動画の世界に足を踏み入れるきっかけとなったGHシリーズを振り返る
GHシリーズは私の一番思い入れが深いカメラシリーズである。GHシリーズが無ければ私は動画の世界に足を踏み入れることは無かったと思うのである。
今でこそ動画機の代名詞的な存在のパナソニックGHシリーズだが、初代GH1からその歴史を振り返ってみたいと思う。一眼動画の黎明期であるGH2からGHシリーズにどっぷりはまった筆者であるが、少し懐かしみながらこの記事を書いていきたいと思う。
「LUMIX GH1」一台で写真やハイビジョン動画撮影が楽しめる
- 発売日:2009年4月24日
- 発売時の店頭予想価格:10万円前後(ボディのみ)
- カメラ有効画素数:1210万画素
- 主な記録画素数(動画):[16:9] 1920×1080 60i(17Mbps)他
記念すべきGHシリーズの第一弾。当時はキレイな動画も撮れる一眼カメラとして発売されたという印象。レンズ焦点距離を最大限活かした画角で撮影ができるマルチアスペクトセンサーを搭載して、16:9の撮影時でも水平方向の画角がスチルと変わらないのもこの機種の特徴である。
なお、マルチアスペクトはGH2と後のGH5Sにも採用されている。また、この機種はAVCHDではあるものの時間無制限で撮影可能であることも、その後のGHシリーズで継承されている。
「LUMIX GH2」フレームレートやビットを向上させるハックファームが話題に
- 発売日:2010年10月29日
- 発売時の店頭予想価格:税別10万円前後(ボディのみの)
- カメラ有効画素数:1605万画素
- 主な記録画素数(動画):
[16:9] 1920×1080 24p(23Mbps)
[16:9] 1920×1080 60i(17Mbps)他
このカメラの登場は、その後の一眼動画機としてのGHシリーズの方向性を決定づけた歴史的名機だと思う。それほどGHは動画撮影者に愛された機種だと思うし、私自身このカメラでだいぶ遊ばせて頂いた。そして私自身もこのGH2は今でも所有しており、たまに防湿庫から出しては撮影を楽しんでいる。
なぜ、GH2がそれほどまでに動画機としての名声を得た理由は、ひとえにハッキングファームウェアのお陰だろう。当然メーカーは非公式で、ハックファームを入れること自体は推奨されるものではないが、私も含め多くの人がハックファームを入れて高ビットレート化を行い高画質な映像を撮ることにハマったのだ。
筆者が比較的最近にGH2で撮影した映像を紹介したいと思う。
GH2の画質を語る上で動画界隈では有名エピソードがる。とある機材メーカー主催のブラインドテストでGH2はARRI ALEXAを始めとする当時の名だたるガチのシネマを抑えて好ましい画質としてNo.1の得票数を得たのである。
今時のミラーレスと比べるとダイナミックレンジも狭くノイジーで、高いグレーディング耐性があるとは言い難い。現に上の作例ではトーンを大きく弄ったために盛大なバンディングが出てしまっているカットがあるものの、この映像が撮れるミラーレス一眼を10年前に実現していたGHシリーズは今思うと恐ろしいと思う。
「LUMIX GH3」高ビットレートや高フレームレートに対応
- 発売日:2012年12月13日
- 発売時の店頭予想価格:税別13万円前後(ボディのみ)
- カメラ有効画素数:1605万画素
- 主な記録画素数(動画):
[16:9]1920×1080 60P(50Mbps IPB)
[16:9]1920×1080 24/30p(72Mbps ALL-I)他
GH2の動画機としての評価を受けてのことか、更に動画色を高めてきたのがGH3だと思う。このGH3が後のGH4、GH5、GH5S、GH5 IIのフォルムの原型となっている。なで肩で丸みを帯びたデザインで今見ても、この機種でGHは家電っぽいデザインのカメラから脱却した機種だと思う。
機能的にも、FHD60P撮影が可能で、ALL-Intraを始めとする高いビットレートで撮影できる「動画機」として多くの動画ユーザーに使われた機種だと思う。また、プロの現場でも多く使われていたと記憶している。
「LUMIX GH4」ミラーレス一で世界初の4K動画撮影を可能に
- 発売:2014年4月24日
- 発売時の店頭予想価格:税別17万円前後(ボディのみ)
- カメラ有効画素数:1605万画素
- 主な記録画素数(動画):
3840×2160 24/30p(100Mbps IPB)
1920×1080 60P 200Mbps(ALL-I)他
ミラーレスカメラとして初めて世界初の4K撮影を可能にした機種である。またバリアブルフレームレート(VFR)ではフルHDで96fps、24.00p記録でDCI4K撮影が可能である点も当時のカメラになかったものと記憶している。
GH4が登場するまではスチルと映像の解像度には大きな隔たりがあり、動画画質はスチルと比べて大きく見劣りするものだった。ところが、このGH4で初めて4K映像を見た印象はまさに「動くスチル」だったのだ。初めてこの機種を使った感想は「化け物」という印象で、今もその衝撃は忘れられない。
とにかくSDカードに高画質な4K映像が手軽に撮れる機種である。バッテリーの持ちも3時間以上、4K映像を撮り続けられるほどだ。
