ワークフロー・デザイン時代の到来

この数年でAVCHD、XDCAM、AVC-Intra、MXFなどの収録コーデックや方式がすでにHDの世界ではスタンダードとなり、画像のデータ情報も8bitから10bit、12bitへ、4:2:0、4:2:2からRGB4:4:4など、より色情報を持った形式で収録ができるカメラやレコーダーが台頭してきた。そしてDNxHD、ProRes、GrassValley HQなど、より効率的な後処理作業が可能な編集用コーデックによる収録後の作業効率の向上、そしてRAWやLOGなど、露出やワイドダイナミックレンジという新たなデジタル映像データの領域をカラーグレーディング等でコントロールできるデジタルネガティブデータと登場と、現在のデジタル映像を取り巻くデータマネジメント環境は、進化する度にますます複雑化してきている。

今年6月の特集「Digital Cinema Bulow」では、NABやCineGearEXPOで見られた2012年のトレンドである、進化するデジタルシネマ環境として、4Kや2KといったHDよりもさらに高解像度な映像制作を可能にするテクノロジーや製品の話を中心に扱ってきたが、今春まではまだ、その先の未来の話でしかなかった。しかしこの流れも2012年後半になるに従って、製品の現実化そして低価格化によってより現実味を帯びてきている。

ところで、更なる高品位な映像制作に伴う新しい技術を制作ワークフローに取り入れるとき、そこには必ず様々な戸惑いや躊躇の見解もあるが、とくに大きなバジェット(予算)で動くプロジェクトやテレビなどの既存のシステムをそう簡単には変更できない分野では、そうした懸念はますます強いだろう。まだ全てが揃ったとは言えない(常に完成形というのは存在しないが!)ワークフローに、いつでもユーザーの戸惑いは隠せないのは現実だ。

しかし、ファイルベース・ワークフローのこれからを考える時、ここに来てこの考え方もこれまでと大きく変わって来たと言えそうだ。それは今までどちらかといえばメーカー主導によるもの、つまり製品を中心にメーカーからの提案型で訴求される、という指向性のモノだったその設計構造が、これからはむしろ制作者(ユーザー)側が自由に設計できるようになってきたことだ。これは各パーツの製品群がより汎用性を持ったカタチでブラッシュアップされてきたからである。そして、その組み立て方として、最初に配信・上映先のことを熟慮しなければ、編集システムなどのポストプロダクションのことだけでなく、最初の入り口であるカメラすら選択できない(してはいけない)時代なのかもしれない。

制作者本人がこうしたことを考慮しつつ、様々な制作ツールをアレンジして、そのコンテンツに相応しいワークフローを構成する、いわば『ワークフロー・デザイン』の時代を迎えたといえるのではないだろうか?

最終納品形式を考慮したコーデックやフォーマットの選択、そしてそれらのデータマネジメントありきといった制作フローの設計は、これから映画・TV・CM制作といったハイエンド制作だけでなく、PV、ブライダル、そして多くのインディペンデント作品やWeb動画に至るまで、全てのジャンルに求めらてくるだろう。

IBC 2012から見えてくる事

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そんな仮説を念頭に今回は9月7日からオランダ・アムステルダムで開催された『IBC 2012』で発表された新製品を紹介しつつ、さらに次のステージの映像制作における「ワークフロー・デザイン」を構成する各パーツの現状から、映像制作技術のこれからを占っていきたい。

txt:石川幸宏 構成:編集部


[Workflow Design from IBC2012] Vol.01