txt:西村真里子・編集部 / 構成:編集部

あなたの質問に答えます!

今年に入って感動したプロジェクトの一つが、Space X社のFalcon Heavyの打ち上げだ。デヴィッド・ボウイの曲に乗せてロケットが打ち上げられる。そのロケットの先には“Starman”が乗っている。宇宙へのロマンとデヴィッド・ボウイへのオマージュが重なり非常に感動したプロジェクトだった。世界中の多くの人が感動し、イーロン・マスクのプロジェクトへの期待をさらに高めただろう。

世界中を熱狂させたFalcon Heavyプロジェクトを遂行したイーロン・マスクがSXSW 2018スペシャルシークレットゲストで登場した。実に急な発表で前日にアナウンスされ12時開演のチケットを求めて明け方から長蛇の列が…。SXSWセッションの中でも1、2を争う人気となった。そのセッションタイトルは「Elon Musk Answers Your Questions!(イーロン・マスクがあなたの質問に答えます!)」だ。

Q:尊敬する人は誰ですか?
A:カニエ・ウェスト

Q:1日の睡眠時間は何時間ですか?
A:約5時間

Q:Netflixドラマ「シリコンバレー」のお気に入りエピソードは?
A:エピソード4

というカジュアルな質問からAI、火星移住計画などについてまで幅広い内容で80分間セッションが行われた。その、質問の一つに完成されたばかりの「“Falcon Heavy and Starman, Part 2”ムービーをどのような想いで作ったのか?」というのがあった。イーロン・マスクは以下のように回答している。

■Falcon Heavy and Starman, Part 2”

この映像のゴールは、人々をインスパイアすること。挑戦すること全てが可能だということを伝えたかった。

イーロン・マスクはビジネスマンとしても優れているが、クリエイティブ・ディレクターとしても非常に優れている。もちろん.クリエイティブ・プロダクションも入っていると思うが、センスが良い。宇宙、電気自動運転車、エネルギーなど大きなビジョンを持って取り組みつつ、同時に細部まで管理している。

Q:大きなビジョンを描きつつ、ディテールまで徹底する、そのズームイン・ズームアウトをどのように行っているのか?

正しい判断をするためには、ディテールまで把握してないと決断できない。素晴らしいチームがいるので大きなビジョンと、ディテールまでこだわることができるのだ。

イーロン・マスクは映像の力を使って新たな価値観を提案するのも優れている。2年前のSXSWで話題になったイーロン・マスクのプロジェクトの一つであるHyperloopはもちろん、SXSW 2018でも交通渋滞をなくすためのトンネルプロジェクトで新たな価値観を提案していたBoring Co.(日本語で言うなら“掘り起こし会社”)社で進めている、渋滞をなくすためにトンネルを掘り地下の乗合バスでスムーズな交通を実現するものである。このプロジェクトも映像で紹介された。彼のビジネスは映像の力を使って仲間を集め、前人未到のプロジェクトを進めている印象が強い。

■Boring Co urban loop system preview

イーロン・マスクの映像型創造性に注目

いうまでもなく優れたビジネスマンは想像力豊かなクリエイターでもある。火星移住計画にまつわる質問でQ:火星ではどのような行政になるのか?というものに対して、イーロン・マスクは以下のように即座に回答する。

直接民主主義(Direct Democracy)。あらゆる問題について誰もが意見言える世界だ。法律も常に変化してよく、60%の合意で法律が作成され、40%の合意で古い法律が無効になるというものが望ましい。

確かに、時代にそぐわないルールは常に変化していくのが望ましい。イーロン・マスクの話を聞いていると法律そのものも新陳代謝を活発にしていく仕組みができそうである。それにしてもイーロン・マスクは創造性が豊かだ。その発想性は文字で考えるとよりもやはり映像的な思考で広がっていうのだろう。突然の質問にも上記のように答えていく。

いつも心にチャーミングさを持とう

[SXSW 2018] Elon Musk & “My little buttercup” from the three amigos

最後にイーロン・マスクはさらにスペシャルゲストで現れた実の弟とともに彼らが子供の頃お気に入りだった歌を歌って退場していった。優れたビジネスマンはクリエイターでもあり、パフォーマーでもあるのだ。この愛くるしさが多くの優秀な仲間を惹きつけ大きなプロジェクトを成功させているのだろう、と退場するイーロン・マスクの背中を見ながら感じた。

txt:西村真里子・編集部 / 構成:編集部


Vol.01 [SXSW2018] Vol.03