txt:松盛俊道 構成:編集部
Video Assistにレコーダーを搭載。バックアップレコーダーとして活用可能
筆者は神戸や大阪を中心に、ブライダルの撮影や映像製作に携わっている。カメラにはキヤノンC300 Mark IIを使っており、様々な設定をカスタマイズできるところや、ブライダルの撮影に一脚と組み合わせた無茶な運用にも耐えて使用できるとこが気に入っている。今回のレポートで紹介するのは記事制作のためのセットアップであり、実際のブライダル現場とは異なることをご了承願いたい。
本稿では、C300 Mark IIとBlackmagicのVideo Assist 5” 12G HDR(以下:Video Assist)を組み合わせたBlackmagic RAW収録によるRAWスタイルワークフローを紹介する。Video Assistは、5インチHDRモニターとレコーダーを搭載し、4K60Pの収録に対応。入手しやすいSDカードが使用でき、待ちに待った仕様を実現している。
筆者はバックアップについて、ブライダルに限らずカメラ本体と違う状態のものを作れることは大変重要なポイントだと考えている。これは、単に逆REC対策ではなく、編集上、映像はRECトリガーを効かせた状態で収録して、音声がずっと通しで収録してある方が都合が良いこともあるからだ。
C300 Mark IIのRAW収録は、記録モードを「通常記録」に設定していることが前提となる。C300 Mark IIは特殊記録の記録モードとして「Slow&Fastモーション(CROP)」で120fpsも選択できるが、その場合RAW出力は「不可」となる。RAW信号の出力は「REC OUT端子」だけでなく、設定により「MON端子」からもRAW信号の2系統からRAW出力が可能だ。
実際のブライダルの現場ではレンズ交換はなるべく控えたいので、汎用性も考えてEF24-105mmを使用
C300 Mark IIのRAW収録は、記録モードを「通常記録」に設定していることが前提となる。C300 Mark IIは特殊記録の記録モードとして「Slow&Fastモーション(CROP)」で120fpsも選択できるが、その場合はRAW出力は「不可」となる。RAW信号の出力は、「REC OUT端子」だけでなく、設定により「MON端子」からもRAW信号の2系統からRAW出力が可能だ。
■記録モード(通常記録29.97P)
カメラ本体 | REC OUT | MONITOR OUT | HDMI OUT |
4096×2160 YCC 422 10bit | Blackmagic RAW 2160p29.97 DCI | Blackmagic RAW 2160p29.97 DCI | 1080p29.97 |
3840×2160 YCC 422 10bit | Blackmagic RAW 2160p29.97 | Blackmagic RAW 2160p29.97 | 1080p29.97 |
2048×1080 YCC 422 10bit | Blackmagic RAW 2160p29.97 DCI | Blackmagic RAW 2160p29.97 DCI | 1080p29.97 |
1920×1080 YCC 422 10bit | Blackmagic RAW 2160p29.97 | Blackmagic RAW 2160p29.97 | 1080p29.97 |
2048×1080 RGB 444 12bit | Blackmagic RAW 2160p29.97 DCI | Blackmagic RAW 2160p29.97 DCI | 1080p29.97 |
1920×1080 RGB 444 12bit | Blackmagic RAW 2160p29.97 | Blackmagic RAW 2160p29.97 | 1080p29.97 |
2048×1080 RGB 444 10bit | Blackmagic RAW 2160p29.97 DCI | Blackmagic RAW 2160p29.97 DCI | 1080p29.97 |
1920×1080 RGB 444 10bit | Blackmagic RAW 2160p29.97 | Blackmagic RAW 2160p29.97 | 1080p29.97 |
基本的に2項目目を使っている
Video Assistのセットアップ
■フィールドモニタークイックリリースプレートを使用
Video Assistのカメラへの取り付けは、Amazonなどで1,500円程度で購入可能なフィールドモニタークイックリリースプレートを使っている。複数購入してみると製品の精度にバラつきがあり、噛み合わせが硬いようにも思える。ただし、シッカリと固定してくれるので問題はない。
ハンドルユニットの1/4インチネジ穴にフィールドモニタークイックリリースプレートを固定し、Video Assistを搭載
