txt:石川幸宏 構成:編集部
ソニー
IBCでは毎年、13ホールをほぼ全て使用して展示を行うソニーブース。この数年全ての展示会で「Beyond Definition」をメインテーマに掲げ、Image、IP、ワークフローという内容をサブテーマに4K、HDRに対応する新製品や新技術、最新ソリューションが展開されていた。
今年のブースデザインは、ブース正面に6月のinfocommで製品発表されたLED最新技術を搭載した高輝度なパネル“CLEDIS”で4Kサイズ(infocommの8Kの半分のサイズ)の画面が作られ、NABで発表された4Kライブカメラシステム「HDC-4800」「HDC-4300」などで撮影されたビーチバレーなどの最新映像が常時上映されていた。
その裏にIPのデータセンターを模したデータ部が設置され、ブース全体をIPで繋ぎ、リモートプロダクション、リモートシェアリングといったIPを中心に各ソリューションが繋がっているという構成・配置になっていた。
IBC2016では、メーカー各社とも4Kのスポーツライブ中継などに力をいれていたが、ソニーではそれを全面的に展開。さらに放送やインターネット配信でのライブHDR中継を実現するHDRコンバーターユニット「HDRC-4000」を発表。HDR変換以外にも既存のHDコンテンツやS-Log3以外の信号を、ソニー推奨の4K-HDR S-Log3/BT.2020フォーマットに統一処理して、用途に応じた変換処理で入力から配信までを効率化できる。
4月のNABで発表されたXDCAMの2/3インチセンサー搭載の最新機種「PXW-Z450」が装いも新たに展示。NAB時には収録と同時の4K/60p出力ができなかったが、後部出力端子部の改造により出力が可能となった。国内発売価格は350万円で、今年12月の出荷を予定している。
最近、マルチコントロールによるカメラ演出が、放送局やネット配信局でも需要が高まっている中、マルチパーパスカメラの新機種「BRC-X1000」は1.0型Exmor R CMOSセンサー搭載の旋回型カメラが登場。4K対応かつ1.0型大判センサー搭載ということで、これまでにない演出も可能だ。同型でHD撮影のみの「BRC-H800」もある。
さらに、重量400gと小型で35mmフルサイズ4K対応のウルトラモバイルカメラ「UMC-S3C」も展示されていた。また、HD対応でフリッカーフリー機能やITU-R BT.2020に対応の、6Uのラックマウントに装着可能で中継車用途にも便利な業務用有機ELモニター「BVM-E251」「BVM-E171」も発表した。これらはともに来年1月の発売予定。
今年8月後半に北京で開催された「BIRTV」で、1/3型センサー搭載のNXCAMカムコーダー「HXR-NX5R」2台と、コンパクトライブスイッチャー「MCX-500」との組み合わせによる、ライブ収録デモも行われており、コンパクトなライブシステムにも多くの来場者が興味を寄せていた。
パナソニック
NABですでに発表された、ハンドヘルドカムコーダーの新製品で業界最広角レンズの24mm光学20倍レンズを配した4K60pが収録可能な「AG-UX180」、広角24.5mm15倍レンズ・4K30pの「AG-UX90」のそれぞれ実機、そしてさらに小型のハンドヘルドカメラの新製品「AG-AC30」など、小型カメラの新製品を中心に実機展示を展開。
やはりIP化の波が激しい欧州向けの展示ということで、「ライブスタジオソリューション」「放送システム」「プロダクション4K制作」「ニュースワークフロー」「リモートカメラシステム」「新アプリケーション」をテーマに、4K(UHD)/HD/SDの同時出力が可能な、B4マウントレンズ対応の4Kスタジオハンディカメラ「AK-UC3000」と、1080pで4倍速撮影が可能なハイスピードカメラ「AK-HC5000」のシステムラインナップなどを展示。
同社でもマルチパーパスカメラの需要は大きく、今年11月に発売予定の新製品「AK-UB3000」を発表。その他、HDR技術やスポーツやライブイベントに向けた360°全方位カメラ、新時代のロボティックソリューションも展開。
参考展示として、次世代高速インターフェイスThunderbolt 3を採用したexpress P2ドライブ「AU-XPD3」をモックアップ展示。これは通信速度40Gbpsの次世代高速インターフェイスThunderbolt 3の採用で、4K/HFR(ハイフレームレート)映像記録用「expressP2カード・Bシリーズ」の持つ高速データ転送性能を引き出し、実効データ読み出し速度は最大10Gbpsの高速ワークフローを提供し、最大6台までのデイジーチェーンでの同時アクセスで、より高速なシステムの構築が可能になるという。これらは2017年度春の商品化を予定している。
シネマカメラのVARICAMシリーズでは、VARICAM 35の前方のカメラモジュール部分に直接V-RAW2.0で4K120pの非圧縮RAW収録が可能な、CODEX社製の専用レコーダーを装着した「VARICAM PURE」を発表。
ちなみにこのCODEX社のレコーダーユニットは、同時期に発表されたキヤノンのEOS C700用RAWレコーダー、以前からのARRIのARRI RAWレコーダーとも、収録用のSSDは同形のものを使用できる汎用的な仕様に設計されている。
池上通信機
創業70周年を迎える池上通信機。IBC2016では、2/3型4K CMOS 3板式システムカメラの「UHK-430」、31型の4K UHD LCDモニター「HQLM-3120W」などの新製品を発表した。UHK-430は4K高精細と3板式による高品質な色再現を実現した4K/HDマルチフォーマットシステムカメラ。汎用的な2/3型センサーとB4レンズマウントを採用し、既存のHDレンズが使用可能で、使い慣れたHDカメラと同様の運用性で4K映像制作を実現。新たに光学分離型構造を採用し、センサーユニット部分の延長や、運用に応じてオプションセンサーユニットへの交換が可能だ。
新開発のカメラコントロールユニット「CCU-430」とカメラの間の伝送路は40Gbpsの超広帯域を確保し、2/3型4K CMOSセンサ3板式のカメラとしては世界初のR:G:B 4:4:4の4K非圧縮信号伝送を実現。高精細で遅延のない伝送が可能だとしている。VFは用途に合わせて選択可能な3機種を新たにラインアップし、高倍率大型レンズが取付け可能なシステムエクスパンダ「SE-U430」も開発しており、スポーツ中継を始めスタジオ番組制作にも有用だ。
またNABにも出品していた8Kスーパーハイビジョンカメラ「SHK-810」、スーパー35mmフォーマットHDTVカメラシステム「HDK-97ARRI」、3G対応16bitフルデジタルカメラシステム「HDK-97A」などが展示されていた。
txt:石川幸宏 構成:編集部