、あらたにマクロレンズもリリースされた。
これが、デカい。かなりの存在感を放っている。11-75cmまでの被写体との距離をカバーするあたり、かなりの本気度が伺える。通常のレンズカバーを外してからマクロレンズを装着すると、自動で認識してくれるのもありがたいところだ。
ただし、一点だけ残念だったのが、マクロレンズに換装すると2倍のズームモードが使えないことだ。そのため、寄れはするものの超広角マクロレンズとなるため、いわゆる100mm前後の王道的なマクロレンズやハーフマクロのような使い方もできない。
気になったところ
まず、録画開始時に必ずブラックアウトする挙動だ。Osmo Action 4では再現されないのだが、用途や現場によってはストレスを感じるし、場合によっては被写体のフレームアウトのリスクが出てくる。
今回、DaVinci Resolveで編集して気づいたのだが、Osmo Actionの10-bit D-log Mの4Kデータが非常に重い。日頃はBRAWやProRes 422HQでの動画編集が多いのだが、ビットレート"高"を選択していることも相まってか、そのどちらよりも重く感じた。
アクションカメラの特性上、基本的には撮って出しのユーザーが圧倒的に多いと思う。センサー性能が向上しカラーグレーディング耐性も高まってきたからこそストレスなく編集したいが、出先で運用しているM2 MacBook Airには相当荷が重く感じた。環境を選ばずにサクサクと編集したい場合は、ビットレートは"標準"を推奨する。
まとめ
Osmo Action 4を初めて手にした時、「アクションカメラでもここまで録れるようになったのか!」と驚いたのも束の間、Osmo Pocket 3で採用された1インチセンサーのハイライトとシャドウの粘りに「ここまで違うのか…」とがっかりしたのを思い出した。
今回、Osmo Action 6で1/1.1インチスクエアセンサーが採用されたと聞いても、「アクションカメラだしな」とそこまで期待していなかったのが正直な気持ちだ。テキスト情報だけで1/1.1と1/1.3のセンサーの性能差を推し量ることは困難を極める。
良くも悪くも、あまり期待せずに比較動画をつくってみたのだが、結果は驚くほどに明確であった。Osmo Action 6のダイナミックレンジはOsmo Pocket 3の1インチセンサーを彷彿とさせ、可変絞りを搭載したことで夕暮れの太陽をフレームに入れた際にはいやな白飛びが軽減され、光芒まで写し込むことができた。
違いはほとんどないかなと思っていたRock Steady 3においても、Osmo Action 6の方が動きは滑らかに感じられる。
最後にもう一つ付け加えると音の収録にも差を感じた。DaVinci Resolveで二つの映像の比較をする際に音の波形で調整したのだが、その際にOsmo Action 6の波形は嫌な環境音がよく抑えられており、波形を捉えるのが非常にスムーズであった。大きなトピックスに目を奪われがちだが、こういった基礎体力的な部分にも進化を感じられることは嬉しい。
ここまで読んでいただき、比較動画も観ていただければOsmo Action 4のユーザーは買い換えにより積極的になっただろうし、カラーグレーディング耐性に期待して購入したOsmo Action 5 Proのユーザーにも実は刺さっているのではないかと思う。
Osmo Action 6の発売にあたって感じたことは、アクションカメラがアクションやアクティビティ分野以外でもさらに積極的に活用できるカメラに進化したことだ。アクションカメラという先入観を捨てて、あらゆる撮影対象に向けてこのカメラを活用してほしい。
宮下直樹(TERMINAL81 FILM)|プロフィール
フリーランスのフォトグラファー・シネマトグラファー
写真・映像、ドキュメンタリーから空撮まで。
視覚表現の垣根を超えた小さな物語を縦横無尽に紡ぐ。
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