GH4で4K動画撮影。2160P(4K)再生で視聴してほしい
また、この機種は別売のアップグレードソフトウェアキー「DMW-SFU1」を購入することで「V-Log L」のプロファイルでの撮影が可能となっている。外部レコーダーを使用した際には10bitのLog撮影が可能であることから、本格的なグレーディングを行うことも可能だ。
「LUMIX GH5」4K60P動画記録/4:2:2 10bit 4K30P動画記録を実現
- 発売:2017年3月23日
- 発売時の店頭予想価格:税別24万円前後(ボディのみ)
- カメラ有効画素数:2033万画素
- 主な記録画素数(動画):
4096×2160 24p(400Mbps ALL-I)
3840×2160 60P(4:2:0 8bit 150Mbps IPB)
3840×2160 30p(4:2:2 10bit 400Mbps ALL-I)
3840×2160 30p(4:2:2 10bit 150Mbps IPB)他
世界初の4K60P撮影に対応したミラーレス一眼である。また、4K30Pでは4:2:2 10bitの内部記録が可能。読み出し速度も速く、ローリングシャッター現象も低く抑えられている。高解像アナモフィックモードや400MbpsのALL-Intra記録にも対応し、動画機の要素に業務機の要素が加わったカメラである。
また、FHDも画質もGH4から大きく改善しており、VFR(バリアブルフレームレート)を使用した際の画質も美しいものがある。
GH5はGHシリーズとして初めてボディ内手ブレ補正を搭載した機種であり、その効果は大きく手持ち撮影の領域を一気に広めた機種だ。
また、SDカードで手軽に10bitが撮れるため、この機種で10bitのグレーディングを本格的に始めたという方は多いと思う。
「LUMIX GH5S」デュアルネイティブISOテクノロジー搭載や高感度撮影に対応
- 発売:2018年1月25日
- 発売時の店頭予想価格:税別30万円前後
- カメラ有効画素数:1028万画素
- 主な記録画素数(動画):
4096×2160 60P(4:2:0 8bit 150Mbps IPB)
4096×2160 30P(4:2:2 10bit 150Mbps IPB)
4096×2160 24P(4:2:2 10bit 400Mbps ALL-I)
3840×2160 60P(4:2:0 8bit 150Mbps IPB)
3840×2160 30P(4:2:2 10bit 400Mbps ALL-I)
3840×2160 30P(4:2:2 10bit 150Mbps IPB)他
マルチアスペクトセンサでDCI4Kが60P記録可能。GH5Sの最大の特徴は広い画素ピッチによる高感度画質。特に夜間撮影での効果は凄まじく、マイクロフォーサーズの動画画質の可能性を感じた機種だ。
明るいレンズと組み合わせれば、撮れないシチュエーションはないと思えるほどの高感度耐性である。
最近、HDMI経由での動画RAWデータ出力に対応するVer.2.0アップデートプログラムが公開された。ATOMOS社製HDMIフィールドモニター/レコーダー「NINJA V」を用いてApple ProRes RAW記録に対応するなど、今なお大きく進化し続けている機材だ。また、この機種を境にパナソニックの最新カラーサイエンスが導入されており、映像内でLUMIX Sシリーズと混在させても違和感がない。
「BGH1」GHシリーズを継ぐ動画性能と信頼性・拡張性を実現
- 発売:2020年11月19日
- 発売時の店頭予想価格:税別25万円前後
- カメラ有効画素数:1028万画素
- 主な記録画素数(動画):
4096×2160 60P(4:2:0 10bit 200Mbps IPB)
4096×2160 60P(4:2:0 8bit 150Mbps IPB)
4096×2160 30P(4:2:2 10bit 400Mbps ALL-I, 150Mbps IPB)
3840×2160 60P(4:2:0 10bit 200Mbps IPB)
3840×2160 30P(4:2:2 10bit 400Mbps ALL-I)
3840×2160 30P(4:2:2 10bit 150Mbps IPB)
Netflixの認証を受けている唯一のマイクロフォーサーズカメラである。画素数が同じGH5Sから更に4K60P 10bit記録を可能にしているが、このカメラのコンセプトは他のGHシリーズとは少々異なっている。LANケーブル一本で電源供給が可能で、外部から複数台をコントロールすることを想定しており、昨今のライブ配信需要にマッチしている製品だと思う。
配信スタジオや個人の配信での使用は当然想定されるが、安定した遠隔操作が可能でオペレータがカメラに直接触る必要がないため、ライブハウスやカラオケボックスなどにこの機種を固定配置し遠隔操作で高画質な記録やライブ配信を売りにしてくるビジネスもあり得ると思う。
外部コントロールのためのSDK(Software Development Kit)が公開されており、このカメラをコントロールして独自の撮影フローを構築する事が可能となっている。
「LUMIX GH5 II」Cinema4K 60P 10 bit、V-Log L、高解像アナモフィックなどの動画記録モードに対応
