私たちのニューノーマルの生活には、ニューノーマルなサービスやプロダクトが求められる。既存の考え方を逸脱したアプローチが必要な時にスタートアップこそが産業のキードライバーになる。
今年のCES 2022は大企業の出展キャンセルが目立ち、出展企業も今までとは違う展示を行っていた。例えば毎年OLEDウォールで人々を圧倒させていたLGは、今年、QRコードだけで展示をするという簡素化で人々を驚かせた(実際はAR空間にLGお馴染みの大きなビジョンを実物大サイズで表示させる仕掛けで、展示会場をメタバースに持ち越したのは興味深い)。
この大企業エリアの優雅な空間の使い方に対して、CESのスタートアップエリアはコロナのソーシャルディスタンスもなんのその、スタート時から多くの来場者が詰めかけ19ヵ国800社のスタートアップの展示を楽しみにしていた。
いざ2022年のEureka Parkへ!
CES全体で2100社ほどの展示があるうちの40%ほどがスタートアップであるというのはなかなか興味深い。CES主宰CTA自身もスタートアップへの投資をするファンドを立ち上げており、積極的にテクノロジースタートアップの出展を支援しているのもここ数年のCESのトレンドである。
さて、今年はどのようなスタートアップを注目したのか?! Eureka Park800社のうち、これはすごい!と思った筆者の独断と偏見をいくつか紹介していこう。
ウクライナのスタートアップに興味津々。
意外に思われるかもしれないが今年はウクライナのスタートアップがとても面白かった。
まず17歳のスタートアップチームが作っている「Qudi」。 大学一年の彼らが作っているのはコミュニケーションを円滑にするマスク。マスク生活をいかに面白くするか?つまらない日常は自分たちで変えていこうと思っているんだ、というティーネージャーチームが「記事を書いてるなら是非載せてよ!」と積極的に話しかけてきてくれるのに嬉しくなってスタートアップ紹介の第一弾として紹介する。(スタートアップにとっては記者にこのような売り込みも大事である)
同じくウクライナの「EFFA」は海洋プラスティック問題を真摯に受け止め、トイレタリー製品を可能な限り紙で作り上げている。インダストリアルデザイナーを巻き込んだチームはデザインも、目指す方向性も時代にあっていて超応援したくなる。感動を伝えたら、歯ブラシを一本もらえた。大切に使いたい。
今年も健在!フレンチテック
さて、毎年フランス勢がフレンチテックブランドの名のもと大挙をなしてやってくるEureka Park。2年前には800社ほどの展示のうち半数近くがフレンチテックだった。だが、今年は135社といままでのフレンチテック群に比べると数が少ない。ただ、やはり今年も珠玉の製品群を展示していた。
パーソナルモビリティの「pickwheel」は自分の体重移動と足先の方向転換で移動ができる。日本のスタートアップ「WHILL」も今年は車椅子がパーソナルモビリティに変化する新商品でBEST OF CES INNOVATION AWARDを受賞していたり、他にも10社ほどパーソナルモビリティ展示があり私たちの生活に新たな「足」ができる可能性を感じる。
同じくフレンチテックで感動したのは「AUUM」のコップ専用食洗機。コロナになり衛生面を気にする人の増加と、ゴミ削減に関心が高い人々の増加を背景に、早い・綺麗・かっこいいを実現した食洗機を作ったのだ。オフィスなどのカフェテリアに設置してマイコップを10秒で洗う。
洗剤なくとも綺麗さっぱり洗い上がるのがメンテナンスとしてもありがたい。しかもこの「AUUM」の食洗機自体がかっこいいので、カフェテリアに置きたくなるようなデザインとしているのも憎い。環境問題に関心がある人々の心をデザインでくすぐるのがさすがフレンチテックである。
53社の出展を果たした日本のJ-Startupブース
コロナに負けず今まで以上の出展数を誇ったのは日本のJ-Startupブースである。数はもちろん「SkyDrive」の有人ドローンに実際に乗れる体験も作ることにより、常に人が途切れないブースとなっていた。
ユカイ工学の「甘噛ハムハム」は会期前のメディア向けセッションでも大人気だったのだが、コロナにより疲れが溜まっている人々への癒しとして、指を入れるだけでハムハムしてくれる癒しロボットは世界中の人を魅了する。実際に海外メディアでも筆者が数えただけで10社以上、掲載していた。
癒し系に続き、ストレス発散系のプロダクトも展示されていた。日本テレビとパナソニックがコラボした「MiRRORMOミロモ」は鏡が自分のストレス具合を判定し、そのストレスをモンスターとして表示、パンチするジェスチャーでストレスモンスターを撃退できるのだ。色々とストレスが溜まるコロナ禍の生活のなかでのストレス発散する際に楽しめるプロダクトだった。ちなみに、「MiRRORMOミロモ」によると、私はかなりストレスが溜まっていたようである。しかたない、いままでステイホームが続いていた中での急激に1日に20,000歩あるくCES生活に突入したので体がびっくりしているのだろう。
CES主宰CTAが会期前に行ったテックトレンドでも産業のドライバーはスタートアップにある、と語ったとおり、CES 2022の会場内で一番盛り上がっていたエリアはスタートアップが展示するEureka Parkであった。スタートアップのニッチでニューノーマルと思われるアプローチが今後の主流となっていく予感がする。