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フリーランスとして写真・映像を手がけるようになってまだ間もない頃、iPhoneの写真画質に納得できずにモヤモヤを抱えていた時に手を出したのが、HUAWEIがLEICAと共同開発した1200万画素のデュアルカメラを搭載した「HUAWEI P9」でした。

2016年6月の発売当時、スマホとは思えないレフ機やミラーレス機とも異なる個性を持った写りにすっかりこころを奪われたのを覚えています。

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HUAWEI P9で撮影した写真
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DJIはいうまでもなく、数々の中国メーカーが台頭する中で近年特に注目していたのがXiaomiでした。HUAWEI P10、P20と使い、iPhoneに戻った後も、どこかで画質や撮影体験に納得できずにいる自分が久しぶりに沸き立ったのが、ライカ クアッドカメラシステムを搭載した「Xiaomi 14 Ultra」発売のニュース。当時のP9で感動したあの感覚が、LEICAとXiaomiの掛け合わせなら蘇るんじゃないかと思ったわけです。

期待を胸に作例やレビューを見聞きしていたところ、Xiaomi 14 Ultraを2週間ほど試用させていただく機会を得ました。写真の描写はすでに評判の通りなので主に動画機能を中心に体験し感じたままの素直なレポートを載せたいと思います。

スマホを越境する14ストップのダイナミックレンジ

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先に結論的なことを申しますと、最大で14ストップあるダイナミックレンジを生かしたLOG撮影も素晴らしいのですが、一番魅力に感じたのはDolby Visionでした(Dolby Visionでの撮影時のダイナミックレンジは12から14ストップ程度になるようです)。

撮影する環境を選べば、LOG撮影でもかなり画質を追い込めて、作品作りに活かせるかもしれないのですが、公式のLUTもまだ配布されていないようでグレーディングに結構な時間を費やすことに。そうなると、個人的には運用する上でのハードルは少し高くなります。

DJIの「Osmo Action 4」や「Osmo Pocket 3」も、公式のLUTがあるので撮影後のグレーディングもスムーズ。そうすると「せっかくだから、LOGで撮ろう!」という気持ちにもなりやすいので、Xiaomiにもぜひ近いうちに公式のLUTを出してほしいところですね。

もちろん、Xiaomiもこの点をケアしており、自分で作成したLUTをあらかじめ本体に複数読み込ませることで、LOG撮影時にLUTをあてた状態で仕上がりを確認しながら撮影できます。撮影素材にLUTを焼き付けた上で保存することはできませんが、このカスタムLUTを撮影時に反映してくれるのはとてもありがたい機能といえます。

試用期間中はわたくしも急ぎ作成したXiaomi 14 Ultra用のLUTをあてながら、「プロ」モードでLOG撮影をしました。ただ、ちょっとクセの強いLUTを最初に用意してしまったので、標準的なものと両方用意して撮影に臨めばよかったなと反省しています…。

話を戻しまして、スマートフォンというコンパクトさを活かした撮影の利点から考えると、目の前の光景をそのままに美しく高画質で収録できるDolby Visionでの撮影を軸にXiaomi 14 Ultraに搭載された4つのレンズの特性を活かすのが最終的には良いのかな?と感じました。

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Dolby Visionで撮影された素材はギャラリー表示の際にアイコンが表示されます

67mm径のフィルターが運用可能になる専用ケースとグリップ

LOGやDolby Visionに最初に注目しましたが、Photography Kitに同梱される専用のグリップについても紹介したいと思います(現在は購入特典として全員にプレゼントされています)。

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専用ケースのみ装着
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フィルターアダプター経由で67mmのVNDをマウント

専用のスマートフォンケースにさらに被せることで装着が可能なこのグリップ、本体との統一感のあるデザインはプレミアムコンパクトカメラのような完成度です。

この専用ケースをつけると同梱のアダプターリング経由で67mm径のフィルターを取り付けることができます。67mmのフィルターはメインで運用している人も多いフィルター径のひとつではないでしょうか?状況によってNDフィルターやミスト系フィルター・PLフィルターなど使い分けることが可能になる、とてもありがたい仕様でした。

1500mAhの内蔵バッテリーも備えているので、バッテリーの消耗が激しい動画撮影時においても必須アイテムといえます。

この写真撮影グリップを装着したままでの充電も可能ですが、USB-Cポート経由でUSBメモリなどにデータを移す際には、グリップを外し本体と直接接続する必要がありました。

このグリップは装着後にスライドボタンでロックするのですが、都度忘れないようにロックを掛けましょう!自身への戒めです…。

映像撮影時のモードについて

Xiaomi 14 Ultraには映像撮影時に選べるモードが、「ビデオ」「映画」「プロ」と大きく3つあります。

専用のグリップを用意しているところからもおわかりかと思いますが、ハードだけでなくソフトの部分でもしっかり作り込まれています。ただし、機能やモードが増えることでメニュー構造が複雑になり、たどり着くまでに時間が掛かったりということもよくあるので、そのあたりは少し気になりました。

1.「ビデオ」モード

通常のビデオ撮影用のモードで、簡単に高品質な映像が撮影できるように設計されています。自動で露出やフォーカスが調整されるので、初心者でも簡単に扱えるように配慮されているモード。

