デジタルシネマ関連の機材がカメラ・周辺機材の多様性が拡がっている現状。そのベースとなったのは、やはり4年前からのデジタル一眼レフ(DSLR)ムービーの台頭と、その周辺に芽生えた周辺機材の市場だ。さらに最近ではデジタル一眼レフ以外にもミラーレスのコンパクト一眼カメラなどもムービー撮影機材として用いられ、その裾野はますます拡がっている。さらに従来のビデオカメラも含めると選択できる機材が増えたことに乗じて、周辺機材の選択にも拡がり、機材の選択にもいまや様々な知識や情報が必要になってきている。またプロ以外でも多くのユーザーがムービー(動画)制作を気楽にできるようになってきたことで、製品自体の低価格化が加速、さらに機材を選択する際の”目利き”が必要になってきたことも確かだろう。

ここにきて、各社の制作系カメラ(デジタルシネマカメラ等)については、現場で収録するレコーダーの収録コーデックや入出力の選択、さらに特機による撮影方法の違いによって選ばれる周辺機材も様々だ。

大判センサー搭載のレンズ交換式カメラの台頭によって、交換レンズにより筐体重量バランスの調整や、その周辺機器のサイズも大きく変わってくること。従来のビデオ三脚だけでは対処出来ない状況というのも増えてきている。また画像データの収録についてもカメラ本体だけで完結しない状況も多く生まれつつある。カメラ内のメモリーカード等、収録コーデックはスタンダードなものだけでいいのか?、外部レコーダーはどのレベルのマシンを選ぶのか?、接続は直接できるのか?、変換コネクターの有無は?、収録サイズとコーデックは何なのか?、編集用コーデックはProResなのか、DNxHDなのか、閲覧用のプロキシデータの何種類出力するのか?など現場での汎用性を考えれば考えるほど、選択肢は多岐に渡る。これによりリグや三脚、特機などの選択も千差万別になってくる。

特に収録コーデックとレコーダーの関係性は、いま最も現場で重要な選択ポイントになっている。たとえばAJAのKiPro、KiPro mini、これから登場する4K対応のKiPro QuadなどProRes、DNxHDといった編集コーデックをベースにして、後処理のワークフロー重視のサイズだけを考えればよいのか?、それともcodexなどRAWファイルでのハイエンド処理を前提とした独自のDPXデータ変換もできるようなハイエンドレコーダーをチョイスするのかによって、現場での仕様は大きく違ってくるからだ。

こうした背景から考えられるのは、これから予測されるワークフローデザインの考え方として、まず撮影周辺の環境では、これまでのように撮影部/カメラマン主導でカメラ機材を選ぶというよりも、作品自体の最終の完成形態がどのようになるのか(TVなのか映画なのか、Web配信なのか、またそのどちらも作る必要があるのか?)によって、カメラ自体や撮影周辺機材をチョイスする時代になってきている。またそれ専用のデータマネージャー、もしくはDIT(Digital Imaging Technician)などがその部分のコントロールを専任で行う必要がある。さらにその後のワークフローでは、ポストプロダクションにおけるデータマネジメントにも大きな比重が掛かってくる。

wfd_04_DW_04.jpg

日本的な撮影システムでももちろん方法はあるのだが、関連製品の傾向として、次々と送り出される製品群が、ハリウッド式のDPシステムに符号するような作りになっていることは確かだ。誰かがワークフローデザインのイニシアティブを持って、各部署に指示するというハリウッド式の撮影スタイルの方が、今のデジタルワークフローをより効率的、有機的に現場で機能させることが出来るのかもしれない。

IBC2012における周辺機器関連の展示では大きく目立った新製品は見られなかったものの、レコーダー関係の製品展示が目立ったことや、ARRIのプロフェッショナル・アクセサリーシリーズなど堅牢かつ精密なリグなどの周辺機器が目立った。

