はじめに
Hollylandは、ワイヤレスマイクロフォン「LARK MAX 2」を2025年5月27日に発表した。LARK MAX 2は、2023年6月に発売されたフラッグシップモデル、LARK MAXの後継のモデルである。
LARK MAX 2のカラーはスペースグレー。主なラインナップと価格は、すでにPRONEWSで紹介された通りだ。
- LARK MAX 2 Combo:税込38,000円
- LARK MAX 2 Ultimate Combo:税込43,000円
- LARK MAX 2 Combo 4-Person Version:税込49,600円
発売からこれまでの2年ほど、私自身は主に、個人のライブ配信やウェビナーの登壇、NAB Showをはじめとする展示会での取材活動において、LARK MAXを使ってきた。
振り返れば、さらに前に使っていたLark M1と比べ、LARK MAXの音質やノイズキャンセリングの性能、機能など、私にとっては必要十分であり、とてもバランスがとれたフラッグシップのワイヤレスマイクロフォンであったと思う。
その一方で、LARK MAXの第二世代として今回登場した「LARK MAX 2」はLARK MAXと比べ、さらに"できることの幅"が広がった製品といえる。
※機能や仕様については執筆時点の情報に基づくものであり、今後ファームウェアアップデートなどにより変更される可能性があることを、あらかじめご了承いただきたい。
「USB-Cタイプの受信機」も同梱。スマホへの接続がより手軽に
LARK MAXでは、セットの受信機は「カメラバージョンの受信機(=カメラ受信機)」のみであったが、LARK MAX 2では、カメラ受信機に加えて「モバイルバージョン (USB-Cタイプ)の受信機(=USB-C受信機)」も同梱される。
LARK MAX 2のカメラ受信機は、3.5mm TRS to 3.5mm TRS Cableで動画撮影向けミラーレス一眼カメラと繋げるだけでなく、本体背面のUSB-C PortとスマートフォンをUSB-C to Lightning CableやUSB-C to USB-C Cableで接続することも可能。
だが、iPhone 15シリーズ以降やAndroidのスマートフォンであれば、カメラ受信機ではなく、USB-C受信機を利用したほうがケーブルレスで、よりスマートな運用をすることができる。
※Lightningを備えるiPhoneでLARK MAX 2を利用する場合は、カメラ受信機のUSB-C Portから付属のUSB-C to Lightning Cableを用いて接続する。
また、LARK MAX 2では(LARK M2Sと同じように)カメラ受信機もUSB-C受信機も、送信機とともに付属のチャージングケースへ収められる。
ラベリアマイクの接続は「USB-C to 3.5mm Adapter」を利用
LARK MAX 2では、LARK MAXと同じように、ラベリアマイクの接続ができる。
ただ、LARK MAXの送信機本体右側面に備わっていたラベリアマイクの接続端子(=3.5mm Audio Input Interface)は、LARK MAX 2では備わっていない。
LARK MAX 2でラベリアマイクを利用したいときには、「USB-C to 3.5mm Adapter」を送信機本体底面のUSB-C Portへ装着し、USB-C to 3.5mm Adapterを通じてラベリアマイクを接続するかたちへ変わった。送信機をチャージングケースへ戻すときにはUSB-C to 3.5mm Adapterを外して収める必要がある。
このUSB-C to 3.5mm AdapterはCombo、Ultimate Combo、4-Person Versionなどそれぞれのパッケージに(送信機の台数分)同梱される。
低遅延で違和感ほとんどないOWS Monitor Earphone
LARK MAXと同様に、LARK MAX 2では、カメラ受信機本体左側面の接続端子(=3.5mm TRS Headphone Interface)にイヤホンやヘッドフォンを繋ぎ、送信機で収音された音声を確認することが可能である。
これに加え、LARK MAX 2ではオープンイヤー型の専用ワイヤレスイヤホン「OWS Monitor Earphone」を用いたワイヤレスモニタリングに対応している(通信範囲は最大100m)。
耳を塞がずに装着をすることができ、受信機から伸びるイヤホンやヘッドフォンのケーブルの煩わしさがなくなる。ケーブルレスでの音声確認は、撮影者の負担を大きく軽減するだろう。
実際、自分自身に送信機とOWS Monitor Earphoneの両方を身につけ、モニタリングをしながら発話をしていても、耳元に聞こえてくる自分の声の遅延はほぼなく、大きな違和感はない。
