4K/8K放送はすでにNHKがBS11チャンネルを使って8月1日に8K試験放送を開始し、リオデジャネイロオリンピックをライブで放送。CSは2015年からプレミアムサービス4K専門チャンネルによる放送がスタートし、2017年には実用放送を開始、2020年にはケーブルTVやIPTVを含めた本放送へと向かう予定だ。SDからHDへの移行時は解像度だけだったが、HDから4K/8Kでは解像度だけでなく、ダイナミックレンジや色域の拡大も行われ、いわゆるHDRへと進化する。
こうした流れの中で、カメラやレコーダーなどの放送機器のほか、伝送方法も様変わりするようで、従来の同軸ケーブルからIPを使った光ファイバーなどに替わっていくという。当然放送となるとこうした信号フォーマットや伝送方式に対応した規格の測定機材が必要になってくる。4K/8K機材の開発と並行してこうした規格も徐々に決まってくることで、対応した測定機器も新たな規格に対応したものがテクトロニクスやリーダー電子、アストロデザインなどから出てきている。また、4K/8Kに対応した圧縮コーデックのためのエンコーダーやデコーダー、それらを測定する機器も必要となってくる。
一方、民生機として作られたカメラやレコーダー、ドローンによる撮影機材などは性能もよくなり、放送局における番組制作に使われる事例も出てきている。オーディオ機器はビデオより先にハイレゾ対応になっており、カメラ機能を搭載したものやステレオマイクを装備したものなど様々な種類の製品が出てきている。このコースではそうした機材を中心にまとめてみた。
映像品質客観評価ソフトウェア「Hi-Definition Reference Software」シリーズには、HD対応のQT-3000シリーズのほか、4K対応のQT-4000シリーズがすでに用意されているが、8K画像のQT-8000が登場している。各種テストパターンのほか、静止画や動画の画像が多数収録されており、画質の評価や機材展などのデモ用として使われている。すでのこの会場でも同社の評価ソフトウェアを上映しているメーカーも多数存在している。
富士フイルムは9月にWOWOWにIS(Image Processing System)事業を譲受し、IS-100やIS-miniなどの映像色管理システムを手放してしまったが、1ファイル最大10GBに対応したクラウド型ファイル管理、共有サービスIMAGE WORKSやファイル送受信サービスSECURE DELIVERのほか、写真やフィルム、ビデオテープといった古いアナログメディアをデジタルメディアに変換するデータアーカイブサービスd:ternityなどがある。d:ternityは復元や修復などにも対応している。
NTTは4K伝送に欠かせないH.264/AVCエンコーダ/デコーダHC10000シリーズのほか、新しいメディアトランスポート規格であるMMTやハイレゾロスレスオーディオコーデックMPEG-4 ALS、H.265/HEVCでの4K映像変換を可能にした、映像コンテンツ用ファイルコンバートソフトウェアRealFeel FileConvert 4K、100デシベルの高騒音の環境でもクリアな音声を伝えるマイクシステムなどのほか、高臨場感メディア同期技術「Advanced MMT」を組み合わせて、選手の映像・音声だけでなく空間や環境の情報を伝送できるイマーシブテレプレゼンス技術Kirari!などが披露されるという。
ドローンで有名なDIJでは、ドローン開発で培った技術をもとにカメラやスタビライザーなどの撮影機器を開発しており、手持ち型ジンバルOsmoのアップグレードモデルOsmo+のリリースや、スマホ用スタビライザーOsmo Mobile、マイクロフォーサーズカメラZenmuse X5R搭載のDJI Osmo RAWなどを発売している。もちろんドローンもコンパクトに折りたためるMavic Proや空撮用ドローンだけでなく、農薬散布用のドローンなど、様々な業務用途へと使用業種の幅を広げている。いよいよ業務用機であるInspire 2の登場ではないかと予想される。毎年新たな製品を投入しているだけあって目が離せないメーカーだ。
ビデオ業界では波形モニターやベクトルモニターでおなじみのテクトロニクス。HDRやRec. ITU-R BT.2020 WCG(Wide Color Gamut)をサポートしたWFM/WVR8000シリーズ4K波形ベクトルモニター、ハイブリッドSDI/IPプロダクションワークフローおける直観的な解析が可能なPrism、タイム・コード、NTP(Network Time Protocol)、IEEE1588 PTP(Precision Time Protocol)などのタイム・リファレンス信号に対応したSPG8000A型マスターシンクゼネレーターなど放送に欠かせない測定器を出展。
アストロデザインは、8KカメラシステムAH-4801-B/AC-4802のほか、8K対応の55インチ液晶モニターDM-3815、8K SSDレコーダーHR-7518/HR-7518-A、8K対応カラーグレーディング装置VP-8427など、8K対応の機器をトータルで開発している。6月に開催されたプライベートショーで出品されていた試作品の8Kフルピクセルモノクロモニターなどもあり、8K最先端がここにある。
ティアックは様々な業務用音響機器を毎年出展。今年はアナログ出力カードが追加され、対応インターフェースがさらに拡充された1U 64chデジタルマルチトラックレコーダーDA-6400シリーズなどを展示。デジタル一眼カメラやビデオカメラなどと併用するオーディオレコーダーDRシリーズはチャンネル数やハイレゾ対応など機種も豊富。
インタビューマイクといえば、 SM63L-XでおなじみのSHURE。最近はMOJO(Mobile Journalism:モバイルジャーナリズム)向けにMOTIVシリーズMV88やMVLにも注目したいところ。
オタリテックは放送局用の国内外の各種オーディオシステムを扱っており、LAWOのオールイン・ワン・コンソールmc236やIP関連製品、RIEDEL Communicationsの音声/映像多機能インターフェイスMicroN、GENELECのモニタースピーカー3ウェイダブルウーファー仕様のアクティブモニタースピーカー8351Aといった新製品を展示。
楽器関係やオーディオ機器からスタートしたズームが、10年ほど前からオーディオレコーダーなどをてがけており、昨年のInterBEEではXYステレオとABステレオを切り替えられる新開発のマイクシステムを搭載したハンディビデオレコーダーQ4nを発表した。その後もハイレゾ音質で6チャンネル入力/8トラック同時録音が可能なマルチトラックフィールドレコーダーF4を発売したほか、GoogleとのコラボレーションによりGoogleのVRシステムJumpに対応したH2nハンディレコーダー用のファームウェアを発表している。今年もユニークな新製品に期待したい。
※掲載しているブース写真は過去に開催されたイベントのものです。