TILTAがiPhone用のリグを発売
TILTAからiPhone 15 Pro用のリグが発売された。TILTAといえばDSLRカメラ用リグやジンバルアクセサリーなどの動画機材アクセサリーのトップブランド。そんなTILTAがiPhone用のリグを発売したということは、iPhoneがミラーレス一眼などと同等に映像制作現場で使えるようになったということではないか。
筆者は短編映画やMVの制作をしており、iPhone 11で撮影した映画で映画祭受賞経験もある。ということでTILTAからリグをお借りし、iPhone 15 Proが映画撮影の現場で実際に使えるか検証してみた。
セットアップ
今回はiPhone 15 Pro Max用のリグ「Khronos iPhone 15 Pro Max Basic Kit」をお借りした(正式な名称は不明)。
セットアップは簡単で、金属製のケースをネジで装着。普段はそのままケースとして使用でき、撮影時にハンドルや、コールドシューアダプターなどを必要に応じて好みの場所に装着して使用するというスタイルだ。
フォーカスPDハンドルがすごい
金属ケースに装着するアクセサリーの中で核といえるのがフォーカスPDハンドルだ。このハンドルはダイヤルがついており、名前の通り、フォーカスを調節したり、ズーム機能を割り当てたりすることができる。録画の開始や停止も親指だけでできるようになる。
このハンドルにはバッテリーが内蔵されており、背面に取り付けられる冷却ファンに電力を供給したり、そこからiPhone本体を無線充電したりすることもできる。長時間撮影は熱停止や、バッテリー切れの心配がつきまとうので、このフォーカスPDハンドルは欠かせない。
対応しているアプリはBlackmagic Camera
このフォーカスPDハンドルだが、BluetoothでiPhoneと通信しており、ダイヤルでのフォーカスコントールやズームに対応しているのはBlackmagic Camera。無料なので安心してほしい。そればかりか標準アプリではできない高圧縮でのAppleLOG撮影や、音声のIEEE Floatでの記録やLOG撮影時のLUTプレビューなどお金を払いたくなるほど高機能なアプリなので落としておいて損はない。
フォーカスPDハンドルをiPhoneに接続した状態で設定画面のアクセサリーの項目を開くと、ワイヤレスレンズコントロールでTILTAを選択できるようになっており、ハンドルからカメラの操作が可能になる。
実際に撮影で使ってみる
実際に短編映画の撮影にiPhone 15 Pro Maxを投入してみた。現場でハンドルや、コールドシューや、アルカスイス互換の三脚アダプタなどを取り付ける。コールドシューにはマイクを装着。屋外でのセッティングだったが、10分もかからず撮影可能な状態まで持っていけた。出演する俳優さんも「え?めっちゃ本格的ですね」とテンションが上がる。リグにはこういう効果もあるのだと実感した。
撮影をしてみると、手で画面が隠れることがなくなるので、常に全画面を観ながら撮影できるのが便利だなと感じた。期待していた手ブレ防止効果はそもそも、iPhoneの手ぶれ補正がすごいのでそこまで効果を実感できなかった。iPhone 15 Pro Maxに搭載されている5倍望遠レンズを使用したときは安定感を実感できた。
冷却用のファンはパワーを弱と強から選ぶことができ、強にした場合でも音はそこまで大きくなく、ロケでの撮影ではマイクに音が入ることもなかった。もちろん熱停止などもなく撮影を終えることができた。
完成した短編映画を公開
聞いてらんない夢の話 type I
こちらが完成した映画。公園で女の子が元恋人に電話をするお話。もともとは夜の公園で撮影する予定だったが、雨が降ってリスケとなり朝の撮影になってしまったので、撮影後のグレーディングで朝なのか夜なのかわからないファンタジーなルックになるよう調整してみた。大幅に色をいじり、様々なエフェクトをかけたがAppleLOGは破綻することなく調整できたように思う。また、グレーディング前からAppleLOGの映像はこれまでのiPhoneで撮った動画より映画っぽい色味だと感じた。
ミラーレス一眼と比べてみた
実はこの短編映画の撮影。フルサイズミラーレス一眼(LUMIX S5 II)でも同時にカメラを回していた。そして同じように編集したものがこちらだ。
どうだろう?明るいレンズで背景をぼかした表現などは、やはりミラーレス一眼しかできないが、色合いにおいてはかなりいい勝負をしているように思う。
実際、この2つをみた友人は「スマホサイズでみるならどっちでも変わらないね」と言っていた。
ちなみにミラーレス一眼での「応答なし」と表示されるカットがうまく撮影できておらず、iPhoneで撮影したものを混ぜて使っているのだが違和感を持った人はいるだろうか?
AppleLOGの素材はかなり自由に色を変えられるので、ミラーレス一眼の素材と混ぜて使っても大丈夫だと感じた。わかりやすく並べてみたものがこちら。
気になるポイント
レンズの真下に三脚を付けられない
三脚を取り付けるアダプタを取り付けられる場所がレンズから微妙にズレてるので、三脚をつけてパンなどをしたときに軸がずれる気持ち悪さがある。
マイク端子が4極
これまでミラーレス一眼に取り付けていたマイクをフォーカスPDハンドルにつけようとしたが反応しなかった。そこでマイクのプラグをスマホ用の4極のものと交換してみたら認識した。もちろんiPhoneはスマホだから4極で正しいのだが、カメラ用の3極プラグのマイクしか持っていない人は注意が必要だ。
オススメしたい人
iPhoneで映画を撮りたい人
前半で述べたようにリグをつけることによって、撮影のしやすさだけでなく演者のテンションをあげることができる。これは撮影においては重要で、ラフに撮影する良さもあるが、しっかりした映像作品として集中して挑んでほしいときには空気づくりが大事になってくる。また、フォーカスPDハンドルは縦に取り付けることもできるので流行りの縦型ドラマを撮るときにも便利だ。
最後に
iPhone 15 Pro Maxは映画を撮影するのに十分な画質になったと感じた。そのiPhoneに拡張性と安定性、そして演者が安心するシッカリ感をプラスしてくれるのがKhronos。iPhoneで本格的に動画撮影をする人には是非使ってみてほしいと思う。