DJIドローンのエントリー層向けシリーズの"Mini"に新作の「Mini 5 Pro」が登場。前作Mini 4 Proの発売から2年、この間に様々な製品を発表してきたDJIの技術を詰め込んだ製品になっている。
ざっくり概要としては、
- 1インチセンサー搭載によりDJI Air 3Sと同等のカメラ性能(広角24mmのみ)
- Mavic 4 Proのようなジンバルロール操作可能
- 前方LiDARセンサー+全方向センサー(低照度対応)搭載
- Mavic 3 Proにも匹敵するレベルのMiniシリーズ最高の飛行性能
こんなにいろいろとMiniシリーズに搭載していいの?と思うくらい魅力的な性能を持っている。
実際に使用してみて、Mini 5 ProはこれまでのMiniシリーズのコアユーザーである初心者・中級者に加えて、クリエイター・プロ空撮業者がメインで使用するAir、Mavicなどの他上位シリーズのサブ機としてもとても優秀な、オールラウンダー機に仕上がっていると感じた。
本記事では旧モデルのMini 4 Proやその他機種との比較を交えながらMini 5 Proを紹介していこうと思う。
今回のレビュー品はDJI Mini 5 Pro Fly Moreコンボ(DJI RC2)。
コンボ内容は以下の通り。
- DJI Mini 5 Pro本体
- DJI RC 2
- インテリジェントフライトバッテリー×3
- スペアプロペラ×3
- 2way充電ハブ
- ストレージカバー
- NDフィルター(8/32/128)
- ショルダーバッグ
- USB-C to C データケーブル
販売されるラインナップと価格は以下のようになっている。
- DJI Mini 5 Pro(DJI RC-N3):税込106,700円
- DJI Mini 5 Pro Fly Moreコンボ(DJI RC-N3):税込128,700円
- DJI Mini 5 Pro Fly Moreコンボ(DJI RC2):税込150,480円
- DJI Mini 5 Pro Fly MoreコンボPlus(DJI RC2):税込158,180円
撮影サンプル
サンプル素材はすべて4K60fpsHDR、ノーマルカラーで収録。ちなみに60fps以下で撮影時にHDRモードが有効になる。
外観
Mini 4 Proと比較
Mini 5 Proはカラーリング変更も相まってMavic 4 Proに近い印象を受けた。
ハード的な変更は大きなところだと、
- プロペラ取り付けがねじ止めからプッシュ式に変更
- 収納用カバーがジンバル・プロペラ一体型へ変更
地味な変更だがかなり運用しやすくなったと思う。
今回は249g未満ではない(日本版のみ?)
今回(日本版では)海外規制に対応した249g未満というのは表記されず、実際の重量は製品バッチによりばらつき、約249.9g±4gとなっているようだ。
これは日本特有の100g規制については残念ながらあまり影響がないが、海外旅行など国外で使用する場合には要注意だ。現時点でどの地域で発売するものが249gかそうでないかの情報がないので、引き続きチェックしていこうと思う。
また後述する長時間飛行用のインテリジェントフライトバッテリーPLUSを使用する場合についてはさらに重くなるため、そちらも要注意。
センサー大型化でDJI Air 3S同等の画質
Mini 4 Proから比べてイメージセンサーが1/1.3インチ→1インチへ大型化。
また4K100fps→4K120fpsに対応。
カラーモードもノーマル、HLG、D-log M全て10bit 4:2:0収録可能に。
広角側に限って見るとAir 3Sとほぼ同じになった。
またダイナミックレンジは14ストップで明暗部の表現力に強くなっている(Mavic 3 Proは12.8ストップ)。
HDR収録したサンプル映像は空と地面の明暗部もしっかりと捉えており、草木のディティールもしっかりと表現されていてとてもMiniシリーズで撮影したとは思えないクオリティだ。
また今回センサーサイズが大型化、レンズが開放F1.8固定のためかなり明るく、付属のNDフィルターND 8 /32/ 128のうちND128が晴天時にちょうどいい感じだった。特にスピード感あるモーションブラーを出したい際には必須だ。
ジンバルロール操作が可能
2年前のMini 4 ProではDJI機初の、ジンバルを物理的に90°回転させてイメージセンサーをフルに活用した縦動画撮影のシステムが搭載された。
その後Mavic 4 Proのインフィニティジンバルで90°以外にも細かくロール回転をコントロールできるようになり、新しい空撮表現が生まれた。注意点としてはMavic 4 Proは最大440°(反時計回り130°、時計回り310°)ロール回転可能だったが、Mini 5 Proは最大225°(反時計回り180°、時計回り45°)と狭くなっている。
その代わりにMavic 4 Proにあったチルト角度をつけた場合のロール回転制限がないのがMini 5 Proの優位な点といえるかもしれない。
前方LiDAR+低照度対応全方向センサー
