CINEMA EOS C70ユーザーも気になるCINEMA EOS R5 C の魅力を探る
EOS R5 C発表を聞き思ったことは、「おそらく比較的大きな機種になるだろうな」だった。私自身R5ユーザーでもあったが、R5でよく耳にする熱問題を解決するためにファンを搭載し、記録時間制限を撤廃するという話だったからだ。
ただし、この時点ではEOS R5 Cの潜在能力には気づいておらず、「R5にシネマのファーム入れたのか?」、「でも動画と写真のスイッチングが遅くなるのはいやだな」程度のものだった。非常にコンパクトな仕上がりになっていたこともあり、R5と入れ替える形でR5 Cを購入、発売日から今日まで様々な形でテストを繰り返している。
そんな筆者は、サラリーマンだが、副業で映像制作を行なっている。現在は犬と家族の撮影サービスを提供するほか、雑誌・アーティスト写真撮影・企業PV・MV制作など写真・動画の両方で展開している。
結論から言えば、よくここまでこのコンパクトなサイズで実現できたなという驚きと、CINEMA EOSのファームが入ることによる使い勝手の向上がこれほどまでとは思っていなかったということだ。R5の使いやすさ、とっつきやすさを維持しながらも、使い込めばカスタマイズで追い込むことができる奥深いカメラだと感じている。EOS C70ユーザーでもある筆者視点で書いてみようと思う。
EOS R5 Cってどんなカメラ?
R5で動画を多く撮影したいユーザーにとって不十分だった点を十分すぎるほど払拭したカメラと言える。冷却ファンが搭載され、30分という収録時間制限が撤廃されたことで、長時間収録を安定して行う必要があるクライアントワークやYouTube収録などにも安心して使えるようになった。
ちなみに私自身の経験でいえば、ワンカット撮影を行ったミュージックビデオ撮影においてR5の8K RAW収録による熱問題に直面し、結果的にALL-I収録に切り替えた苦い経験がある。熱停止リスク以外にもR5の場合、残り収録時間が熱影響で変動するという仕様であり、クライアントワークでは使いにくいと感じているポイントであったが、これが払拭された点は非常に大きい。
一見するとR5にCINEMA EOSファームが追加されただけのように見えるが、この恩恵は多岐にわたり、ユーザーが受けるメリットは非常に大きい。例えばR5では10bit撮影する場合、Log撮影が必須であり、このモードでは自動的にH.265のコーデックとなっていた。H.265はH.264と比較しても非常に高圧縮で、ファイルサイズが小さくなるメリットはあるものの、編集マシンに与える負荷は高く、proxy(編集用の軽いファイル)を作らなければ編集できないマシンも多いだろう。
もちろんR5でもproxyは作れるが、RAW動画モードのみ作成可能であり、結局編集ソフト上でproxyを生成する必要がある。これによって編集の手順が一つ増えるため、日々撮影・編集を行う人にとっては編集作業が高負荷となってしまうデメリットがあった。
CINEMA EOSのファームを搭載したことで、これらのデメリットは完全に消え、EOS C70が持っている長所と同様に、デュアルスロットを活用した各収録モードでのproxy生成、Gamut/Gammaの自由度(R5のような10bitならLog撮影という謎仕様もない)、XF-AVCコンテナーとH.264コーデックによる10bit素材の編集の軽さ、120fpsでの音声収録可能化などなど、二種類のファームを1台のカメラに搭載したことでユーザーが受ける恩恵は膨大だと感じている(後述のEOS R5 Cお気に入りポイントでさらに詳しく書くことにする)。
R5とは異なる部分
かなりコンパクトな仕上がりにはなっているものの、R5と比較すると冷却ファンが搭載された分、本体の厚みが増している。ちなみにモバイルバッテリーによるPD給電を行いつつ、8K RAW 60pという最も高負荷なモードを使ってCFexpress 325GBへ16分の収録を2回繰り返したが特に熱警告も出ず、メモリーカード一杯まで収録できた。CFexpressも発熱源として大きいはずだが、EOS R5 Cのエアフロー設計の影響なのか、上記収録後のCFexpressがそこまで熱くなかったことも印象的だった。Cinema EOS特有のカスタムボタンの大量配置もハードウェアの変更点としては大きく、使い勝手の向上に寄与している。
ソフトウェアの変更点は、やはり内蔵ファームが二種類になったことだ。これによって映像収録時の圧倒的な自由度がもたらされている他、ハード面での変更点であるカスタムボタンの大量配置と合わせて使いやすさが各段に向上している。
EOS R5 Cにおススメのレンズ
EOS C200をレンタルで使用したことのある筆者からすると、EOS C70のコンパクトさには当時非常に驚いたが、EOS R5 Cのコンパクトさは驚異的である。シネマ機を肩掛けのスリングバックに入れてお出かけ出来てしまうのだからすごい技術だなと、日々持ち歩くたびに実感している。日々持ち歩いて使えるからセッティングも追い込みやすく、手になじむのも早い。
コンパクトさ、軽さを活かしたセッティングという意味ではf4通しのレンズ群が想起される。記事を執筆するにあたって、キヤノンマーケティングジャパン様よりRF24-105mm F4、RF14-35mm F4をお借りすることができたため、早速EOS R5 Cとの組み合せで日々使ってみているが、予想通り相性抜群だった。