フィールドモニタークイックリリースプレートのベース側
フィールドモニタークイックリリースプレートのプレート側
■お勧めできないモニターマウント
上記の写真右のようなモニターマウントは、注意が必要だ。ブライダルは動き回って撮影を行うので、カメラシューに取り付けるタイプでは緩んでモニター等が脱落しかねない。バッテリーを取り付けるとVideo Assist自体が重くなり、自重で角度が変わってしまうこともある。ただし、カメラを三脚に据えて使う状況では、それほど気にしなくても良いだろう。
■Video Assist本体側はマイクロBNC端子を採用
C300 Mark IIとVideo Assistをつなぐケーブルは、マイクロBNCの50cmタイプを使っている。なるべくスッキリと短くしたいので、C300 Mark II側のREC OUT端子はL型のプラグでコードをすっきりさせている。Video Assist本体のSDI端子はマイクロBNCで、従来5インチタイプのVideo Assistのコネクターとは互換性はない。
Video Assistはビデオソースの入力に接続。コネクタはマイクロBNCタイプ
C300 Mark II側はREC OUT端子に接続
左がマイクロBNCでVideo Assist用。右がDINで旧型のVideo Assist用
12:1で256GBのSDカードに132分の記録が可能
繰り返しになるが、ブライダル撮影ではVideo Assistをバックアップ用途としており、実際の現場では12:1の設定にて収録を行っている。256GBのSDカードで、132分の記録が可能。支度が終わったところから挙式終了まででカード1枚。披露宴が始まるところから、お色直しの退場まででカード1枚。再入場からお披楽喜まででカード1枚、予備でカード1枚という感じで運用している。
Blackmagic RAW 2160P29.97での収録時間(おおよその時間)
3:1 | 5:1 | 8:1 | 12:1 | Q0 | Q5 | |
256GB | 33分 | 55分 | 88分 | 132分 | 33分 | 132分 |
Blackmagic RAW 2160P29.97 DCIでは数分収録時間が短くなり、Q0、Q5はメディアをVideo Assistに挿入した際に表示された時間
収録に使うメディアは、メーカー推奨のメディアを使用するのが一般的だが、筆者はコストを重視してなるべく安価なメディアを使いたいと考えている。なので、今回はあえて推奨のカードを使用せず、Video Assist用に購入したものでないSDカードを使ってみた。
「そんなのを使ったんや…」と思われるかもしれない。手元にあったものだ
Blackmagic RAW 2160p29.97でのテスト結果
ソニー UHS-II/V60 |
レキサー UHS-II/V60 |
ADATA UHS-I/V30 |
|
3:1 | ○ | ○ | × |
5:1 | ○ | ○ | × |
8:1 | ○ | ○ | ? |
12:1 | ○ | ○ | ? |
表組の「?」の項目は、デジタルの「難しい」ところだ。同じカードを2枚所有していて、1枚はCard Fullになるまで収録ができるが、もう1枚はすぐに「警告」が出てしまうからだ(これは、Video Assistの設定で警告が出るか、REC停止となるかの変更ができる)。
だからこそ、メーカー推奨メディアを使用するべきなのだが、予算の関係でそうもいかないことも現実にはある。なので、こういったメディア上で紹介するべきではないのだが、「推奨SDカードであってもデータエラー等のアクシデントが起こる可能性はある…」ということを考えれば、たとえ推奨外のメディアであっても、テストをして問題なければ使うと筆者は考えている。言うまでもなく「自己責任」となる。
「どんな状況であっても100%安全などということはあり得ない」「推奨外の安いメディアが必ずエラーを起こすわけでもない」というわけではないが、だからこそ「バックアップをとる」ことが非常に大切だと思っている。エラーが起こってしまった時に、「カメラメーカーが悪い」「メディアが悪い」ではなく、「バックアップをとらないカメラマンが悪い」と考えている。
4K DCI Blackmagic RAWのテスト結果を見てほしい。少し違ってくる。
4K DCI Blackmagic RAWでのテスト結果
ソニー | レキサー | ADATA | |
3:1 | ○ | × | × |
5:1 | ○ | ○ | × |
8:1 | ○ | ○ | × |
12:1 | ○ | ○ | × |
今回のテストではADATAのカードは「使用不可」ではあるが、HDのProRes Proxyでは特に問題も起こらないので使っている
