9月2日〜3日の2日間、日本全国のメーカーや販売代理店が北陸に集結した「北陸放送機器展」が開催された。そこには北陸で活躍する多くのクリエイターが来場し、情報交換も盛んに行われていた。そこで来場クリエイターに、北陸を拠点としたクリエイティブ活動の魅力について話を聞いてみた。

藤倉昌洋さん(株式会社NK2-Tech)

プロフィール
1991年新潟県生まれ、長岡市在住。2021年に独立開業しドローン事業を開始。2024年に法人化し、株式会社NK2-Techを設立。YouTuber「NANKOTSU」としてドローン初心者向けの情報を中心に配信中。

北陸をクリエイティブの拠点とする利点を教えてください。

私の場合、家族のいる関係で新潟を拠点としまして、ドローン事業を行っています。ドローンは都内や繁華街ではなかなか飛ばしにくいし、練習もしづらいです。その点、田舎で広い土地がある、今の新潟の環境は大変理想的だと思います。

新潟の環境がプラスと感じることはありますか?

新潟の燕三条地域など、世界目線の会社さんが多数あります。それらの企業はインパクトのあるPR動画を発信したいところも多く、映像制作のニーズは高いと思います。

機材の購入、情報収集に関してはいいかがでしょうか。

購入や情報収集に関しては全く問題ありません。私は元々ドローン、その中でもマイクロドローンの製作を専門に始めていまして、現に新潟から一人で始めました。始めた当初は本当にできるのか?不安でしたが、それが今、不可能ではない世の中になっています。情報はだいたいネットにありますし、物も海外通販で注文すれば普通に届きます。別に都内にいても新潟にいても変わらないかなと思っています。

ドローン業界は中国やアメリカなど、海外がリードしています。本気で取り組みたいならば、世界に目を向けるべきかと思います。最初から私は新潟にいたため周りに知見のある方がほぼおらず、中国やアメリカのメーカーとやり取りをするしかなかったので逆に近道だったのかもしれません。ドローンに関しては、特に都内にこだわる理由はないかもしれないですね。

木村嘉宏さん(Lead Design株式会社)

プロフィール
1987年生まれ。富山県高岡市出身のクリエイター。2015年よりLeadDesignを起業。富山県内のクライアントをメインに、web制作、グラフィックデザイン、動画映像撮影、配信事業、スポーツ活動など多岐にわたり活動。ワクワクと面白さをもっと富山に広めたいと日々躍進中。

北陸をクリエイティブの拠点とする利点を教えてください。

富山で過ごす利点として、家賃がお手頃でご飯が美味しいなどがありますね。仕事以外の生活の質や満足度は、別に東京でも富山でも変わりません。ただ、ゆっくりできる富山は住みやすいと思います。

クリエイティブなことって常に刺激は必要だと思うのですけど、ただ刺激だけだと疲れてしまって継続できません。この緩急という上では、圧倒的に富山が優位です。大変働きやすいというか過ごしやすいとは思います。

今ではオンラインによるコミュニケーションも充実してきていますが、富山での人との出会いはどのように思われていますか?

おっしゃる通り、首都圏の方がたくさんの人がいて切磋琢磨している環境だとは思います。けれども、逆に言えば人しかいないと思うことがあります。

富山で過ごしていくと、それぞれの地域の課題とか地域にある文化が身近な生活のすぐそばにあります。今自分は、獅子舞を世界に広げる映像のチームにも所属しています。富山には1,000団体以上の獅子舞の団体があります。その文化をよりスタイリッシュに発信していけるのは、その文化を長い時間、実際に肌で感じてきた現地在住のクリエイターがもっとも適切だと思っています。地域の課題や地域の魅力に触れながら、自分の感性を通してその魅力を発信することに関われるのも富山の魅力です。

仕事で詰まるときもあれば、ゆっくりしている時間も過ごせる。時間を作って海を見つめているような、自分に向き合える時間を実現しやすいです。世の中の忙しさに流されていくのではなく、しっかり自分のやりたいことに取り組めるのと、自分のことを振り返ることができる。それができるのは地方在住の良さであると思っています。

倉本浩幸さん(KURAMOTO Studios)

富山をクリエイティブ活動の軸にする利点を教えてください。

僕の場合ほとんど撮影以外では外に出ないで、家で編集が中心の業務を行っています。逆に言えば場所を選ばないと思っています。仕事の案件は人づてが中心です。大学が富山だったのですが、そのまま富山に拠点を構えている状態で、大学の頃にできた縁から今が形成されている状態です。特に移転する意味を感じていません。

富山の環境がクリエイティブにプラスとなるようなことがあれば教えてください。

富山は、環境に恵まれています。具体的にはドローンが飛ばしやすい。多分東京だったらそうはいかないと思います。景色もいいですし、ロケーションという意味では大変潤沢な環境なんじゃないですかね。

また、北陸はけっして人口が多くはないかもしれません。映像制作に関わる人たちは少しずつ増えてきていますが、映像制作の土壌が仕上がっているわけではありません。「ここから俺、新しくやれるかもしれない」という可能性を感じながら、皆さんワクワクしながらやっている感じがします。

だから、映像制作には前例がないことが多いです。なので、逆にのびのびできるのではないかと思っています。しがらみみたいなのも少ないような感じもするし、僕みたいな新米のような人間も活躍の場所がある。ガチガチな縦社会っていうわけでもないし、そういう意味では広い土地と相まって、のびのびと活躍することが可能だと思ってやっています。

森裕太さん(Wally)

プロフィール
富山の映像作家。WebCMやTVCMを製作する傍ら、ミニチュア風に富山の風景を切り取る映像作品「じおらま富山。」ではSNSで6万人のフォロワーを獲得し、海外のアートイベントへの映像作品出展など国外でも活躍している。

