キヤノン:IPを活用したリモートプロダクション展示や、XR映像体験を実施[Inter BEE 2022展示レポート]

キヤノンブースでは、放送用レンズ、業務用ディスプレイ、リモートカメラなどの放送用機材だけでなく、XR映像体験、8K VRコンテンツなど、多様な映像制作ソリューションが展示されていた。

評価の高い放送用レンズ「CJ20ex5B IASE S」

2020年2月に発売され、キヤノンの放送用レンズの中でとても人気の高い放送用レンズだ。それ以前はより広角側、望遠側のレンズはあったがワイド端5mmから100mmまでの20倍という同レンズによって中域がカバーされ、ロケ先などで同レンズ1本でカバーできるシチュエーションが多く、キヤノンのハンディレンズでは最も売り上げているレンズだという。また、ロケだけでなくクレーンでの使用でもその焦点距離の範囲の広さでニーズが高い。

フルサイズおよびラージフォーマット対応の「FLEX ZOOM LENS」シリーズ

FLEX ZOOM LENSは今年発売された新しいレンズのシリーズとなり、「CN-E20-50mm T2.4」と「CN-E45-135mm T2.4」の2本がラインナップされている。

それまではシネマのズームレンズはスーパー35mm対応のレンズ群だったが、FLEX ZOOM LENSシリーズで初のフルサイズおよびラージフォーマット対応マニュアルズームレンズがラインナップされた。20-50mmと45-135mmという2本のレンズで単焦点レンズ6本分をカバーできるので、現場でのレンズ付け替えの頻度を減らすことができるだろう。

2本とも全域でT2.4という明るさで、焦点距離を変えてもFドロップはない。また8Kカメラ対応の光学性の高さもポイントになっている。また、2本のレンズの形状や重さがほぼ同じなので、レンズ交換の際など、バランス調整を気にする必要もないだろう。

シネマレンズと放送用レンズの運用性を兼ね備えた「CINE-SERVOレンズ」シリーズ

スーパー35対応シネマレンズだが、放送用レンズと同じドライブユニットがついており、ズーム、フォーカスを放送用レンズのように動かすことができ、シネマレンズの質感で放送用レンズの使い勝手を実現している。

同シリーズのCN8x15 IAS Sは、ワイド端15mmから120mmまでの8倍で、以前のレンズがワイド端が17mmだったことから、ドキュメンタリーでの屋内撮影などでもう少し広い画角が欲しいというニーズに応えて開発された。キヤノンのシネマレンズは全てカラーバランスを統一しており、肌の色が良く映るように設計されているがCINE-SERVOレンズシリーズも8K対応の光学性能と共に、その質感を享受できる。

高画質と運用性を追求したディスプレイ「DP-V2730」

今年9月に発表された27型業務用4K HDRディスプレイだ。27型は業務用ディスプレイとしてはキヤノン初となる。業務用ディスプレイは24、25型の次は30型を超えるサイズになることが多いが、27型は24型の運用性をなるべく維持しながら画面を広くするというコンセプト。ディスプレイに4面を映すような場合には画面サイズが大きいため、24型よりも各画面をより細かくチェックが可能。また、設置性も重要視しており24型よりもベゼル部分を細くして筐体がなるべく大きくならないよう配慮し、奥行きも同様になるべく厚くならないよう設計された。

画質に関しては、2022年2月に発売された「DP-V1830」と同じラインアップで、一貫した共通設計思想のもと、さらなる高画質化を実現。HDR映像制作にも適した、全白1000cd/m2、全黒0.001cd/m2表示となっており、幅広い映像制作シーンで活用できるだろう。

高画質と高精度AFを兼ね備えた「UHD DIGISUPER 122AF / UJ122x8.2B AF」

2018年に発売されたUJ122×8.2Bは倍率、光学性能共にキヤノン最高峰を誇るフラッグシップレンズだが、同レンズにAF機能がついたUJ122x8.2B AFが今年4月に発表された。

放送用の箱型レンズでAF機能がついているのは非常に少ないが、レンズが4K対応になってピントの確認が難しい場面もあるため、カメラマンのフォーカシングをサポートする機能という位置付けだ。AFは常にAFが働くフルタイムモードと、フォーカスデマンドのスイッチを押している間のみAFが働くパートタイムモードがある。スポーツ系などで威力を発揮するだろう。

AF機能のデモとして、ブースから離れた場所にある会場の2Fデッキ部分に設置されたランタンにフォーカスを合わせていた

基本性能を向上させた「XAシリーズ」

XAシリーズは放送局での取材用、報道用、そしてプロの映像制作者に選ばれてきたビデオカメラだ。今年9月にラインナップが刷新され、最新モデル3つ「XA75」「XA70」「XA60」が発表された。

XA60はエントリーモデルで、1/2.3型センサーを搭載。より小型なので機動性に優れ、光学20倍ズームを実現している。XA70と75は1.0型センサーを搭載。XA60よりも画質や質感表現を重視するニーズに合うだろう。ズームは15倍で、XA60よりも広角の25.5mmスタートとなっている。XA70とXA75の違いはSDI端子の有無だ(XA75はSDI端子搭載)。

XA75にはSDI端子が搭載されている

3モデル共に4K30Pに対応。また、UVCにも対応しており、PCとUSB接続することでWebカメラとして使用可能だ。

ハイエンドなニーズに応えるリモートカメラの新製品「CR-N700」

9月に発表されたリモート(PTZ)カメラの最新機種。既存モデル同様、3G-SDI、HDMI、IPに加え、12G-SDIにも対応。画質的にはHLG PQ HDR、4K60P 4:2:2 10bitに対応した。

12G-SDIと3G-SDI端子を搭載

AFは瞳AF、頭部検知機能を搭載。スポーツなどの撮影でも粘り強くピントを追従する。画面表示では、OSD(オンスクリーンディスプレイ)情報表示機能が搭載された。ハードコントローラでの操作時に、様々な情報が画面に表示して確認できる。

また、12G-SDIと3G-SDI両方の端子を使って全体の映像の他に画面の一部をクロップした映像を別途出力可能。1台のカメラで2つのアングルが撮れるため、寄り、引き2パターンの映像が欲しい場合などに便利だろう。

クロップ機能を使って2画面を出力

様々なVRコンテンツが視聴できる「EOS VR SYSTEM」コーナー

EOS VR SYSTEMコーナーでは、「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」を装着したEOS R5 Cで撮影されたVRコンテンツが実際の撮影システムと共に展示されていた。

キヤノン:8K VRコンテンツ視聴や、3D VRコンテンツを展示。EOS VR SYSTEMで臨場感のある映像体験を提供[Inter BEE 2022展示レポート]

EOS R5 Cを4台リグに装着して撮影した360° VRコンテンツや、180° VRミュージッククリップのコンテンツ、そして、先進映像協会日本部会(AIS-J)が主催する「ルミエール・ジャパン・アワード(Lumiere Japan)2022」のVR部門にてグランプリを受賞した「VR:ばってん少女隊 Special VR Live 2022」を、8K対応のVRゴーグルを使って8Kコンテンツを視聴できるコーナーが来場者の注目を集めていた。