レンズやモニター、各種アダプターなど周辺機器部門のテリトリーは幅広く、ノミネート製品をピックアップするうえで最も悩む部門である。今年の大きな流れとしてはデジタルシネマ系4K/8K関連のほか、ファイルベース対応機器や技術的に特徴的なプロダクトだといえるだろう。なかでもキヤノンの4Kディスプレイの発売やトキナーのシネマレンズ、グラスバレーのノンリニアプロダクションセンターなどは新たな展開として注目したい。

キヤノンの4KディスプレイDP-V3010は数年前の技術展を初め、NABやIBCなど大きな展示会で幾度となく参考出展されており、その発売が待たれていたが、今回のInterBEEでようやく製品としての発売が発表されたものだ。同社は医療関連事業でモニターを手がけていたが、他社製品であり、キヤノンブランドとしての販売は今回のDP-V3010は初となる。気になるパネルは同社の仕様で他社からの供給を受けているものの、製品としての作りこみはオリジナルとなり、そのあたりは長年スチル映像を手がけているノウハウが生かされているという。カメラやレンズを中心にこうした周辺機器に始めて挑戦したものといえるDP-V3010は、機能性能ともに期待が持てる。

トキナーのシネマレンズ16-28 T3.0 CINEMA LENSは、長年一眼レフカメラの交換レンズを手がけていた同社がシネマ分野への進出を果たしたという意味で興味深い。InterBEEでは50-135 T3.0 CINEMA LENSも参考出展されており、今後の展開が楽しみだ。さらに、SamyangのCINEMA LENSとして、16mmT2.2Aspherical ED、24mmT1.5、35mmT1.5、85mmT1.5も出展しており、本格的にシネマレンズを取り扱う意気込みを感じさせる。

グラスバレーは、放送局を中心としたKayenneやKarrera、Kayakといったスイッチャーなどの製品を中心に、元カノープスの流れを汲むEDIUSを搭載したターンキー編集システムやADVC Gシリーズといったコンバーターでおなじみだが、スイッチャーを中心とした統合システムGV Directorを投入している。GV Directorは、ネット配信を考慮した設計思想を取り入れており、専任のオペレーターでなくても操作できるようになっている。現行の同社のラインナップにはなかったコンセプトの製品で、新たな方向性を示しているといえよう。

技術的には、液晶シャッターを応用したRed Digital Cinema MOTION MOUNTやワイヤレス伝送システムIDX CAM〜WAVE(カムウェーブ)、ルーティングスイッチャーやアップ/ダウン/クロスコンバーターなどを統合したビデオプロセッサーLAWO V_pro8(オタリテック)のように、既存の技術を新たな分野へ応用するなど、統合することで現在の運用に適合させるといった新たな試みが見られる。

PRONEWS AWARD 2013 周辺機器部門ノミネート製品

  • オタリテック ビデオプロセッサー LAWO V_pro8
  • ローランド ビデオプレゼンター PR-800HD
  • Red Digital Cinema ローリングシャッター制御機能/電子NDフィルター搭載レンズマウントアダプター MOTION MOUNT
  • グラスバレー ノンリニアライブプロダクションセンター GV Director
  • キヤノン 業務用30型4Kディスプレイ DP-V3010
  • IDX ワイヤレスビデオ伝送システム “CAM〜WAVE” CW-3
  • トキナー 16-28 T3.0 CINEMA LENS

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2013 周辺機器部門受賞製品発表

周辺機器部門
ゴールド賞
DP-V3010

Canon

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キヤノン30型4KディスプレイDP-V3010は、カメラやテレビなどが先行している4Kにおいて、ワークフロー上最も問題であったモニターを商品化したことを評価したい。また、DCI(SMPTE RP431-2)の色域やITU-R BT.709、EBU、SMPTE-C、Adobe RGBといった色域表示が可能で、4K制作の様々なシーンで活用可能。IPS液晶パネルの搭載により広視野角を実現しており、10bitパネルドライバーおよびディスプレイ用映像エンジンの採用や1D/3D-LUTのデータのインポートなどにも対応している。また、DCI、ITU-R BT.709、EBU、SMPTE-C、Adobe RGBの5つの主要色域は、工場出荷前に1台ごとに高精度な画質調整を実施し、極めて高い色精度を実現しているほか、独自の制御システムを搭載し、色・輝度の変動や経年変化を補正することで、長期にわたる安定性を実現している。キヤノンがカメラだけでなくこうした周辺機器の開発発売したことに注目したい。

周辺機器部門
シルバー賞
V_pro8

LAWO

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LAWO V_pro8(オタリテック)は、複雑化しがちな機器間の接続をスマートに解決できる機器として期待したい。従来こうした機材は比較的大規模なシステムになりがちで、運用も面倒なことが多かったが、非常にコンパクトかつ画面上で簡単に設定を行えるなど運用性に優れている。8×8のビデオルーターのほかFSやアップ/ダウン/クロスコンバーター、ビデオ/オーディオディレイ、カラーコレクター、タイムコードインサート機能などが統合されている。設定はWebブラウザ上から行えるようになっており、イーサネット上にある複数のV_pro8を一元管理することも可能なので、規模に応じて柔軟にシステムを構築することができる。

総括

カメラやレンズを中心にラインナップの充実を図ってきたキヤノンのCINEMA EOSシステムは、カメラメーカーとしてあるべき道を進んで来たといえよう。それは、電機メーカーが作り出すカメラとは違う切り口によるプロダクトであり、システムといえる。4KディスプレイDP-V3010も映像に対するこだわりや操作性なども一味違ったものとなっている。クリエイターが作る映像の品質をどう表現するのか。DP-V3010は一つの回答といえよう。

複雑化する機器間の接続や画像フォーマットの相互変換などLAWO V_pro8は、そうした問題をスマートに解決できるソリューションだ。比較的小規模から柔軟にステップアップできるシステムというところもポイントが高いといえる。


Vol.02 [PRONEWS AWARD 2013] Vol.04