- 発売:2021年6月25日
- 発売時の店頭予想価格:税込194,000円前後
- 2033万画素
- 主な記録画素数(動画):
4096×2160 60P(4:2:0 10bit 200Mbps IPB)
4096×2160 24/30P 4:2:2 10bit 400Mbps ALL-I)
4096×2160 24/30P 4:2:2 10bit 150Mbps IPB)
3840×2160 60P(4:2:0 10bit 200Mbps IPB)
3840×2160 24/30P 4:2:2 10bit 400Mbps ALL-I)
3840×2160 24/30P 4:2:2 10bit 150Mbps IPB)他
GH5の登場から4年。2021年6月25日に発売されるのがGH5 IIである。画素数こそGH5と同じであるが、BGH1を除くGHシリーズとして初めて4K60Pの10bit内部に対応したカメラである。使い勝手に関わる操作系に関してはLUMIX Sシリーズに搭載されている最新の機能を多く盛り込んだカメラだ。スポット輝度メーターや赤枠REC表示などを撮影する際に重宝するソフト的な機能向上に加え、レンズのリニア駆動にも対応しており、動画を撮影する際に「あったらよかったのに」を詰め込んだ機種だと思う。
また、ライブ配信機能を搭載しており、スマートフォンと連携することで屋外でも簡単高画質にライブ配信を行うことが可能である。
他のGHシリーズとは独自の進化を遂げたGH5 IIではあるが、4K60P 10bitの外部記録時における同時内部収録など、以前のGHシリーズでは出来なかったことが可能となっており、多くの使える機能向上がなされたイメージだ。
新開発のイメージセンサーと画像処理プロセッサーを搭載した「GH6」を開発中
GH5M2の発表と同時に開発発表がなされたのが新機種GH6だ。現状では公開されているスペックはかなり断片的だ。
公開されているスペック
- 発売:2021年内を目処に製品化
- 発売時の店頭予想価格:グローバルで2500ドル前後
- 4:2:2 10bit Cinema4K60P動画の時間無制限記録に対応
- 10bit 4K120pのハイフレームレート(HFR)や、バリアブルフレームレート(VFR)記録にも対応
- 10bit 5.7K60Pの高解像動画記録にも対応
水平解像度がGH5の5.2Kから増えている為GHシリーズとして最大の画素数になることは間違いないだろう。一方で極端な画素数アップをせず、比較的画素数は抑えているともいえるかもしれない。
VFRは他のミラーレスでは搭載されていないGHの特徴的な機能だ。任意にフレームレートを設定できるVFRが搭載され4K120pまで対応する事が名言されている。
また、5.7K60Pの高解像記録は動画制作時に4K解像度を下回らずにクロップすることが可能となり利便性を生むだろう。
発売は2021年中とアナウンスされており筆者も楽しみにしている機種の一つだ。
まとめ
今回は以前撮った作例とともにGHシリーズを振り返った。GH1からはじまりGH5 IIまで多くの機能を取り込み独自の進化を遂げてきたが、一貫しているのは連続記録によるこだわりである。そしてGH3から大きくボディを変えたことによる他のミラーレス一眼では実現不可能な「熱で止まることがない」ミラーレス一眼の座を不動のものにしている。
ミラーレスカメラを動画を撮るための道具として使う場合、熱で撮れないということが起こらないのは絶対的な安心材料である。
また、4K 10bit撮影ができるミラーレスも増えたといえ、未だに選択肢は少ない。こうした中でグレーディングに耐えうる素材を低価格で導入出来てしまえるのはなんともありがたい話である。
また、今までの動画機能強化一辺倒だったGHだが、GH5 IIではライブ配信機能という独自の進化を遂げており、これは昨今の高画質ライブ配信需要に対応する非常に面白い試みだと思う。実は筆者はGH5 IIを使い、出先で撮影映像をライブ配信を試してみたいと思い、ずっと気になっている製品である。この機能はもちろん一般公開配信に限った話ではない。
例えば、クローズドな配信を行い、高画質に両親に孫の姿をリアルタイムに見せてあげるということができてしまう。コロナ禍において高まった配信需要はなにもYouTuberなどに限られた話ではないと思うのだ。
そして、今年中に発売予定とされているGH6に関して。こちらはまだまだ情報が少ないが、多くの世界初を盛り込んできたGHシリーズのことだ。常に動画性能でアッと言わせてきたGHシリーズだけに、公開されたスペック以外のand more…に隠された何かがきっとあるのではないかと密かに楽しみにしている。
常に一眼動画の道を切り開いてきたGHシリーズのこれからの進化を、イチGHファンとしても期待せずにはいられないのだ。
SUMIZOON
2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行う。機材メーカーへの映像提供、レビュー執筆等。現在YouTube「STUDIO SUMIZOON」チャンネル登録者は1万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。