251028_Review_Insta360X4Air_topMQu6iY3F

Insta360の新製品「Insta360 X4 Air」が登場だ。

このニュースは映像クリエイターはもとより、日常や旅の時間を大切にしたいあらゆる人々にとって吉報と言えるだろう。

なぜなら、わずか165g軽量ボディの携帯性と高スペック8K 30fps 360°動画撮影の性能が併せ持つメリットを、6万円を切るリーズナブルな価格で入手できるからである。さらには、進化を続けるAI編集機能を利用することで、誰もが手軽に高品質な映像を編集し、速やかに共有することができる。

本記事では、360°カメラの新スタンダードモデルの有力候補であるInsta360 X4 Airの魅力と可能性を、主に画質の観点から掘り下げてみたい。

人生の瞬間を逃さず捉えるために設計された360°カメラ

従来のカメラは、言うまでもなく、レンズを向けた方向しか記録することができない。そのため、スポーツにおける決定的瞬間や子供の一瞬の表情など、大事な瞬間を撮り逃してしまうというリスクがあった。

360°カメラは、デュアル魚眼レンズで空間をキャプチャーすることによって、VRの利用はもとより、リフレームして利活用することが可能である。全方位を記録するから、ある意味、現場でのフレーミングは不要と言える。後からアプリでベストなアングルを選べるので、撮影者は撮影することを意識せずに、人生の瞬間や家族や友人とのコミュニケーションに集中ができる。これは旅先や日常の記録において、特に有り難く感じられる恩恵だろう。また激しいアクションシーンにおける自撮り撮影などにも有用である。元データが高解像度だから、リフレーム後の解像度も担保できる。

Insta360 X4 Airは、軽く、ポケットに完全に収まるほどに小さいので、日常使いの360°カメラとして優れた携帯性を実現している。バイクのハンドルバーやヘルメットなどへ設置した場合も邪魔にならずにストレスが少ない。防水ボディと交換可能なレンズは、激しいスポーツや過酷な冒険などハードな撮影をサポートする。

搭載する機能を絞っている分、使い勝手が良いと言える。

さらに、所謂「見えない自撮り棒」効果により、自撮り棒が自然に消失し、自撮りでも三人称視点やあたかもドローンのようなアングルが実現できる。シングルレンズモードに切り替えれば、一人称視点も撮影可能だ。Insta360 X4 Airは、これらの効果を1台に集約したオールインワンのデバイスでもある。

このように撮影のチャンスや可能性を拡張できることが、Insta360 X4 Airの最大のアドバンテージと言えるだろう。

Insta360 X4 Airの主なスペック

Insta360 X4 Airは、大きさが46×113.8×37mm(W×H×D)。

重さは165gである(筆者の実測では、166g)。

同シリーズのInsta360 X4の204g、Insta360 X5の200g、競合のDJI Osmo 360の183gよりも軽く、iPhoneの最新モデルiPhone17 Airと同じ重さだ。

携帯性に優れており、軽量設計なのでアクションシーンの撮影などにも期待できる。60種類ものアクセサリーと組み合わせることで、撮影の可能性はより広がることだろう。

レンズはF1.95。焦点距離は6.4mm。

Insta360 X5と同様、ユーザー自身によるレンズ交換が可能なので、万一、レンズが破損した場合でも、対応に費やす時間やコストが節約できる。X5より些か小さい1/1.8インチのイメージセンサーが採用されている。

ボディカラーのラインナップはマット仕上げのグラファイトブラックと洒落た印象のアークティックホワイトの2色展開である。アウトドア、Vlog撮影や旅行など、用途や好みに合わせて選択できる。

タッチスクリーンはスマホアプリに寄らずとも、プレビューやカメラ設定、撮影設定が可能だ。大きさはX5より長辺が短く、およそ5.2mm×3.7mmである。

物理シャッターはスクリーンの下部中央の位置に配置され、大きめの円形の形状で押しやすい。

251028_Review_Insta360X4Air_01MQu6iY3F

リムーバブルバッテリーの容量は2010mAh。

駆動時間は、8K30fps 360°動画モードで88分。

耐久モードを有効にし、5.7K/24fpsの360°動画モードで検証した場合の駆動時間は100分。5.7K30fpsでは135分である(ラボ環境において検証)。

充電時間は80%充電の場合、36分。フル充電なら57分ほど掛かる(9V 2A)。

ストレージはUHS-I V30 speed classのマイクロSDカードが推奨されており、最大1TBまで使用できる。

防水性能はX5同様、ハウジングなしで15mまでとなっている。

三脚ネジ穴は1/4インチ、軽量化のためもあり、プラスチック製である。

画質の実力はいかに?