なお、このOWS Monitor Earphoneは、カメラ受信機、USB-C受信機、どちらの組み合わせでも利用できる。ワイヤレスモニタリングのオン・オフはカメラ受信機なら本体のメニューから、USB-C受信機ならば後述のLark Soundアプリから設定できる。
ちなみに、カメラ受信機では3.5mm TRS Headphone Interfaceからのモニタリングと、OWS Monitor Earphoneによるワイヤレスモニタリングの両立はできないことに注意が必要である。
32-bit Float内部録音に対応
LARK MAX 2では「32-bit Float内部録音」に対応する。
32-bit Floatに対応したことで、インタビュー、屋外収録などで予期せぬ音量変化が起こりうる場面、ゲインの設定に不慣れなユーザーにとって安心して録音できる一助となるはずである。
LARK MAX 2の送信機には8GBの内蔵ストレージが搭載されており、48kHz/24-bitの場合はおよそ14時間、48kHz/32-bit Floatの場合はおよそ10時間の録音が可能である。カメラやスマートフォンとは独立して音声を直接、送信機の内蔵ストレージへ記録できる。
また、LARK MAX 2では「32-bitフルチェーンオーディオ伝送テクノロジー(32-bit Full-Chain Audio Transmission)」により、内蔵ストレージへの記録だけでなく、カメラ受信機のUSB-C PortおよびUSB-C受信機からのオーディオからも、32-bit Floatのデータ形式を維持して出力できる。
ただし、iPhoneなどのAppleデバイスであることのほか、いくつかの条件がある。
例えば、LARK MAX 2のカメラ受信機のUSB-C PortからiPhone 16 Proを接続し、iOSの「Blackmagic Camera」アプリで撮影し、撮影したデータを「DaVinci Resolve」で編集するようなワークフローであれば、その恩恵を受けることができそうだ。
Lark Soundアプリでのコントロールが可能に

App StoreやGoogle Playで公開されているiOS/iPadOS、Android OS対応の「Lark Sound」アプリで、LARK MAX 2の各種設定を行えるようになった。
また、このLark Soundアプリで、チャージングケース、送信機、受信機、さらに、OWS Monitor Earphoneのファームウェアアップデートを行うことができる。
このうち、送信機とカメラ受信機、そして、チャージングケースの3つは一括でファームウェアアップデートが可能である(一方、USB-C受信機とOWS Monitor Earphoneは個別での作業が必要)。
LARK MAXではチャージングケース、送信機、受信機をパソコンと繋ぎ、個別にファームウェアのアップデート作業をする必要があったが、LARK MAX 2ではファームウェアアップデート作業にパソコンと接続する必要がなくなった。
タイムコード機能で、収録素材の同期が容易に
LARK MAX 2ではタイムコード機能に対応する。タイムコード機能は、撮影した映像に対し、LARK MAX 2の送信機に内部録音したデータへ、動画編集ソフトで挿し替えるときにとても便利である。
カメラ受信機を利用するときに、Lark Soundアプリまたはカメラ受信機のメニューからタイムコードのオン・オフと設定を行うことでLARK MAX 2の3.5mm TRS Output JackおよびUSB-C Portを通じてタイムコードを出力できる。
設定ができるタイムコードモードは3パターンあるが、LARK MAX 2の3.5mm TRS Output JackおよびUSB-C Portに対して、Lチャンネルに「Mic1とMic2のミックスオーディオ」、Rチャンネルに「タイムコードオーディオ」となるモード1が推奨とされている。
なお、タイムコードが有効な場合、ステレオモードとセーフティトラックモードは利用することはできない。
また、執筆時点ではタイムコード・フレームレートに「59.94」を指定できないことに注意が必要である。こちらはアップデートによって指定が可能となることに期待をしたい。
より細かくノイズ抑制が可能に 無段階調整AIノイズキャンセリング
LARK MAXのノイズキャンセリングはENC(Environmental Noise Cancellation)が採用されていたが、オン・オフしかすることができず、細かい設定はできなかった。
LARK MAX 2のノイズキャンセリングは「AIノイズキャンセリング」に代わり、ノイズ抑制の深度を5dBから25dBまで無段階に調整できる(デフォルトは20dB)。環境に応じた、より細かくノイズ抑制を調整することが可能である。