カードの信頼性を考えると、AngelBirdのSDカードを使うのも良いかもしれない。AngelBirdが良いのはエラーがあった場合、メーカーで解析しデータ復旧してくれるそうだ。
7800mAhタイプのバッテリーで約3時間20分の運用可能
次にVideo Assistのバッテリーを紹介する。Video Assistの電源は、ソニーNP-F式バッテリーと互換があり、BAXXTARの一般的なNP-Fタイプで7800mAhのものを使用している。筆者はなるべくバッテリーは早めに交換をする。例えば残量表示が「赤」となる前に、念のため…という感じで半分程度の表示になった時に交換している。しかし、実際にBlackmagic RAW 12:1 2160P29.97で長時間収録をやってみると、1本あたり3時間20分ほどの運用となった。余裕をみたとしても、2本のバッテリーで6時間ほどは運用できる計算になる。
しかし、バッテリーにも放電特性の違いはあるだろうから、同じ7800mAhのバッテリーであっても、必ずしも3時間もつわけではないと思う。出来ればNEPのLi-D770HEやLi-D970HEなども使ってみたい。
C300 Mark IIからRAW出力し、Video Assistで記録する
■C300 Mark IIの設定
実際の機器設定を紹介する。C300 Mark II、Video Assistともに難しい設定はない。
●01
C300 Mark IIのRAW OUTはCanon Log 2なので、それらを確認していくことになる。
●02.ガンマ設定
●03.解像度設定
●04.REC OUT端子設定
●05.カラースペース設定
●06.端子設定
●07.モニター端子設定
これでモニター端子からもRAWが出力され、RAW出力が2系統になる。
●08.HDMI設定
これは必要ないかもしれないが、ここにVideo AssistをつなぐとRECコントロールが出来るようになる。
●09.オーディオアウト設定
C300 Mark IIの音声収録は4chだが、RAW OUTは選択式となる。
●10.プロキシLUT設定
■Video Assistの設定
コーデックやビットレートを設定する。
トリガー等を設定する。
これでC300 Mark II側からVideo AssistのRECコントロールができるようになる。
これらの設定を行って分かったことは、RAW出力が2系統となることに加えて、カメラ側CFastカードのダブルRECをON、プロキシ収録をON、HDMI OUTにREC機をつなぐと、それら全てが同時に収録かつ、コントロールできるということだ。
バックアップが非常に大切であることを考えれば、とても嬉しく思った。2系統あるRAW出力にVideo Assist 12Gをつないで、1台をBlackmagic RAW 3:1、もう1台をBlackmagic RAW 12:1とすることも可能だ。
編集ツールでBlackmagic RAWを編集
Blackmagic RAWは、DaVinci Resolveは当然として、Adobe Premiere Proにも対応する。ただし、筆者の環境では、サポートしているはずのEDIUSで読み込むことができていない。グラスバレーのサポートに問い合わせてみると、「このBlackmagic RAWに関しては、今年中にリリース予定のEDIUS 9 アップデートで対応する」とのこと。ちなみに、パナソニックのEVA1のBlackmagic RAWも同様。
DaVinci ResolveでBlackmagic RAWを読み込んだところ
Premiere ProでBlackmagic RAWを読み込んだところ
筆者はグレーディングは専門外のため、ここでの解説は控えさせていただく。C300 Mark IIからVideo AssistでBlackmagic RAW収録したファイルを公開するので、各自で試してほしい。5秒ほどのカットだが、雰囲気は十分感じていただけると思う。
8種類の映像をダウンロード可能
Video Assistのディスプレイは2500nitにまで対応しており、屋外でも非常に見やすい。ただその分、熱対策も必要かと思う。光沢のある画面は見づらいと感じたので、100円ショップに売っているスマホ用の丁度よいサイズの反射防止フィルムを貼ってる。「100円ショップの物なんて…」と考える方もいるかも知れないが、十分使える。ただしサイズはギリギリで、2度ほど失敗した。貼る際は注意してほしい。
購入した4.8インチスマートフォン用液晶保護シート
Video Assistに貼った後の状態
最後に、RAWは自分にとって手の届かない存在だったが、手軽に扱えるようになったのは嬉しい限りだ。8mmフィルムとは意味が違うかもしれなが、RAWもフィルムのように親しまれる存在になって欲しいと思っている。
松盛俊道
1979年兵庫県姫路市出身。映像系の専門学校を卒業後、カメラマンとして映像製作に携わる。主に神戸、大阪で活動中。
txt:松盛俊道 構成:編集部