写真の解像度は2900万画素である。X5では7200万画素と1800万画素が選択できるが、X4 Airの場合は29MPの一択となっている。高画素の場合、保存等の処理に時間が掛かる場合があるので、29MPは日常使いには実用的なサイズであると言えるだろう。

251028_Review_Insta360X4Air_02fw18nsVR
写真8K 7680×3840 HDRモード

新登場のポートレートモードは、リアルな質感を保ちつつ、顔の明るさを強調し、肌色の調整を自動的におこなう機能だ。

写真でも動画でも利用できるが、明るい環境での使用が推奨されており、激しいアクション場面などでの利用は控えた方が良さそうだが、通常の自撮り撮影で有効な機能である。

251028_Review_Insta360X4Air_03w5vqKBoC
ポートレートモード-オフ(写真左)とポートレートモード-オン(写真右)

X4 Airの動画の最大解像度は、8K 7680×3840 30fps。

X5にも搭載されているアダプティブトーンは各レンズからの露出を自動的に調整し、自然なハイライトとシャドウを表現する機能である。デュアルレンズのそれぞれの露光データを独立して記録し、ハイライトやシャドウのディテールを360°全体で保持する。ユーザーが選んだ視点に合わせて自動的に露出を調整するから、明暗差の激しいシーンでも自然で美しい映像が実現できる仕組みだ。筆者は、この効果が気に入っている。必要条件としては、最大30fpsまでのフレームレートの設定の際にサポートされる機能である。この機能は電力消費が激しいので、風通しの良い環境での使用をお勧めする。

本格的な夜景撮影などを計画している場合は、イメージセンサーの大きなX5を用いることが、ノイズ発生の観点から優位と考える。

251028_Review_Insta360X4Air_04w5vqKBoC

その他、360°動画と同時にフラット動画も撮影できるインスタフレーム、タイムラプス、タイムシフト、ストレージの一定の容量内でループ録画をおこなうロード・モード、スターラプス、バースト、インターバルなどのモードがある。

シングルレンズモードの場合、動画、写真以外では、従来機種のようにFreeFrame動画、ミーモード、ループ録画が利用できる。

また、Insta360シリーズのとっておきの機能である手ブレ補正と水平補正機能は、ここでも健在である。ジンバル要らずで、自動的に適用される手ブレ補正と水平補正により、安定した水平を維持した映像が撮影できる。





シングルレンズモード(4K)視野角メガビューの場合のプレビュー画面

ミーモード

Insta360 X5やX4と画質を比較してみた

Insta360 X4 Airを、同シリーズのフラッグシップ機とされているInsta360 X5と比較した場合、最大解像度の8K30fpsの性能は同等ながら、イメージセンサーは1/1.8インチと、X5の1/1.28インチよりも若干小さい。

両者のスペックやそれ以外の違いを比較した表を、下記に掲載するので、導入を検討されている方は参考にしていただきたい。

もし選択に迷う場合は、以下の項目(ニーズ)を参考にしてもらえると幸いだ。

以下のケースに当てはまる場合は、X5を選択することになるだろう。

  • コンシューマー向けの360°カメラにベストな画質と性能を要求する
  • 夜景など暗所の撮影を予定しており、大型のイメージセンサーを搭載し、トリプルAIチップやPureVideoモードなどX5の優れた低照度性能を利用したい
  • コスパよりクオリティを重視する
  • 最高フレームレートの4K120fpsを利用して、効果的なスローモーション動画をつくりたい
  • 若干、筐体が重めでも、駆動時間の長い長寿命バッテリーを利用する必要がある

また、以下のケースに該当する場合は、X4 Airを選択すると良いかも知れない。

  • 初めて360°カメラを導入してみたい
  • 8Kの高解像度は魅力的だが、なるべくコスパ良く手に入れたい
  • 軽量なサイズが有り難い
  • 昼間に撮影する場合が多い

など。

Insta360 X4 Air Insta360 X5
センサー 1/1.8インチ 1/1.28インチ
写真 2900万画素 7200万画素
360°動画 動画モード:
8K: 7680×3840@30/25/24fps
6K: 6016×3008@50/48/30/25/24fps
4K: 3840×1920@50/48/30/25/24fps

インスタフレームモード:
6K: 30/25/24fps
1080p: 30/25/24fps








動画モード:
8K: 7680×3840@30/25/24fps
5.7K+: 5760×2880@30/25/24fps
5.7K: 5760×2880@60/50/48/30/25/24fps
4K: 3840×1920@120/100/60/50/48/30/25/24fps

インスタフレームモード:
5.7K+: 30/25/24
5.7K: 30/25/24
1080p: 30/25/24

PureVideo:
8K: 7680×3840@30/25/24fps
5.7K: 30/25/24
4K: 30/25/24
シングルレンズ動画 シングルレンズ:
4K: 3840×2160
16:9@60/50/48/30/25/24fps
9:16@30/25/24fps
2.7K: 2720×1536@60/50/48/30/25/24fps
1080p: 1920×1080@120/100/60/50/48/30/25/24fps

FreeFrame:
4K: 3840×3840@30/25/24fps
2.7K: 2720×2720@60/50/48/30/25/24fps
1080p: 1920×1920@120/100/60/50/48/30/25/24fps

ミーモード:
4K: 3840×2160@30/25/24fps
2.7K: 2720×1536@60/50/48/30/25/24fps
1080p: 1920×1080@120/100fps
動画モード:
4K: 3840×2160@60/50/30/25/24fps
2.7K: 2720×1536@60/50/30/25/24fps
1080p: 1920×1080@120/100/60/50/30/25/24fps