のはずなんですが…、Dolby Visionで撮影できるのはこのビデオ撮影モードの4K、もしくはFHD30fpsのみになります。後述の「映画」モードや「プロ」モードでの作り込みを考えない場合には、このDolby Visionでの撮影がオススメです。

model:須田すみれ

2.「映画」モード

映画のようなシネマティックな映像を撮影するためのモードです。このモードを選択すると映画特有のワイドなアスペクト比(2.39:1)に画面が自動で切り替わり、Xiaomi 14 Ultraの縦に長い液晶画面をフルに生かしたUIに切り替わります。

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「映画」モード選択時のUIの様子
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本来はアナモルフィックレンズを使ったり、例えば16:9のアスペクト比で撮った映像の上下をカットして擬似的に横に広げてみせるのですが、この2.39:1という画角をネイティブに撮れるだけでも通常の撮影とは違う映画っぽい印象を与えることができます。

ビデオモードから切り替えると、はじめての時には声が出るほどワイドに感じます。この機種のモニターサイズを最大限に生かしたモードともいえるかもしれません。

最初からこのアスペクト比で映像をつくり込むと決めている場合には「プロ」モードを使うより良いかもしれません。

また、このモードでは、UIにEV・F値・LUT/フィルター・ボケ具合・構図を選択もしくは調整するアイコンが象徴的に配置され細かく設定することができるようになっています。LUTについてはプリインストールされている中から選ぶ仕様で、LOG撮影ができるわけではありませんでした。

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「プロ」モードでオリジナルのLUTを適用している画面
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3.「プロ」モード

撮影設定を細かく手動で調整できるモードで、マニュアルで細部まで調整を求めるプロユーザーに向けたものです。

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「プロ」モードUIの様子
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このモードでは、LOG撮影が可能になり前述のオリジナルのLUTを読み込んだ撮影も可能です。ただし非常に残念なのが、UW/W/T/STとレンズに合わせて4つの焦点距離が選べる中で、24mmの焦点距離に相当するWでしかLOG撮影ができないことです。

そのためLOGで収録できる焦点距離が24mm相当に固定され、画づくりに幅をもたせることが難しくなります。今回は、飛行機や鉄道、車での移動中の景色を撮る際のカメラとして主に運用することになりました。

4.「監督」モード

隠れモードというわけではないのですが、Xiaomi 14 Ultraには「監督」モード(Director Mode)という、複数のスマートフォンなどを同時に使用して、映画のような映像を撮影するためのモードがあります。ただ、どの機種が対応しているのか現時点で正確な情報がないので今後に期待ですね。

ここでは紹介しきれませんが、スローモーションやタイムラプスなどの機能も当たり前のように備わっています。

高機能・高性能であるがゆえのジレンマ

本来、Xiaomi 14 Ultraは写真の性能で評価されるべき機種なのかなと思いつつ、一方で動画についても積極的に機能を盛り込んだ機種でもあることがわかりました。

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しかし、「8K対応」「4K 120fps」「Dolby Vision」「10bit LOG」などといった、スペック的に目につく要素は盛り込まれているものの、全てが連動し隙のないシステムを構築しているかといえば、まだまだこれからに期待したい部分も多くあります。

これはXiaomi 14 Ultraに限ったことではなく、あらゆる撮影機器にいえることでもありますが、使い手の求めるすべてに対応することは難しく、またユーザーが相反する要素を求めていることも多々あるので、Xiaomi 14 Ultraでみせた描写力を生かしながらXiaomiらしい個性を伸ばしていってほしいなと思います。

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まとめ

写真機としても同時期に持ち歩いていたLEICA TL2に見劣りしない場面もあり、何より4つの焦点距離をポケットに入れて持ち歩けるのは、飛行機・電車・車と移動の多い海外ロケでは本当に助かりました。この点については写真・映像問わず圧倒的ですね。

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またこれまで触れておりませんでしたが、手持ちでの動画撮影時にジンバルを使いたいという気持ちが一度も生まれないほどに手ぶれ補正も優秀です。ある程度気を遣えば、歩きながらでもほぼ気になりませんでした。

あえて減点するならばバッテリーの持ち具合でしょうか。予備バッテリーとしての機能も備えたグリップをつけていたとしても、みるみるうちにバッテリー残量は減っていきます。ただ充電速度も早いのでモバイルバッテリーを持ち歩いている限り、運用上困ることはありません。

試用期間中に何人もの本職の友人から使用感を聞かれるなどあらためてプロからの注目度の高いスマートフォンであると感じたXiaomi 14 Ultra。試用した2週間を振り返ってみると、総評として基本性能に不満はなく所有欲もみたしてくれる機能・デザインともに高い完成度を備えたスマートフォンです。

GR3やX100シリーズなどの⾼性能コンデジを持ちたいけど焦点距離のバリエーションに物⾜りなさを感じる⼈、何気ない⽇常のひとコマをそのままの美しさで写真だけでなく動画としても記録したい⼈。こういった⽅にぜひオススメしたいと思います。

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宮下直樹(TERMINAL81 FILM)|プロフィール
フリーランスのフォトグラファー・シネマトグラファー。
ものづくりやブランドの世界観を伝える、写真・映像・ドキュメンタリーを手掛ける。
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