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はじめに

Blackmagic Designが「Media Player 10G」を初めて発表したのは、2024年のNAB SHOWだった。それから約1年半、待ち望んでいた本製品がついに販売が開始された。

同社はUltraStudioシリーズやDeckLinkシリーズといったビデオI/Oインターフェースをこれまで多くリリースしている。一般的なUSB-C to HDMIのようなアダプタと異なり、OSのカラー補正やフレームレート変換の影響を受けずに映像をそのまま出力できる点から、映像制作の幅広い現場で用いられてきた。

今回のMedia Player 10Gは、その系譜に属しながらも「Media Player」という新しいカテゴリーで登場した製品だ。発表時には、DaVinci Resolveのリプレイ機能に特化したビデオI/Oインターフェースとして紹介されたが、実際に使用してみると用途はそれだけにとどまらない。ライブ配信やイベント現場など、多様なシーンで活躍する可能性を秘めている。本稿では、その実力をレビュー記事としてお届けする。

製品概要

外観、前面パネル

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前面パネルはUltraStudioシリーズやHyperDeckシリーズでおなじみのUIを踏襲しており、ノブとボタンを使って各種設定を行うことができる。小さいモニターながら出力している映像を直接確認できるのは、スイッチャーやモニターに映像が入力できていない場合のトラブルシューティングに有効である。また本体にはスピーカーも搭載されている。音質は限定的ではあるが本機単体で音声も確認できるのは大きなメリットだ。

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ゴムカバーで隠れている部分にUSB Type-C端子もついているが、先日アナウンスがあった通りこのフロントパネルのThunderbolt認証に問題が発生したため使用は不可となる(この変更により製造コストが削減され、販売価格も50ドル値下げされた)。

背面端子:10G Ethernet/12G-SDI/HDMI/オーディオ出力

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背面にはAC入力、PCと接続するためのThunderbolt端子、Fill&KeyのSDI出力やキャプチャ用のSDI入力はもとより、Desktop OutとMonitor OutというSDI/HDMI出力がそれぞれ搭載されている。さらに10G EthernetポートやAnalog Audio Out、Desktop USBにRemoteコントロール用RS-422端子など小さい筐体にこれでもかと詰め込まれている。

セットアップと初期操作

本機を使用するためには「Desktop Video 15.0」以上をインストールする必要がある。これはBlackmagic Designのサポートページからダウンロード可能だ。インストール後AC電源を接続し、Thunderboltケーブルで使用するPCと接続するだけで使用可能になる。

ところが、筆者の環境(MacBook pro)では接続時に認識されないトラブルが発生した。原因を調べてみたところMac OS側の拡張機能の設定が有効になっていなかったことが判明し、そちらを有効化することでOSが本機を認識した。導入時、同様のトラブルが発生した場合はこの点を確認するといいだろう。

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(拡張機能設定でこれらを有効にしておく必要がある)

なお、この製品は12Gの映像信号や10G Ethernet、5GbpsのUSB接続に対応したことによりThunderbolt 3の帯域上限(40Gbps)まで使用するケースがある。そのため、20GbpsまでのThunderboltケーブルでは動作しない。

従来のUltraStudio 4K Miniなどでは20Gbpsケーブルでも使用できていたが、そのケーブルをそのまま流用しても使えない可能性があるので注意が必要だ。

新しいコントロールソフト「Media Player Setup」

Media Player10Gでは機器設定用アプリケーションが従来の「Desktop Video Setup」から、新しく「Media Player Setup」に変更されている。本アプリケーションはDesktop Video 15.0をインストールすると同時にインストールされる。

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Desktop Video Setupを開いてもMedia Player 10Gは表示されないので注意してほしい。

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(参考)Media Player SetupのUI

Fill&Key Out

Media Player 10Gの主要機能のひとつが、Fill&Key出力である。Fill信号は本線の映像であり、Key信号は白黒を用いて透過情報を表現する。スイッチャー側でこのKey信号を透過情報として利用することでクロマキーとは異なり、使用する色に制限のない合成や50%透過といったよりリッチな合成が可能となる。

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(Fill&Key合成のイメージ)

従来のUltraStudio 4K MiniではSDI出力が6Gまでに制限されていたが、Media Player 10Gを使うことで12G信号でのFill&Key出力が可能となり、より高解像度・高フレームレートを要求される現場でも対応できる。

Monitor Out

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DaVinci ResolveのReplay機能には、「リプレイハードウェアSDI出力をミュート」という設定がある。これはリプレイがOnAir中である「RUN」状態のみFill信号から映像を出力し、それ以外の状態では出力をブラックアウトさせる機能だ。