フリーフレーム動画:
4K: 3840×3840@30/25/24fps
2.7K: 2720×2720@60/50/30/25/24fps
1080p: 1920×1080@60/50/30/25/24fps

ミーモード:
4K: 3840×2160@30/25/24fps
2.7K: 2720×1536@120/100/60/50/30/25/24fps
1080p: 1920×1080@120/100/60/50/30/25/24fps

見えない自撮り棒効果
FlowState 手ブレ補正
360°水平維持
バッテリー 取り外し可能
充電式
2010mAh
取り外し可能
充電式(急速充電対応)
2400mAh
駆動時間 88分
ラボ環境において8K30fps 360°動画モードで検証
208分
ラボ環境において、耐久モードを有効にし、5.7K/24fpsの360°動画モードで検証 5.7K30fpsでの駆動時間は135分
防水 15m 15m
重量(カメラ+バッテリー) 165g 200g
寸法(幅×高さ×奥行き) 46×113.8×37mm 46×124.5×38.2mm
ストレージ microSDカード
内蔵ストレージなし
microSDカード
内蔵ストレージなし

X4 Air、X4、X5の8K30fps 比較動画。X4 Airはバランスのとれた画づくりで、一見、X5にも引けをとらない。X5は階調の豊かさにおいては、アドバンテージがあるものと感じる

クリアで自然な音質のオーディオ

Insta360のXシリーズの当初のオーディオ設定の風切り音低減機能は、些か人工的な印象が否めなかったが、新製品の登場やアップデートを重ねる度に、音質は確実に向上している。

X4 Airにおいても、物理的な内蔵ウィンドガードによる風切り音の低減が効果的で、必要な音は逃さず、ノイズを排除して、クリアかつ自然な音質を実現している。

オーディオ設定比較(風切り音低減-強、風切り音低減-j弱、音声強調、ステレオ)

オーディオ設定(360°オーディオ)

AIがサポートするシームレスな編集と簡単共有

X4 Airでは撮影における操作もスムーズにおこなえるが、撮影後のワークフローにおいても、AI搭載のInsta360モバイルアプリを利用することで、撮影素材に対して簡単に高度な編集をすることが可能になっている。

AI自動編集は、プリセット視点とAIの最適化により、タップして指定することで前方ビューや自撮りビューを固定できる。

またAIが最適なアングルを自動的に発見してくれる。

自動編集機能では、動画素材に対して、AIが自動的にBGMやカメラワーク、効果的なトランジションなどを追加してくれるので、SNSに投稿する動画も時短で作成することが容易だ。

編集ラボでは、クリエイティブなエフェクトやユニークなテンプレートが豊富に用意されている。

また、X4 AirをWi-Fiに接続し充電するだけで、撮影データを自動的にクラウドにバックアップすることができるから、ストレージの容量を心配することなく、常に撮影に注力できる。

動画の編集や書き出しもクラウド上で行えるため、自宅や外出先でもそのまま編集作業にかかることが可能だ。デバイスの容量を消費することもない。

カスタマイズ可能なリンクを利用することで、コンテンツを素早く共有し、友人や家族、フォロワーがアプリをダウンロードする必要もなく、360°映像を楽しむことができる。

まとめ

X4 Airは小型軽量なボディを活かしながら、8Kの高スペックな360°撮影の性能を利用できるので、撮影自体やフレーミングに気を取られることもなく、リアルな体験に集中できて自由度が高い。また、AIの手を借りて、撮影素材を高品質なレベルへとブラッシュアップしたり、ユニークな表現を盛り込んだ編集が可能だ。そして、作品を世界に向けて速やかに共有できるシームレスなワークフローを実装している。これこそ、まさにInsta360(Arashi Vision)の創始者であるJKが掲げる理念を具現化した製品と言えるだろう。

同社は、360°カメラシリーズのフラッグシップモデルと謳われるInsta360 X5を、本年4月22日に発売しており、それから半年が経過したばかりだが、価格が3万円近く安く、コスパの良いX4 Airとの二段構えのラインナップになったことで、ユーザーの選択肢の幅も広がり、結果的には販売にプラスになると考えられる。

今年はInsta360以外にも、DJI Osmo 360やTHETA A1、GoPro MAX2が発売され、360°カメラ市場は大いに活況である。

そんな中、8Kの可能性を手のひらサイズに凝縮したX4 Airは、エントリーモデルの概念を更新して、クリエイターの期待にも応えうる使い勝手の良いオールインワンツールと位置付けられる。

X4 Airの価格は、スタンダードバンドルが税込56,900円、スターターバンドルが税込62,900円となっている。

WRITER PROFILE

染瀬直人

染瀬直人

映像作家、写真家、VRコンテンツ・クリエイター、YouTube Space Tokyo 360ビデオインストラクター。GoogleのプロジェクトVR Creator Labメンター。VRの勉強会「VR未来塾」主宰。