体験やそれに伴う表現の機会も復活した2023

行動制限緩和が始まった2023年は、当然のことながら人々の活動は再びアクティブになるし、旅行や外出などの体験やそれに伴う表現の機会も復活している。また、コロナ禍でストリーミングコンテンツは浸透し、オンラインでのコミュニケーションも当たり前になった。デジタル環境やコンテンツ生成に対して、エンドユーザーの目が非常に肥えたことも事実だ。今回、各社のプレスカンファレンスやブースでも、コンテンツを生み出すための商品をよりハイクオリティにアップデートした発表や、その魅力を最大限に生かすサービスなどが数多くみられた。その一部を紹介したい。

慣れ親しんだコンテンツ作りが大幅にアップデートしている

今回のCES2023では、日本企業を中心に、デジタルカメラや関連機器の新製品発表や展示にかなり力が入っていた。ドローンなど周辺機器の多様化や、ゲーム実況などの配信ニーズの増加、再び公開数が増えた映画・ドラマなどの制作現場での魅力的な映像探求など、デジタルカメラに求められる要素は大幅に増えたといえる。配信や撮影が身近になった一方で、スマートフォンでは飽き足らない層も新規参入するため、初心者からプロフェッショナルまでユーザーのニーズも幅広い。各社のカンファレンスの発表はもちろんプロフェッショナル仕様の紹介が中心になったが、ブースでは利用シーンやニーズへの幅広い対応像が提示されている。

日本のカメラメーカーが魅せた体験を促す展示

パナソニック

パナソニックは、フルサイズミラーレス一眼カメラの新製品「LUMIX S5II/S5IIX」を発表。プレスカンファレンスでは、昨今「撮ってすぐ出す」ことが求められる動画の配信やそれに伴う編集、自分ひとりで歩きながら撮影を行うシーンなどに応じて搭載された「像面位相差AF」や「新開発の24.2M フルサイズセンサー」など機能やスペックを紹介。

ブースの方では、ダンスパフォーマンスが行われるエリアの前にあり、背後にはずらりとレンズが並んでいた。

今回発表されたフルサイズミラーレスカメラのLumix S5IIは、使い慣れていない人でも、ダンスにカメラを向けて高精度なオートフォーカス機能を触って試すことができる。「動的な対象を撮影する」が伝わる展示だ。

LUMIX S52Xは、今回は、モック展示であったが、動画に特化し手軽にライブ配信を可能にするIPストリーミング機能もある。自らブランドロゴを黒塗りにしている部分も日本メーカーでは珍しいことだと言える。

ニコン

今回、体験してもらう展示は、Nikonが特に力を入れていた。実際にモデルに立ってもらい、映画「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」にも使われた機材や望遠レンズなどを試せる。

動画性能もさることながらZ 9の静止画も美しい。花びら一枚一枚や髪の毛一本まで合わせた時の美しさを、いい位置で味わえる。

ソニー

ソニーは、映画「トップガン マーヴェリック」で大活躍したシネマカメラVENICEや、Air Peakなど、高性能かつプロフェッショナル仕様のカメラを紹介。職場で「追いトップガン」が流行ったきっかけでもある、峡谷シーンのメイキングはかなり熱い。

その一方、多彩なV-logカメラZV-1のラインナップも紹介。ニーズが多様化したカメラユーザーをフラットに尊重し、それぞれの利用シーンを見せている展示で「こう使ってみようかな」というアイディアが浮かびやすい。

「撮る」だけじゃない、オンラインプラットフォームに参加する人を応援する

先ほどの展示の中でも「撮ってすぐ編集する」「歩きながら撮影する」等のニーズを満たすものが数多くあったが、オンラインプラットフォームに参加する人を応援するアイテムやサービスも発表されていた。

キヤノンは、M.ナイトシャマラン監督のスリラー作品への没入体験や撮影技術が目を引く中、ゲームの実況など、カメラのスイッチングや2画面を使う、配信に特化したユーザー向けのプラットフォーム「EOS WEBCAM UTILITY PRO」も展示していた。

カメラを最大5台つなげてもスイッチャーが不要で、オンライン配信をする人の手元の操作を減らすという意味ではかなり後押しになる展示だった。

筆者が画期的だと感じたのは、Sonyのモバイルモーションキャプチャー「 mocopi™(モコピ)」だ。

MR(Mixed Reality)を活用した2.5次元コンテンツなどにモーションキャプチャーを利用する際も、全身の動きを補足する撮影設備はそれなりに大きい。また、個人がVturber活動をする際も、動きを同期し反映できる範囲は限定されやすい。Bluetoothとスマートフォンで完結でき、2次元のキャラクターに反映するといった作業が、個人単位でもぐっと身近にすることができる。何より、小さくて軽くてかわいい。屋外で見てもまさかモーションキャプチャーしているとは思えないデザインだ。

担当者の方に実際に身に着けてもらった。マグネットで設置しベルクロで止められるので準備の手間も少ない。 VR空間でのチャットやVTuber活動などを気軽に、もっと身近にできるよう応援するアイテムといえる。

コンテンツを生み出す技術のアップデートがもたらすもの

オンラインでもオフラインでも、人がアクティブに活動していけば、コンテンツが生まれ発信をする裾野も広がっていく。今回、各社が強みとしている商品を多様なニーズに合わせて大幅にアップデートし、利用シーンを提案したことは、コンテンツを生み出す多くのユーザーを後押しするはずだ。今後、これらを使った、よりリッチなコンテンツに出会える機会はもっと進むのではないかと感じている。