富山で活動されるようになったきっかけを教えてください

地元が富山で大学時代は県外にいましたが、また富山に戻ってきました。富山でやれる面白さって、クリエイターとして活動したらすぐ同業者とつながりができる。若い頃から生え抜きのクリエイター的な人とすぐにつながることができて、飲みに行ったりできる。ある種ブルーオーシャン。頑張ったらすぐそういう人たちと繋がれる環境がモチベーションになったり勉強になったりしています。

あと、いい意味で母数が少ない。チャンスをつかもうとしても、母数が多すぎると全然掴めません。もちろん、絶対的な実力をもつことも大事だと思いますが、それ以上に富山の方がチャンス巡ってくるのではないかなって感じますね。

富山でのクリエイティブ活動で、どのようなところで利点と感じることがありますか?

環境です。富山というと、イナガキヤスト(稲垣泰人)さんという写真家の方が有名です。イナガキさんは、街と山の距離が近い、望遠レンズの圧縮効果の表現を特徴とした写真家として大成されました。

そういう富山のローカルの良さと、クリエイティブの切り取るみたいなところをイナガキさんから学びました。富山はミニチュア風の撮影と相性がいいです。ポジティブな効果がある環境なのかなと思いました。

本城直季さんの都会の作品は、今まで多くの人たちが見てきたと思います。アオリの表現をローカルの富山で表現する面白さを感じながら製作しています。海外からも映像の展示の依頼があり、今年の11月にサンフランシスコのアートイベントで映像作品を展示する運びになりました。

あと、ご飯はうまいですね。仕事終わった後、飲んだりするのですけど、やっぱ基本的においしいです。県外からお客さんが来られた時とかにも美味しい店に行って、ご飯とともにクリエイティブな会話ができるのは、富山ならではじゃないかなと思います。

青木栄美子さん

プロフィール
1989年生まれ。富山県氷見市出身、民宿あおまさ女将・フリーアナウンサー。
大学卒業後、NHK富山やNHK金沢のキャスターを5年間務める。その後富山テレビに転職し4年間アナウンサーとして勤務。報道アナウンサーとして、記者業務を兼務。富山テレビを退職後に独立。フリーアナウンサーとしてテレビ出演や、企業の動画制作、ナレーションなど多岐にわたり活動。夫の辻井隆雄に出会い、結婚したのをきっかけに、2023年に栄美子の実家、民宿あおまさを夫婦で継承。赤字の民宿を1年で黒字化。能登半島地震では民宿で炊き出しを行った。

クリエイティブ拠点としての富山の魅力とは何でしょうか?

富山の地元が大好きで地元の放送局で働いていましたが、フリーランスで活動するにしても大変いいところだなと思っています。都会にはない、自然が豊富で撮り甲斐のある場所や景色がたくさんあります。食の魅力、クリエイターの方にとって本当にいい環境なのではないかと思います。

例えば山もそうですし、本当食材に関してもそうですし、アクティビティもたくさんあるし、たくさん撮りたくなるような、都会にはない魅力がいっぱいあると思います。

富山をクリエイティブの拠点とするうえでどのような利点がありそうですか?

富山は都会と比べて、大変ゆっくり時間が流れる場所です。クリエイティブな感性をお持ちの方は、のびのびと仕事ができるでしょう。この時期は美味しいお魚、夏が旬のお魚があって、夏ならではの滝行もそうですし、古民家に行ってゆっくり過ごすことができます。

自然豊かな富山で過ごすことで、よりクリエイティブなアイデアが湧いてくるのではないかと思っています。

とにかく訪れていただいて、富山の魅力を存分に味わっていただきたいなと思います。気に入っていただき、ぜひ富山の良さをたくさんの発信していただければ嬉しいです。

澤田由貴さん

プロフィール
1990年生まれ。富山県砺波市出身、高岡市在住。ディレクションや企画立案、編集など幅広い業務を手掛ける。また、映像だけでなくVRホタルイカのコンテンツプランニングにも携わり、常に「面白そう」と感じたものには積極的に挑戦し続けている。新しい発想を取り入れながら、多彩なクリエイティブ活動を展開中。

富山でクリエイティブな仕事に関わることの利点は何でしょうか?

景色っていうのは大きいのではないかと思います。富山には富山らしさがあり、大変広く抜けた絵が綺麗に撮れることが日常的にあったりします。普段のふとした、今日景色きれいだなっていうのをそのまま収められるというか。なんだろう?自然に歩いていてカメラを構えたくなる瞬間があるみたいな感じです。

富山で自分を高められるきっかけを感じることがあれば教えてください

私は結構、自然を楽しんでいるタイプです。釣りに行ったり、あとは普通に山登ったり。いつも行っている同じことでも毎回全然違う。その変化に対して、どのように思うかみたいなところは、自分の中では大きな刺激になっています。これがクリエイティブにどのように関わるかはわからないのですけど、そんな少しの変化に気づけるというのは、自分を高めていけているのかなと感じています。

富山をクリエイティブの拠点とする利点とは何でしょうか?

自由に生きていける、静かじゃないですか?そういうところが割と好きで東京に行くとやっぱちょっと疲れてしまうというか。新しい情報は別にどこにいてもつかめるのではないでしょうか?

そういったオンラインのコミュニティとかを利用して、いろんな友達と日本全国の方々と結構関わってお話することっていうのが日々結構あるんですけども、そういうこととかをしていれば、別に自分の好きなところに住んで、自分の好きなことをしながら、活動ができる。場所にとらわれる必要はないかなと思っています。