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txt:石川幸宏 構成:編集部
ブラックマジックデザイン
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IBC2016では、歴史ある名門企業2社の買収を発表した。まずは同じオーストラリアのデジタルオーディオ製品の老舗メーカーFairlight社。FairlightのLiveシリーズなど、現在はライブオーディオコンソールなどに定評があるが、その昔、1980年に発表したフェアライトCMIは、いわゆる“オーケストラ・ヒット”などの独特の音色を生み出したサンプリング・シンセサイザーの革命的な電子楽器でもあり、その後コンソールミキサーなどデジタルオーディオ分野において長く存在し続ける老舗メーカーでもある。
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もう1社は過去40年に渡り、放送業界を中心にクロマキー合成のためのキーヤーソフトウェアを提供してきた名門、Ultimatte社だ。これらの買収劇の詳細は、すでに関連ニュース記事で紹介済みだが、今後同社は今年のNABからの流れを見ても明らかなように、ライブ&オンエア系の分野に力を入れて行くと思われる。
2009年以降、ブラックマジックデザインは毎年名門企業と言われる会社を次々と買収、自社製品として最新テクノロジーを注入し、リフォームした自社ブランド製品として現代に蘇らせているのは周知の通りだ。2009年のカラーコレクションシステムのDaVinci Systemsに始まり、2010年にはスイッチャーメーカーのECHOLAB、2011年にはコンバーターメーカーのTeranex Systems。また2012年テレシネやフィルムスキャナーのイギリスの名門企業Cintel Internationalを買収。昨年のNAB2015では同社製品の“Cintel Film Scanner”として、デジタル時代のフィルムスキャンニングマシンを作り出した。その後も2014年にはVFX合成用ソフトのFusionをもつ、eyeon Softwereを買収。今回はそれに続く大きな買収劇となった。
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IBC2016での主立った新製品としては、ライブ制作用のコンバーターTeranex AVと、DeckLink Mini 4Kシリーズの2つの新たなラインナップ、DeckLink Mini Monitor/Mini Recorderのアップグレード版、その他HyperDeck Studio 12Gの$2,495→$1,495への大幅値下げや、Video Assist 2.2とDavinci Resolve 12.5.2への各々のアップグレードなどを発表している。
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最後の単独出展となった、IBC2016でのUltimatteとFairlightのブース。すでにBlackmagic Designのロゴが見える
ミッドレンジ向けシネマレンズ市場の活況
今回のIBCで注目されたのは、高性能のシネマレンズが数多く発表されたことだろう。特にここ数年のスチルメーカーのムービー参入に加えて、小型のシネマカメラが数多く登場してから数年が経ち、レンタル会社にはシネマレンズがあるものの、カメラの供給に対してその需要も多くことからレンタル台数が間に合わないといった傾向が世界各国で起きた。それに加えて100万円以下の低価格シネマカメラと言われる製品数も増えたことで、レンタルよりも購入可能なミッドレンジ向けのシネマレンズが多く求められて来た。
こうした流れは当然ながらメーカーも周知の事実だが、光学設計から精密なレンズを作り出すには、カメラ以上にそう簡単には製品化することは不可能だ。今回のIBCで発表された製品も、やはり3~5年前から市場調査と設計を始めたものがようやく形になったものが多い。
先述のSIGMAのシネマレンズ市場の参入に加えて、ここ数年シネマレンズに力を入れているトキナー、コンパクトプライム等で圧倒的な支持層を持つカールツァイス、コンパクトさ×高性能が売りのライカ、そしてアンジェニューからは新たな発送のシネマレンズが出て来た。またソニーからもFS5/7に向けた新製品を発表するなど、カメラ製品が多く展示される11、12ホールを中心に新型シネマレンズの品評会会場と化した。
トキナー
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ここ数年開発を続けて来た、同社が得意とする広角系ズームシネマレンズに加えて、今回新たにプライムレンズ(単焦点)を発表したトキナー。35mm、50mm、85mmの3本で、本年末(12月中)の発売を目指している。また従来の16-28mmも含めて、外観も従来のオレンジ/レッド/ブルーの文字指標の表示から、シンプルな白文字と蛍光グリーンの文字表示にデザインを変更。今後シネマレンズのシリーズ間で統一を目指す。ちなみに16-28mmはVer.IIとして展示されていた。
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従来のズームレンズからの進化点として、フォーカスリングの回転角を大きく300°へと変更。よりゆっくりとシビアなフォーカス送りもできるようになった。またブリージングについても今回大きく改善したという。フロント口径もφ114mmと標準のシネマレンズと同サイズに揃えられており、標準的なマットボックスが使用できる。価格は35mmと50mmが$4,000(約41万円)、85mmが$4500(約46万円)を予定している。
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またその他に、PLマウントからPLマウント、PLマウントからソニーEマウントへの1.6×エクスパンダーも発表した。これは、主にRED DRAGONセンサー搭載のREDカメラでフルフレームの6Kや8Kなどで撮影する場合などに用いられる。スーパー35mmサイズ用のPLレンズキヤノンEFマウントからEマウントへのエクスパンダーも検討中だという。
カールツァイス
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新たにライトウェイトズームレンズシリーズとして、21-100mmの「ZEISS Lightweight Zoom LWZ.3 21-100mm/T2.9-3.9 T」を発表。イメージサークルはスーパー35mmサイズ対応のシネマズームレンズながら、約5倍のズーム比と重量2.0kg、長さ226mmと非常に軽量コンパクトに設計されている。前枠口径φ114mm、0.8 Mギアピッチと、シネマレンズの基本設計に加えてCP.2/CZ.2と同様に、IMS交換マウント方式を採用。
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別売りの交換マウンとツールキットを購入すれば、ユーザーでも簡単にマウント変更が出来る設計で、PLマウントを始め、キヤノンEF、ソニーE、マイクロフォーサーズ、ニコンFへのマウント交換が可能。発売は来年1月からで、価格は$9,900を予定している。その他にもスチルレンズのMilvusシリーズから、新たに2.8/15と2/135の2本が新たに展示されていた。
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txt:石川幸宏 構成:編集部
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