今年のInterBEEは4K8K対応のカメラが各社から出展されており、当初の「4K8Kはデジタルシネマカメラ」という位置づけから、よりポピュラーな存在となってきた。デジタルシネマカメラは文字通り映画制作を念頭に作られたカメラだが、民生機レベルのカメラも登場するにつれ、必ずしも大判センサーを採用しないモデルも登場している。4K8Kはすでに総務省の発表したロードマップもあり、放送を前提に様々なタイプのカメラが出てきたともいえるだろう。実際、大判センサーを搭載したカメラでは一般のビデオカメラ用レンズの使用は難しく、取材で使うには利便性に欠けるため、という理由もあるのだろう。
デジタルシネマカメラ系のカメラとしては、6K DRAGONセンサーを搭載したRed Digital Cinema EPIC-MやBlackmagic Production Camera 4Kが、放送向けとしてはアストロデザインの8KカメラAH-4800やソニーの4K小型ビデオカメラPXW-Z100などが挙げられる。また、4Kで1000fps撮影が可能なPhantom4Kハイスピードカメラや4Kで900fps撮影が可能な朋栄のハイスピードカメラFT-ONEなどもあり、かなり特殊な撮影までもカバーできるような環境が整いつつある。
こうしたデジタルシネマカメラや次世代放送カメラだけでなく、HDのカメラもトライアックスやファイバーケーブル接続、CCUによる運用に対応した中継やスタジオ用カメラ新製品がソニーや池上通信機などから出展されている。また、ドラマやCMなどの制作用カメラとしてARRIからAMIRAというHDカメラが出展されていた。スタジオや中継用のカメラは小型ビデオカメラの性能や機能が良くなり、様々な機種が登場することで、HD初期に導入したカメラがそろそろ時代遅れになりつつあり、更新時期をにらんでのことと思われる。一方ARRIのAMIRAは“ドキュメンタリースタイル”というキャッチが付いており、ワンマンオペレートを念頭に開発されている。ただし、従来のENG(Electronic News Gathering)カメラとはコンセプトは異なり、フィルムで撮影していた海外のドラマなどでの使用を念頭に開発されたカメラといえるだろう。
1000fpsクラスのハイスピードカメラは、通常のカメラのオーバークランクでは得られない独特な演出効果を発揮することから特殊な撮影ともいえるが、最近ではスポーツやCM制作などでもかなり一般的に使われるようになってきた。価格的にもこなれてきたともいえるが、やはり映像効果としての説得力という点で欠かせないカメラとなってきたといえるだろう。
PRONEWS AWARD 2013 カメラ部門ノミネート製品
- ブラックマジックデザイン Blackmagic Production Camera 4K
- ソニー PXW-Z100
- ARRI AMIRA
- Red Digital Cinema EPIC-M
- アストロデザイン AH-4800
- 朋栄 FT-ONE
- 池上通信機 HDK-97ARRI
何が受賞するのか…?
PRONEWS AWARD 2013 カメラ部門受賞製品発表
- カメラ部門
ゴールド賞 - Blackmagic Production Camera 4K
Blackmagic Design
スーパー35mmセンサー搭載の4KカメラBlackmagic Production Camera 4Kは、C-MOSセンサーを採用したカメラでは従来避けられないとされていたローリングシャッター現象のないグローバルシャッター方式となっている。記録フォーマットはApple ProResのほかに圧縮CinemaDNG 12bit RAWが可能となっており、12ストップの広いダイナミックレンジでの撮影が可能。価格も波形モニタリング用ソフトウェアUltraScopeとカラーグレーディングソフトウェアDaVinci Resolveをバンドルして希望小売価格432,800円という驚異的な低価格となっている。また、現状は規格化されてはいないものの6G-SDI出力に対応という点も見逃せない。すでに同社の製品では6G-SDI対応の製品もあり、今後デファクトスタンダードとなるかもしれない。規格化は重要なことだが、最近のように技術発展が著しいと規格化された頃には時代遅れの規格となる可能性もあり、今後は力のあるメーカーがデファクトスタンダードとして普及させていくのも一つの方向性かも知れない。同社製品はプライスリーダーだけでなくこうした面でも先進性とともにリーダーシップを感じさせる。
- カメラ部門
シルバー賞 - AMIRA
ARRI
ALEXAのラインナップも完成し、今後の方向性が注目されたがHDのカメラAMIRAが登場した。思えばARRIはフィルムカメラの時代も35mmと16mmのカメラをラインナップとして持っており、そうした伝統を踏襲したに過ぎないのかもしれない。ただ、RAW記録やVF、記録媒体などARRIらしいこだわりも随所にみられ、そういった意味ではソニーなどのHDカメラとは一線を画するカメラといえるだろう。言うなればフィルムライクなHDカメラといったところだろうか。価格的にも初期のデジタルシネマカメラD-20やD-21と異なり、ALEXAあたりからかなり思い切った価格設定となっている。14ストップ以上のダイナミックレンジをもち、LogCのほかHDの標準規格であるRec709記録が可能。カメラバランスや各種レンズマウントへの対応(標準はPLマウントだがスチルカメラのマウントへの変更も可能)となっており、使い勝手や運用性なども考慮されている。
総括
ゴールド賞のブラックマジックデザインBlackmagic Production Camera 4Kは、他社がメカ式のロータリーシャッターやオプションの液晶シャッターなどでローリングシャッター現象を解消しているのに対し、グローバルシャッター方式のセンサーを搭載。加えて、6G-SDI出力への対応やRAW記録したファイルの後処理用にカラーグレーディングソフトウェアDaVinci Resolveをバンドルしていることなど、先進性および価格的に突出していることが挙げられる。
シルバー賞のARRI AMIRAは制作用のHDカメラとして機能性能ともにユニークでありながら、運用性や使い勝手など今までのHDカメラとは次元の異なる面を備えている。HDイコール放送、という枠を超えたという意味で評価したいカメラとなっていると思う。