ただ、ノイズキャンセリングの強度が強くなればなるほど、状況にもよるが、自然な声の音質から離れてしまう印象もある。個人的にはノイズ抑制の深度はゆるめ(10dBあたり)がちょうど良いと感じる。
より目立ちにくいデザインになった送信機とカメラ受信機
LARK MAX 2ではエキシマ・ナノコーティングされた肌に優しい素材を採用されたことで、送信機、受信機、チャージングケースどれも、触っていて心地よさを感じる。
また、いずれも物理的な重さが減り、丸みを帯びたデザインとなったことで、LARK MAXと比べると、筐体の武骨さがなくなった。特に、送信機や受信機を衣服やカメラへ装着した際に、より目立ちにくくスマートになった。
送信機はLARK MAXの約33gに対し、LARK MAX 2では約14gと半分以下の重量になった。バッテリーの持続時間も、約7.5時間から約11時間へと大幅に延長されている。
カメラ受信機も同様に、LARK MAXの約60gから約24gへと顕著な軽量化がなされている。稼働時間も約9時間から約12時間へと向上し、運用面の自由度が高まった。
LARK MAX 2のカメラ受信機は引き続きAMOLEDタッチスクリーンを搭載し、メニューの視認性が向上したように感じる。また、LARK MAXでは英語、中文のみのメニュー表示であったが、LARK MAX 2のAMOLEDタッチスクリーンは多言語対応となり日本語をはじめ11言語に対応されている。
LARK MAXで感じていたチャージングケースの不満が解消
LARK MAXで個人的に感じていたもっとも不便な点は「チャージングケースが持ち運ぶには少し重い」こと、そして「ごくまれに、送信機と受信機の充電ができていない」ことがあった。
LARK MAX 2のチャージングケースはこのふたつが改善されたように感じる。
LARK MAXの約193.5gと比べると、LARK MAX 2のチャージングケースの重さは約136gとなり、より軽量になる。これは2800mAhであったLARK MAXのバッテリー容量から、LARK MAX 2では2000mAhとなってバッテリー容量が小さくなったことも要因にあるだろう。
私自身、取材でLARK MAXを持ち運びたいと思ったとき、チャージングケースは自宅へおいていき、送信機とカメラ受信機のみを持ち運ぶ(もし充電が必要となったときはUSB-Cケーブルを直接送信機と受信機へ挿して充電する)手段をとっていたが、LARK MAX 2ではそれをする必要がなくなるだろう。
また、LARK MAXではチャージングケースへ送信機とカメラ受信機を収める際、送信機と受信機それぞれの自重でチャージングケース内の充電接点と接触する仕組みであった。
LARK MAX 2では、送信機と受信機を収めると充電接点が磁力で確実に接触する仕組みに変わった。これにより、LARK MAXでまれに感じた「充電できていない」というストレスから解放されるだろう。
まとめ
冒頭でも触れたように、LARK MAX 2は"できることの幅"が広がった製品となったと感じる。
兼ねてから要望があった「タイムコード機能」「32-bit Float内部録音」できるようになったこと、そして、今回レビューをすることが叶わなかったが「1つの受信機で最大4つの送信機に対応」できるようになったことも、LARK MAX 2の大きなトピックといえるだろう。
私個人的には、「32-bitフルチェーンオーディオ伝送テクノロジー」によってカメラ受信機のUSB-C PortおよびUSB-C受信機からのオーディオからも32-bit floatのデータ形式を維持して出力できること、そして、「OWS Monitor Earphoneを用いたワイヤレスモニタリング」の仕組みについては大きな関心があり、今後もより深く検証をしたいと感じている。
HollylandのフラッグシップのワイヤレスマイクロフォンとしてLARK MAX 2は、ミラーレス一眼カメラで動画を撮影している人だけでなく、iPhoneなどのスマートフォンで動画を撮影する人たちにも、新しくワイヤレスマイクロフォンを手にしたいときの選択肢のひとつとなるだろう。
LARK MAXを長く愛用してきた人たちにとっても、乗り換えを積極的に検討する価値のある、十分な魅力をLARK MAX 2は備えている。

Hollyland HL OWS Monitor Earphone HL OWS モニターイヤホン(スペースグレー)
発売日:2025年7月現在、2025年6月末以降の入荷予定
価格:税込9,750円
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