4Kや8Kの放送が本格的になりつつあるが、こうした新たなトレンドを俯瞰するには、システムとしてすべての製品をそろえているソニーやパナソニック、グラスバレーのブースを訪れるのが一番だ。また、実際の放送に使われた映像はこうしたブースでも見ることができるが、NHKのブースではオリンピックなどのビッグイベントの映像を披露しているほか、実際の放送までの流れをつかむことができる。
4K/8Kは日本が先行して開発しており、NHK技研と共同で早くからカメラを開発していたアストロデザインや池上通信機、日立国際では8Kのカメラを見ることができるだろう。8Kに関しては今年のNABでもいくつかのメーカーが前面に出してアピールしていたことから、カメラやレコーダーだけでなく、本格的な運用ができるように周辺機器も充実してくると思われる。
主に放送以外のカメラではキヤノンやブラックマジックデザインあたりが業務用として手ごろなシステムを用意しているほか、後処理系ではMAを含めた老舗のAvidやライブスイッチャーなどをそろえている朋栄が見どころといえるだろう。オーディオ系ではSR関係の機材もあるがヒビノがマイクからミキサーなどを総合的に扱っており、全体を俯瞰できるのでオススメだ。なお、今回のInterBEEでは「INTER BEE EXPERIENCE X-Microphone」という特設コーナーができ、各社のマイクロホンを実際に視聴することができるようになっている。
グラスバレーは2014年にベルデン傘下に入ったことから、先にベルデン傘下に入っていたミランダとの製品融合が進んできている。また、それ以前にグラスバレーはカノープスを買収しており、ベルデンはケーブルからカメラやスイッチャー、編集システムなど様々なビデオ機器をそろえ、放送局に必要なシステムソリューションを提案。いち早く8Kに対応したノンリニア編集システムやHD/6倍速および4Kに対応したLDX 86 UniverseカメラとK2 Dyno Universeによるインスタントリプレイシステム、モジュラー式のビデオプロセスエンジンを採用した3G対応スイッチャーKarrera K-Frame Sのほか、DVCPRO HDをはじめ、XDCAM HD422、AVC-Intra、AVC-Ultra LongG、および4Kの収録/再生に対応して編集・送出用サーバーK2 Summit 3Gなどのシステムが見どころといえよう。
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Blackmagic Design (ブース#8216) |
クロマキー装置として定評のあるUltimatte社やオーディオミキシングコンソールなどのオーディオ機器のFairlight社の買収が発表されているが、すでにカメラやテレシネ、スイッチャーといった機器もラインナップされており、総合的にビデオ関連のメーカーとしての地位を築いているようだ。NABではBlackmagic Duplicator 4KやBlackmagic Video Assist 4K、Blackmagic Micro Converter、Blackmagic IP Video Strategyなど4K対応の新製品を発表・発売しており、すでにいくつかの製品はバージョンアップされている。製品開発のスピード感がある同社は目を離せない存在といえるだろう。
池上通信機は、早くから8Kのカメラ開発を行っており、昨年は8KスーパーハイビジョンカメラシステムSHK-810や55型8K LCDモニターなどを展示。また、2/3型4K 3CMOS 4Kシステムカメラやイーサネットに対応マスターコントロールパネルMCP-300、コンパクトスイッチャCSS-400のほか、H.265/HEVC対応エンコーダ内蔵1.2/2.3GHz帯デュアルバンド超小型FPU送信機PP-90などにも注目したい。
日立も8K単板カメラSK-UHD8060Bを開発し、8Kへの対応に先鞭をつけているメーカーの一つだ。また、メディアアセットマネジメント、トランスコーダー、ビデオサーバー、ファイル共有システム、レンダーファーム管理システムなど、放送局における基幹システムとなる設備機器も充実してきている。なお、昨年4KカメラSK-UHD4000や無人航空機ソリューションによる空撮や警備・監視システムを出展しており、自社の技術を応用した新たな展開にも期待したい。