注目されるオンセット・システム

今回のIBCでは、一部ではあるがいまや映画以外での制作現場でもトレンドとなりつつある、オンセット(現場)での編集、RAW現像・簡易グレーディング、デイリー(プレビュー)、データマネジメントなど、現場で主にDP(撮影監督)やDIT(Digital Imaging Technician)が撮影データ管理をするための新たなオンセット・システムが見られたことも特徴的だ。特に複雑化する収録データの取り回しはデータマネジメントと形で、今の撮影現場において非常に重要なポジションななりつつあり、そこに監督をはじめスタッフへのデイリー(プレビュー)は、RAW・Logでの収録がミッドレンジの制作にも浸透しつつある中で、実際に完成系が想像しがたい画像を、現場で仮想的に見せるデイリー作業は、今後必要不可欠な要素になるだろう。

様々な周辺機器やサービス

ASSIMILATE / Scratch Lab
wfd_04_Scratch_WhyOnset.jpg

ASSIMILATE社の最新のデジタルワークフロー向けデイリーシステム『Scratch Lab』を利用したオンセットシステムを展示。Scratch Labは、VFX向けに特化されAdobe After EffectsやThe Foundry NUKEなどとシームレスに統合する『SCRATCH Lab in VFX Dailies』と、ネイティブカメラフォーマットをサポートしタイムコードやメタデータ管理と強力なバックグラウンドレンダリングを可能にする『SCRATCH Lab in Production Dailies』がある。

Tangent Wave
wfd_04_Tangent_OnsetEx.jpg

昨年発表されたコンパクトなコントロールサーフェス『ELEMENT』シリーズとともに展示されていたのは、その他のカメラメーカーブースなど随所で見られたオンセットデイリーシステムの定番、colorfront社の『On-set Express』。すでにハリウッドメジャー以外でも多くの撮影現場で導入されている。

ソニー
wfd_04_SONY_PMW-50.jpg

XDCAM HD422ラインナップを充実させてきたソニーから発表された、SxSメモリーカードによるHD422フィールドレコーダー『PMW-50』。SxSメモリーカードへHD422(50Mbps)コーデックで記録可能、バッテリー駆動+約123万画素・3.5インチのモニター付きなのでロケ先での収録映像の確認もしやすい。カムコーダーにHD-SDI経由で接続、本制作用途はもちろん、カムコーダーと同時にバックアップやプロキシデータ用レコーダーとしても活用できる。このところバックアップおよびスタッフ確認用のレコーダーとして、パナソニックのAVCHD記録のポータブルメモリーレコーダー『AG-HMR10U』を映画撮影など多くの現場で見かけるが、『PMW-50』はHDCAM HD422という、そのままでも本編に充分使用可能なクオリティの素材を残せる点でも今後の汎用化が期待できそうだ。

キヤノン4Kモニター / アストロデザイン4Kレコーダー
wfd_04_Canon4K.jpg

キヤノンEOS C500発表とともに注目される4K撮影の環境。キヤノンはNABで4Kモニターもプロトタイプとして発表しているが、このIBCでも専用のコーナーを設けるなど4K制作市場に意欲的だ。またC500に対応する4Kレコーダーが現在6つのメーカーから発表されているが、その中でも現在codexとともに最も信頼性が高いと言われる、アストロデザインの4K対応レコーダー『HR-7510』もキヤノンブース内に展示。10月の発売には他メーカーのラインナップも出揃う予定だ。

RED Digital Cinema
wfd_04_redpro9.jpg

今回正式な展示ブースを出展したREDでは、新しい9インチモニター『RED PRO 9.0』を展示。期待された最新のレーザープロジェクターの展示は無かった。

ザハトラー
wfd_04_Ace-L.jpg

廉価製品でもザハトラーの”ACE”シリーズが拡張。ヘッドの種類によって小型のSystem AceM(カウンターバランス:5ステップ/ 2タイプ)とSystem AceL(カウンターバランス:7ステップ/ 3タイプ)が新たにラインナップ。同社製品ラインナップの中で最も軽量のスタンダードな三脚『System AceL MS CF』から、脚がシングルポールタイプのSystem AceL TT 75/2 CFも登場。

bebob
wfd_04_bebob.jpg

1995年創業、ドイツ・ミュンヘンにある撮影周辺機材のメーカー、bebob。リモートコントロール、ライト、バッテリーなど撮影周辺機器のメーカーが、新たにリグシステムを発表。

txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.03 [Workflow Design from IBC2012] Vol.05