いまもっともワークフローデザインを意識する分野であるデジタルシネマ関連。カメラ製品としては特に新しく大きな発表などは無かったが、これからのデジタルシネマを取り巻く環境という意味では、様々な進展が見られた。当然の事ながら多くの人だかりで注目されていた事は言うまでもなく、時代を牽引していく分野である事を感じる。

キヤノン | EOS C500

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デジタルシネマの分野で今もっとも勢いのあるメーカーはやはりキヤノンだろう。ここ欧州圏はEOS C300を世界でもっとも出荷している地域でもあり、キヤノンブースは会場内でもっとも賑わっていた。開催直前に正式発表となった、4K/2Kカメラ EOS C500・C500PLは、4K/2Kの高画質な8つのモードで高精細映像を撮影できるCINEMA EOS SYSTEMの最上位機種となるニューフラッグシップ・シネマカメラ。

キヤノンが開発した新しいRAWコーデック”Cinema RAW(60p 10bit)”での収録が可能になり、スーパー35mm相当サイズのCMOSセンサー(有効画素数約885万画素)を搭載、高画素で最大ISO 20,000の高感度を実現している。

また、EOS C300では8bitだったCanon Logが、10bit、12bitで搭載、更なるワイドダイナミックレンジを実現する高画質撮影に対応する。魅力的なのは、2K(2,048×1,080画素)およびフルHDの出力では、RGB4:4:4信号(10/12bit)を採用しており、EOS C300よりもさらに豊かな色再現性を実現できること。出力端子には、4K映像をRAWデータで出力するための3G-SDI端子を2系統と、外部モニターと接続するためのMON.端子を2系統搭載。また、EOS C300と異なる筐体部分として、脱着可能だったハンドル部が各入出力端子ユニット部として熱排気などを考慮した空冷システム内蔵部として固定されているほか、EFマウント周りにレンズロック機構を備え付けた「EFマウント(シネマロックタイプ)」システムを新たに採用している。

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ただし4K/2Kモードでの収録には、他社製の外部レコーダーが必要になることから、撮影の際にはこれらのレコーダーとの親和性、用途や尺に応じたワークフローデザインとデータマネジメントには多用に配慮する必要がありそうだ。ブース内ではアストロデザイン社製の4Kレコーダーとともに展示されていたほか、対応する各レコーダーメーカー(codex、AJA等)のブースでもEOS C500を見かけることができた。

ARRI/Zeiss アナモフィックレンズ/コンパクトズームプライム

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キヤノンのCINEMA EOS シリーズとEFシネマレンズの登場によって、にわかにシネマレンズの世界にもARRI/Zeiss vs Canonといった構図ができあがってきたようにも思えるが、キヤノンに対抗するように、ARRI/Zeiss陣営もコンパクトプライムシリーズのラインナップを一気に増やしてきた。NABで技術発表されたアナモフィックレンズ「Master Anamorphic MA50/T1.9」の実機が初めて展示。さらにコンパクトプライムシリーズも、ズームレンズのCompact Zoom 「CZ.2 28-80 / T2.9」「CZ.2 70-200 /T2.9」とコンパクトプライムレンズの「CP.2 25/T2.1」「CP.2 135/T2.1」などの新たなラインナップを展示した。

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AJA | KiStor/KiStor Dock

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AJAからはKi Proファミリーに新たな付属製品が加わっている。ThunderboltとUSB3.0接続ができる 「KiStor Dock」と、Ki Pro、Ki Pro Rack向けのUSB3.0対応ストレージ「KiStor」を初展示した。「KiStor」ドライブは、従来以上により速いスループット対応で、ファイル転送をさらに高速に行えるよう出力端子はFireWireの代わりにUSB3.0出力を装備。新しいドライブは250GB、500GB、750GBの3つのモデルが用意される。750GBドライブモデルで、1080p/24 Apple ProRes422 HQコーデック 4chオーディオによる収録で最大約8時間、DNxHDコーデックでの145モードでは約13時間収録が可能。

コンパクトな「KiStor Dock」は、「KiStor」ドライブ用のアクセサリーで「KiStor」ドライブをMacやWindowsデスクトップやラップトップマシンに接続してシンプルにファイル転送を行える。「KiStor」ドライブ駆動するために内部SATA接続。従来の「KiStor」ドライブとももちろん互換性もあり、すべての「KiStor」ドライブをThunderboltとUSB3.0でコンピュータに接続することが可能になる。

FOR-A(朋栄) | FT-ONE

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6月のCineGearEXPOに続き、4Kマイクロシアター(定員15人程度)を設けてデモ映像の上映を行った朋栄の4Kハイスピードカメラ「FT-ONE」。6月の発表時からは仕様が一部変更されており、最大コマ数が秒間900コマに仕様変更になっているが、これはまだ最終仕様ではないとのこと。またFT-ONEはハイスピード映像だけでなく通常の24p撮影など通常モードでも撮影できるという。また今回上映されたサンプル映像には、陸上自衛隊による富士山麓での演習風景の映像が追加されており、戦車からの砲弾発射やロケットランチャーなどの発射シーンなど、4Kハイスピードでなければ見ることのできない興味深い映像が上映されていた。InterBEEでも同社ブース内には同様の4Kミニシアターを設置するということなので、ぜひ会場でこの映像を体験して頂きたい。このFT-ONEは、IBC2012において、TV Technology Europe誌におけるShow STAR賞(優秀技術賞)を受賞している。

ソニー | F65+COLORFRONT

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オートデスク社製品が年内にF65 RAWに対応することが決まるなど、次第に浸透を広げているソニーのフラッグシップカメラF65。今回のブース展示ではOn-Set DailiesのシステムColorfront社の協力など、専用のOn-Setブースを設けて、現場でのデータマネジメント、デイリー作業、簡易グレーディングなどのワークフロー展示を行っていた。また中央の4KシアターではF65撮影による新たなフッテージも上映。

txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.02 [Workflow Design from IBC2012] Vol.04