さくら映機:新製品「ALBA e tramonto」初展示!サーバー活用で遅延が少なく、効率的な共同リモート編集を実現[Inter BEE 2022展示レポート]

さくら映機のブースでは、バックエンドサーバーとクライアントデバイスから構成される、新しい概念の映像制作プラットフォーム「ALBA e tramonto」(以下、ALBA)のコンセプト展示が行われていた。

ALBAはオンプレのバックエンドサーバーと、実際に操作をするクライアントPCをネットワークで繋ぐ。素材とプロジェクトはサーバー側で管理され、クライアント側には自社開発の映像編集ソフトがインストールされている。クライアントの再生制御や編集操作に呼応し、ALBAサーバー側でタイムラインの演算処理を即座に実行。その結果の映像をリアルタイムに圧縮転送し、クライアントのプレビューウインドウに表示することで、ストレスのない編集操作感を提供している。また、高負荷な演算処理をサーバー側で負担することにより、処理性能の高くないノートPCがクライアントとして利用可能で、さらに従来のノンリニア編集機を超える性能を実現している(国際特許申請中)。

4K4面マルチのリアルタイムリモート編集

港区の本社とインターネットで結ばれた実機展示では、ノートPCによる4Kプロジェクト4面マルチのリアルタイム編集(素材:XAVC class300)が展示されていた。また、リモート編集の課題であるSDI外部モニタリングについても、専用に開発されたThunderbolt接続の12G-SDI対応出力ボードでリアルタイムにプレビュー可能だ。

ALBA専用のThunderbolt接続の12G-SDI対応出力ボード

一般的なクラウド編集はPC画面全体を転送するため、操作が若干遅れたり、映像がコマ飛びする場合もあるが、ALBAのリモート方式では編集ソフト自体はクライアントにインストールされているため遅延がなく、また、映像はインターレースまで正しく描画し、リップシンクずれが起らない設計となっている。

リモート編集として10Mbps程度に帯域を指定することで(HD)、低速なネットワーク回線でも利用可能で、ビットレートを上げていくとロスレス画質まで柔軟に対応。展示ブースでは40Mbps程度の通信速度で4K60P 10bit HDR映像が再生されていた。

共同編集による効率的な制作を実現

バックエンドサーバーにプロジェクトが管理されていることで、複数人による共同編集が可能だ。共同編集としてプロジェクトをオープンし、タイムラインの随時更新を選択すると、他の共同編集者の編集操作もリアルタイムに反映されていく。これにより編集だけでなく、コンテンツ制作の進捗管理としても活用可能。共同編集者はプレビューのみの資格の他に、メイン編集者から指定したシーケンス、トラック、クリップに対して編集できる権限を適宜渡すことができる。

メイン編集者が編集パートナーに作業を割り当て
作業を割り当てられた編集パートナーの画面上では作業可能な部分の色が変わっている(クリップがハイライトしている)

特定トラックにテロップを乗せる作業だけ他の人に任せたり、作品の後半を編集しつつ、前半で他の人がカラーグレーディングを始めるなど、様々な共同作業が可能となる。

試写システムはクライアントごとに受信ビットレートを変更可能

また、シーケンス(タイムライン)はプロジェクトから書き出すことなく、複数端末にリアルタイムに映像を送ることができ、映像を受ける端末では試写用のアプリケーションで再生できるため、複数の遠隔地での試写が可能となる。必要があればその端末から出力ボードを使って外部モニターへの出力もでき、シンプルなプレイヤーとしても活用可能。編集ソフトと送出アプリは同時に起動可能で同一シーケンスもオープンできる。ブース展示では送出アプリで試写中のシーケンスを、試写を止めることなく編集ソフトで修正を行い、即座に更新し試写用のアプリで確認をするというデモが行われていた。

編集ソフト、試写用ソフト共に、フィールドの表示も完全に再現されているので、奇数フィールドでカットがわりしている場合などの確認も問題ない。

フィールドを正確に再生するリモートテクノロジー

ALBAサーバーに接続する端末の数は、2K編集、4K編集など作業内容によってサーバー側の構成を変更することができるため、クライアントの接続が数台の規模から100台以上が接続する構成まで対応できるとしている。

ALBA e tramontoは、コロナでリモート編集の需要が大きくなり開発をスタートさせたことで、在宅勤務など様々なリモートワークに対応するソリューションとなっている。製品化は2023年を予定している。