以前Mavic 4 Proレビューの際にもセンサーの検証を行ったが、とにかく暗所性能の向上が素晴らしかった。これは全方位センサーの感度向上が大きく寄与していて、旧モデルのMavic 3 ProやMini 4 Proはセンサー動作環境として15ルクス以上の明るさが必要であるのに対して、Mavic 4 Proは0.1ルクス以上、そして今回のMini 5 Proは1ルクス以上で動作する。
これにより特に非GPS環境でかつ薄暗い、例えば工場の中のような場所でも安定した飛行が可能になっているのがありがたい。
また今回、Air 3SやMavic 4と同様にLiDARセンサーも搭載し、全方位センサーが完全に効かない真っ暗な環境でも前方障害物検知が可能。今回は検証できなかったが夜間のリターントゥホーム発動時にも安全な帰還ができるようだ。
検証結果は以下の通り。
飛行性能とバッテリー
Mini 4 Proと同様、バッテリーが通常版と大容量版(インテリジェントフライトバッテリーPlus)の2種類。
飛行時間はそれぞれ通常バッテリーは36分、大容量バッテリーは52分となっている。
そして耐風性能、飛行速度がMiniシリーズ最高性能となっている。
他機種と比較すると以下の通り。
| Mini 5 Pro | Mini 4 Pro | Mavic 3 Pro | |
| 最大水平速度 | 19m/s | 16m/s | 21m/s |
| 最大上昇速度 | 10m/s | 5m/s | 8m/s |
| 最大風圧抵抗 | 12m/s | 10.7m/s | 12m/s |
数値だけ見るとMavic 3 Proとも遜色ないレベルだ。実際テストフライト時での追い撮りなどある程度スピードと正確さを要する操縦も、驚くほどスムーズにできた。
対応プロポ
Mini 4 Proと同様、O4、O4+伝送に対応したプロポが使える。
現状対応しているプロポは以下の3つ。
- DJI RC 2
- DJI RC Pro 2
- DJI RC-N3
HDMIで外部出力したい場合はRC Pro2を使用する必要がある(RC2でも今のところ一応ミラーリングのみ可能)。
Mini 5 ProはO4+伝送対応で、伝送距離は日本版で最大10km。
伝送距離についてはMini 4 ProのO4伝送から変わっていない。
その他の機能
うれしい42GB内蔵ストレージ
Mini 4 Proでは2GBしかなかった内蔵ストレージが42GBまで拡大されている。ちょっとした撮影であればマイクロSDカードを忘れても撮影できるのがありがたい。
また今回も最近のDJIドローンと同様、電源OFF状態でPCに接続しても内部ストレージにアクセス可能だ。
アーム折りたたみ構造の変更
Mavic 4 Pro同様、アームの折りたたみ順番を前後どちらが先か、気にする必要がなくなった。これはうれしい反面困ったところもあって、アームをしっかり広げないとバッテリーを抜き差しすることができない。Mavic 3 Proのようにアームをちょっと広げるだけでバッテリー抜き差し出来たら楽だったのに…と思うことが多いので今後変更があると個人的にうれしい。
まとめ
エントリー層向け?プロ向け?
Mini 5 ProはMini 3、Mini 4など前モデルと比べてもさらにプロ仕様に近づいたと感じた。
近年のDJIドローンラインナップではDJI NeoやFlipといったMiniシリーズよりもさらにライト層に向けた機種が揃ってきており、画質に重きを置かないユーザーにとってはそういったラインナップも魅力的となっている。Vlogなどちょっとした用途には現在値引きされてきているMini 3・Mini 4や安価なNeo、Flipを、画質にこだわりたいが軽量モデルを好むユーザーや、プロ機のサブとしても今回のMini 5 Proが最高の選択肢だろうと思われる。
Mavic 4 Proユーザーのサブ機として
ジンバルロールもできる、画質もだいたい業務で使えるレベル、ということでジェネリックMavic 4 Proと言ってしまっても過言ではないかもしれない(?)。
筆者の最近の悩みで、"Mavic 4 Proのサブ機をどうするか問題"があった。というのもMavic 4 Proを導入したものの、広角レンズがこれまでより画角の狭い28mmとなったことで、撮影現場によって画角の引きが足りない場合がある。そのため制作サイドから、「念のため、Mavic 3(焦点距離24mm)で…」と言われることがちょくちょくあって、せっかく導入したのになあ…と複雑な気持ちになっていた。
保険でどっちも持っていくことはできるけど、プロポが統一できない。O4対応機種(Air 3SやMini 4 Pro)を新たに導入するか悩んでいた。Mini 4 Proが第二種型式認証を取得した時はかなり揺らいだが、Mini 5 Proを待っていて良かった。これから使い倒して存分に性能を発揮してもらいたいと思う。
余談だが、Mini 5 Proは第二種型式認証を取得したMini 4 Proと同じく製造者がDJIではなくDJI JAPAN株式会社になっている(DIPS機体登録の際には注意が必要)。
今後はMini 5 Proの認証機体への登録についても期待していきたい。
藤倉昌洋|プロフィール
新潟県在住のドローンオペレーター。株式会社NK2-Tech代表。YouTuber「NANKOTSU」としてドローン初心者向けの情報を中心に配信中。