特にRF14-35mm F4はLレンズであるにも関わらず、軽量コンパクトでレンズ内手振れ補正も付いているため、EOS R5 Cで日常使いするには向いているレンズといえる。PHOTOモードでもう少し寄りたい場面では1.6倍クロップすることもでき、高画素センサーゆえクロップしても非常に高画質である。VIDEOモードも同様にS35mmクロップ、S16mmクロップ(FHD画質まで)モードが用意されており、クロップモードを上手く使うと画角の自由度はある程度確保できる。
RF24-105mm F4は軽量コンパクトでありながら5倍ズームで、映像制作においては非常に使いやすいレンズ。RFのLレンズの中では比較的安価なことも嬉しいポイントだ。2本とも甲乙つけがたい良いレンズだが、個人的には気軽に持ち歩くという意味でRF14-35mm F4がオススメ。普段は軽量なレンズを付けて、とことん使い込み、クライアントワークでは大三元レンズを使うなど、幅広い対応ができる部分がEOS R5 Cで非常に気に入っているポイントでもある。
EOS R5 Cのお気に入りポイント
ここからはEOS R5 Cのお気に入りポイントを、EOS C70との類似性や違いにフォーカスして記載する。
- カスタムボタン
EOS C70にも搭載されている機能だが、実はMenuボタンを押しながら各カスタムボタンを押すことで、いきなり割り当てができる。一旦割り当てた設定も使いながら変更するのが非常に簡単で、自分好みの設定に追い込みやすい - 0.71Xレデューサーが使える
EOS C70用に開発され、EFレンズ保有者にはとても嬉しいアイテムだった0.71Xレデューサーが、なんとEOS R5 Cでも使える。これによりS35mmモードでの撮影時でもフルサイズ画角を達成することができる。暗所撮影時にノイズが出やすい高画素センサーにとっては、明るさが1段分あがることもメリット大
- S35mmモードでは5.9KRAWになる
8K RAWだと編集マシンへの負荷が大きすぎたり、最終書き出しは結局4Kだったりとまだまだ8Kは必要ないという人も多いと思う。8Kまでは必要ないけどRAW動画はやってみたいという人にはオススメのモードでR5にはできなかったことである - 本体のコンパクトさ
RAW内部収録できる他の機種としてはR3、EOS C70があるが、いずれも重量や重心の問題から小型のジンバルには搭載しにくい。例えばDJI社のRS2とRSC2とで比較した場合、いずれの機種もRS2でなければ搭載が難しかった。しかしながらEOS R5 CはRSC2への搭載が可能で、全体の軽さは撮影時の負担に直結するため非常に嬉しい。過去EOS C70の長時間ジンバルワークが過酷だと想定し、あえて現場でR5やR3を選定したこともある
- スローモーション撮影のしやすさ
EOS C70ではLong GOP時にしかできなかった、カスタムボタンによる通常撮影・スローモーション撮影の一発切り替えが、EOS R5 CではALL-Iでも可能となった(CFexpress採用の恩恵)。また、C70同様に120fpsでも音声を収録可能 - 音声収録4ch可能
マルチアクセサリーシュー経由の音声入力と3.5mmプラグ経由のワイヤレスマイク、あるいは本体内蔵マイクなど、どのチャネルに何が収録されるか自動選択されるという点において自由度はEOS C70に劣るものの、音声収録も自由度が高い
EOS R5 Cの弱点
シネマ機にAFが付いていることで非常に使い勝手がよくなっているが、やはりスチル機に比べると動画モードのAF速度、暗所や逆光環境における挙動は若干劣るように感じる。
また、コンパクトさを達成した故の弱点となってしまったが、LP-E6NHによる動作時間は決して長いとは言えない。一日出かけて撮影する場合は予備バッテリーを最低でも4~5個は持ち歩くことになるだろう。
個人的に残念だったのは動画と写真の切り替え速度である。私自身は犬と家族の撮影サービスをワンオペで行っていることもあり、同じシーンを写真でも動画でも撮影しておきたいという瞬間がある(しかも1台のカメラで)。EOS R5 Cの場合、切り替えに概ね6~9秒ほどかかるため、シャッターチャンスを逃してしまう可能性が高い。
まとめ
EOS R5 Cのシネマカメラとしてのコンパクトさに非常に驚いたが、同時にEOS C70にRAWが実装されることが発表され、ユーザー側は良い意味で非常に選択が難しくなったと思う。RAWを内部で長時間安定収録できるミラーレスという意味ではR3も存在するし、嬉しい悩みだ。写真がメインなのか、動画がメインなのか、あるいは両方なのか、両方の場合切り替えもかなり頻繁にスピーディに行いたいのかなど、ユーザーの用途で選択することになると思う。
EOS R5 Cは非常にコンパクトでありながらも、ファームウェアを二つ搭載したことによって、写真にも動画にもとことん掘り下げて、プロユースとして使える稀有なカメラとなっているが、どちらかといえば動画のウェイトバランスが大きい方におススメ。
映像制作においてはコンパクトにも運用できるし、リグを組めば拡張したスタイルでも運用でき、非常に幅広い使い方ができると感じている。シネマ機でありながらもR5と同じように気軽に持ち歩ける敷居の低さもあって、これからもっと動画を本格的に撮影したいと思っている人にはぴったりの一台と言える。
OKAPI(OKAPI story box)
平日はサラリーマンとして働く傍ら、2018年より副業にてクリエイティブ活動を開始。現在は犬と家族の撮影サービスを提供するほか、雑誌・アーティスト写真撮影・企業PV・MV制作など写真・動画の両方で活動を展開している。