撮影現場にも劇的な変化が見られるDSMCやDSLRの存在

DSMCやDSLR機の特徴は、なんと言ってもそのルックの良さに加えて、フィルムライクな撮影方法がこれまでと違和感なく現場に導引できることで、特にCMやミュージックビデオ(MV)の制作には重宝されるようになってきた。

東京・港区三田にある撮影技術会社、株式会社スパイスではCM、PV、VP、WEBなどの撮影を手がけており、現在主流のカメラ機材としては、秒間1000コマまでの超スローモーション撮影が可能な『ファントムHD』や、『SONY F35』などのハイクラスのデジタルムービーカメラと、EOS 5D Mark II、EOS 7Dでの撮影を中心に行っている。

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▴7D用のPLマウント

また同社では、このDSLRの潮流にいち早く対応、キヤノン7Dに対応した PLレンズマウントを自社制作している。本製品は昨年のInterBEE2009にも出展していたが、7Dに使用出来るAPS-CサイズDSLR用のPLマウントで、シネレンズ装着でスチルカメラ用レンズでは出来ない撮影や操作などを、オペレータ付きで機材レンタルしている。またこのPLマウントは特許申請許諾を得ており、今後は日本以外の市場にも拡大を考えているようだ。

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▴ビデオエンジニア&デジタルイメージテクニシャン 三浦 徹氏

同社ビデオエンジニアでもありデジタルイメージテクニシャンでもある、三浦 徹氏はDSMC/DSLRを取り巻く現状についてこう語る。

「昨今のDSLR機の登場によって、フィルムカメラと肩乗せ式のミドルレンジのビデオカメラで撮る仕事はかなり少なくなり、予算がある場合はF35(SONY)やD-21(ARRI)、そしてファントム。その他の仕事は、5倍までのハイスピードと合成メインの現場ならばRED ONE、それ以外では7DなどのDSLR機という状況になってきています。制作会社自体が大幅な制作予算の削減という現状もあって、撮影現場にも劇的な変化が起こっています。現実につい3年前まではフィルムとデジタルの撮影の割合は8:2でしたが、昨年ぐらいからは3:7と完全に逆転しています」

さらにDSMC/DSLR機の登場は、撮影技術会社の仕事自体にも変化を与えた。いまや単に撮影のカメラサポートをするだけは、撮影現場は成り立たたなくなってきている。ほとんどの現場でデジタルデータのワークフローにも精通するスキルが要求されるという。

「今は単に撮影だけでなく、例えばRED ONEの現場ではRAWデータをデジタル現像したり、Appleのcolorでカラコレを施しLUT(Look Up Table)を当てて、色調を確認しながらカラー調整なども行っています。また最近では、DSLR機ですと動画と静止画が両方撮影できるもの大きな利点です。動画撮影中に同アングルで静止画を押さえておけば、編集時の素材加工などにも使用できるので、現にそういう仕事も増えて来ています。シズル感の部分をファントムで撮影し、ノーマルな部分は動画も静止画も7Dで、という現場は増えています。スチルとムービーの境が段々無くなってきましたね。カメラマンもスチルの方がムービーも撮るケースが確実に増えています」

 現在、現場にはMacProが必ず持ち込まれ、SDIキャプチャーカードDeckLink HD Extreme(Black Magic Design)を装着、これで撮影後すぐに画質や色調のチェック、クライアントチェックを可能にしている。これによりカラーコレクションされた後の、実際の映像イメージを見ながら、撮影現場全体で画の追い込みを行っていくという。

「現在、7Dなどデジタル一眼レフカメラのHDMI OUTからの出力をDeckLink HD Extremeが装着してあるMacProへSDIで送り、colorでLogデータや 眠いガンマを補正するなど、Mac上で色調や輝度などを調整/変更して、クライアントチェックを受ける、という現場のフローを構築しています。これによりクライアントには紙の資料だけでなく、実際に現場で後処理のカラーコレクションではこうなります…といったシミュレーションとして、実際の画に近い画を見せることができるので、現場でかなり画作りを追い込むことが可能になりました。また現場でもHDMI出力から民生用TVに映すことで、ダウンコンバートされた後の画質がどの程度のものなのか、クライアントにもその場で確認して頂くことができます。やはり頭の中だけで想像していたものと、実際の数値(パラメータなどの)というのは全く違いますから、サンプル画像を見ながら、カメラ側の画作りはもちろん、照明のセッティングまで、現場で追い込めるこの環境が出来たことは、本当に凄いことです」
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協力:
株式会社スパイス
東京都港区三田2-17-18 三田ビル1F
03-5445-2911

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