朋栄は元々スイッチャーやスタジオシステム機器を中心としてきたが、最近では高速度カメラFT-ONE-LSを開発。2倍速で4K映像の収録が可能で、従来モデルに比べ暗部ノイズを改善し、中継での突然の雨にも対応した防水モデルなど、毎年グレードアップしている。こうした機材のほとんどはシステムとして展示されており、ビデオスイッチャーHVS-490やビデオウォールソリューションFLEXaVISIONなどと組み合わせた展示にも注目だ。そのほかにもフレームシンクロナイザ・カラーコレクタFA-9600、LTOマルチコーデックアーカイブレコーダLTR-200HS7などのシステム機器を出展する。
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パナソニック/パナソニックシステムネットワークス (ブース#6213) |
スタートした4K関係の機材としては、単板式4KスタジオハンディカメラAK-UC3000やインテグレーテッドカメラAW-UE70、4KライブスイッチャーAV-HS7300、4Kアーカイブシステム、4KタブレットTOUGHPAD 4K、レーザー光源プロジェクターPT-RQ13Kのほか、ネットワーク対応製品などが展示される。8Kに関しては、昨年試作品として展示していた8KのカメラやP2メモリーカード4枚に分散されて記録レコーダーがある。また、RAMSAブランドの製品として1.2GHz帯A型デジタルワイヤレスマイクシステムや高演色LEDスタジオ照明器具や調光システムなどが展示される予定だ。
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ソニー/ソニービジネスソリューション (ブース#4406) |
カメラとしてはデジタル一眼カメラα99 IIや、ISO409600の小型カメラUMC-S3C、中継用のスローモーション対応PLマウントカメラHDC-4800といった新製品のほか、IP伝送を使ったスイッチャーXVSシリーズなどのIP Live Production System放送システム、4K有機ELマスターモニターBVMシリーズを核にしたHDR関連製品のほか、ワイヤレス収録システムやワイヤレスマイクなどの各種オーディオ製品も展示され、番組制作に必要なソリューションを総合的に見ることができる。
8Kのマルチディスプレイや8Kシアターシステムを使ってリオデジャネイロオリンピックなどの8K映像を披露するほか、HDRにも力を入れており、テレビ放送だけでなくこうした最先端の映像技術をつかった様々なアプリケーションを迫力ある映像で視聴できる。また、シート状のディスプレイや22.2chのオーディオ、CG、タッチパネルを使用したデジタルサイネージ、空中裸眼立体映像、クラウドを活用した映像制作支援プラットフォームなどの音声&映像技術も披露されるという。
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ヒビノ/ヒビノプロオーディオセールスDiv./ヒビノインターサウンド (ブース#2208、3118) |
ヒビノはAKGのコンデンサーマイクロホンC314や、LexiconのイマーシブサウンドプロセッサーLexicon PROのQLI-32、dbxPAプロセッサーDriveRack VENU360、dbxの真空管マイクロホンプリアンプ、イコライザー、コンプレッサー/リミッターを搭載したdbx 676、Soundcraftはデジタル・ミキサーVi2000といった新製品を出展する模様だが、AKGのグースネックマイクロホンやB帯ワイヤレスシステム、MAではおなじみDK-TechnologiesやStuder、Soundcraft、DPA Microphonesなどの製品も出品される。
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INTER BEE EXPERIENCE X-Microphone (ブース#2000) |
今年から新設されたコーナーで、オーディオテクニカ、ゼンハイザー、ローランド、AKGのマイクなどの各社マイクロホンを試聴することができる。ローランドはCS-15RSといった自社製品のほか、9月から新規事業として海外ブランドの英Aston Microphones社のマイクロホンも扱うようになった。Aston Microphones社は昨年設立したばかりの会社なので、国内で実際に手に取れる場として貴重だろう。
※掲載しているブース写真は過去に開催されたイベントのものです。