その場合、リプレイのオペレーターは手元のモニターで映像を確認できずDaVinci Resolveの画面上でのみ映像を確認する必要がある。Media Player 10GのMonitor Outはこの制限に関わらず常に映像を出力するため、常に手元のモニター等で映像を確認しながら操作することが可能となる。

Desktop Out

Media Player 10Gには、これまでのUltraStudioシリーズにはなかった「Desktop Out」端子(SDI/HDMI)が搭載されている。

この出力を有効化することで、Media Player 10Gが接続されたPCの拡張デスクトップをSDIまたはHDMIから取り出すことが可能だ。SDIとHDMIは排他ではなく同時出力に対応しており、SDIでスイッチャーに映像を送信しながら、HDMIで手元のモニターで確認するといった運用もできる。

SDI IN/Loop Out

DaVinci Resolve Replayを使用する際、録画映像とタイムコードで同期されたマルチビュー信号をSDI INに入力しておくと、DaVinci Resolve上でマルチビューを確認しながらリプレイ用のシーンを探すことができる。

また、本端子はvMixなど他社製ソフトウェアスイッチャーへの映像入力にも対応しており、柔軟な運用が可能だ。

10G Ethernet

Media Player 10Gは、PCとThunderboltで接続することで10G Ethernetアダプタとしても使用可能だ。

DaVinci Resolve Replay機能を使用するにはHyperDeckからCloud Dockなどのネットワークドライブへ保存されていく録画データをネットワーク経由で開く必要がある。しかし、ProResなどの高ビットレートコーデックやマルチカメラを扱う場合従来の1Gbps(1000BASE-T)Ethernetでは帯域が不足することがある。

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10G Ethernetアダプタはすでに各社から販売されているが価格はまだ高めだ。Media Player 10Gでは、Thunderboltケーブル1本でビデオI/Oに加えて10G Ethernet接続が可能となるため、コストパフォーマンスや運用の利便性が大きく向上する。

実際のユースケースとして、Media Player 10GとCloud Dockを同じラックに設置しLANケーブルで直接接続すれば、PCとの間でストレージへのアクセスを10Gbpsで行うことがPC〜Media Player 10GをThunderboltケーブル1本で接続するだけで実現できる。

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試しに筆者所有のCloud Dock 2をMedia Player 10G経由でネットワーク接続し、読み書き速度を計測してみたところ、SSDの最大値に近い速度が出ており、10Gbps接続が十分に活用できていることを確認できた。

Audio Out

本製品にはXLRのオーディオ出力端子を2系統搭載し、アナログで音声出力を行うことができる。バランス接続に対応しているため、Desktop OutのSDI同様に長距離ケーブルの引き回しが必要な現場でも、DIを使わずに安全に音声を送ることが可能だ。

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(OSサウンド設定でオーディオ出力デバイスとして利用可能)

また、Media Player 10GはOSからサウンドデバイスとして認識されるため、アプリケーションを問わず音声出力が行える。ディエンベッダーを使用しなくても、スイッチャーや会場PAに直接音声を渡せる点も大きなメリットである。

Desktop USB

本製品にはUSB-C Gen1(5Gbps)のUSB端子も備えているので、ThunderboltでUSB-Cが塞がってしまってもこちらのポートを使用することで外部デバイスを接続することが可能だ。

まとめ

従来のUltraStudioシリーズは対応した専用アプリケーションを使用したビデオI/Oに特化した製品であったのに対し、Media Player 10Gは拡張デスクトップ出力や10G Ethernetなど接続したPCに付加機能を提供できる。

これによりUltraStudioに対応していないMicrosoft PowerPointなどのスライドショーアプリケーションからの映像をSDIで出力可能となり利便性が大きく向上する。

また10G Ethernet機能によって大容量メディアへのアクセスもストレスなく行えるため、メディアの保存先もアプリケーションも問わず、あらゆる「メディア」の映像出力を1台で管理できる。

これらの点からMedia Player 10Gはまさにその名の通り、あらゆる現場で「メディアプレーヤー」として活躍できる製品である。

サカイアキヒロ|プロフィール

1984年生まれ。映像カメラマン/配信エンジニア/録音技師。 業務用音響機器メーカーでエンジニアとして培った音響とネットワークの知識を活用しライブ配信現場でテクニカルディレクターからCMやWebドラマの録音技師として幅広く活動中。YouTubeでは機材レビューや配信技術などの動画を発信中。