2020年に放送局向けの次世代映像制作システムとしてリリースされたKAIROS(ケイロス)。発売から数年が経ち、採用される現場数は年々増加しているという。

Inter BEE 2024のパナソニック コネクトブースでは、KAIROSのオンプレミス・クラウド双方の最新アップデートが紹介され、さらにメインステージでは、幕張メッセの会場と株式会社トラストネットワークの青海スタジオをリモートでつなぎ、「ブレイキン」のダンスバトルを行うKAIROSのリモートプロダクションのデモンストレーションが注目を集めた。

パナソニック コネクトのブース内でも、多くの来場者が足を止めたKAIROSの展示内容について紹介する。

メインステージで行われた、KAIROSのリモートプロダクションのデモ

KAIROS オンプレミス

リソースシェア

新たなKAIROSの使い方として、リソースシェア機能が登場した。強力なGPUを持つKAIROSのパワーを共有し、複数のスタジオやサブで同時運用が可能になるという。

ブースでは、実際にリソースシェアのデモが行われており、SDI標準対応の新メインフレーム「AT-KC200TL1」1台でニュースA番組、スポーツ中継、ニュースB番組を同時制作する想定での展示が行われていた。

この運用が可能になると、各サブにスイッチャーを導入するよりもコスト面で利点がある。

さらに、ユーザーロール機能があり、各スタッフに応じて操作権限を付与することで、他の番組に干渉せずに映像制作を行えるため、誤操作やトラブルを防止できる。例えば、ニュースA番組のスタッフはニュースAの素材と設定にのみアクセスでき、他の番組素材はアクセスできないなど。

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さらに注目したのが、タッチ操作で映像のオペレーションが可能になるソフトウェア「AT-SFTC10G」の展示だ。従来のコントロールパネルも使いやすさでは定評があるが、このソフトウェアにより、さらに直感的な操作が可能になる。

例えば、リプレイを送出する際、規定のスティンガートランジションの後にVTRが流れ、そのときに得点表示や「Live」表示のテロップを自動的に消し、本線へ戻るときに得点と「Live」テロップを再度表示するといったマクロを、画面のタッチ操作だけで実現できる。これにより、大がかりなスイッチャーのコントロールサーフェースが不要となり、中継先や定番の配信業務に適した構成となっている。

タッチコントロールパネルソフトウェア「AT-SFTC10G」

SDIに対応したKAIROS

SDI標準対応の新メインフレーム「AT-KC200TL1」

IT/IPプラットフォームとして開発されたKAIROSだが、放送局ではまだSDI運用の需要が多いという。そこで、SDI標準対応の新メインフレーム「AT-KC200TL1」が登場した。高度なネットワークボードを省き、SDI入力を24(最大32)、出力を12(最大16)備えた従来型のパッケージスイッチャーとして提供される。

初期モデルでは動作時の音の大きさが印象的だったKAIROSだが、最新モデルでは驚くべき静粛性を実現している。展示台の上に裸で置かれたKAIROSに耳を近づけても、微かな作動音が聞こえるだけだ。この静粛性の進化は、音声収録が重要なスタジオ環境や、静かな運用が求められる現場で大きなメリットとなる。

KAIROSをパッケージ販売

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さらにSDIモデルのKAIROSをパッケージとして販売するという。Kairos Core(メインフレーム)本体、Kairos Creator (GUIソフトウェア)、Kairos Control(コントロールパネル)、HUBを最小構成に、パッケージ価格として提供する。顧客の要望に合わせて構成品を選択し、カスタマイズが可能になるそうだ。

SKAARHOJ (スカホイ)社製のコントロールサーフェースからも操作可能

汎用的な1MEパネルとして、SKAARHOJ社製のコントロールパネルもKAIROSの純正パネルのように操作することが可能。Kairos CreatorのPanelメニューから設定が可能である。省スペース設計で中継車などでの運用にも適しており、使いやすさに定評のあるSKAARHOJ社の製品だけに、小型ながらも十分な機能を搭載し、制作現場を力強くサポートするはずだ。

KAIROS クラウド

クラウド環境でのKAIROSの活用も注目を集めていた。ネットワーク接続によって機能を拡張でき、クラウドならではのメーカーを越えた横展開を実現している。スタジオの所在地に縛られず、映像素材を任意の場所からストリーミングでサーバーにアップロードすることで、自由な撮影環境を構築できる。

各社のエンコーダーを活用できる点も大きなメリットだ。インカムとタリーを連動したエンコーダーをカメラに装着して使用することも可能で、カメラへのPGMリターンも受信できる。オンプレミスと同様に3番組を同時に利用することができ、他社製のテロッパーや編集ソフトと組み合わせて使用できる環境が整っている。

他社製品との組み合わせで様々な運用が可能なKAIROS クラウド

オーディオ画面はタッチパネルによってフェーダーコントロールが可能になり、操作性が大幅に向上した。

さらに、将来対応の機能として、KAIROSで録画している途中でも、編集ソフト(例えばEDIUS)でショートクリップを作成し、リプレイに活用することも可能になるとのこと。

編集ソフトとの連携で、録画中の素材を即時に編集できる機能も対応予定とのこと

また、メディアサーバーに登録したクリップはリプレイ素材としてだけでなく、監視システムとも連携でき、クラウドならではの柔軟な運用が可能となっている。

監視システムとも連携が可能で、クラウドならではの柔軟性がある

まとめ

Inter BEE 2024で展示されたKAIROSは、リソースシェアによる効率的な運用、パッケージ化による導入のしやすさ、SKAARHOJ社製コントロールサーフェースの標準対応、そしてクラウド機能の強化など、多岐にわたる進化を遂げている。

これらの新機能により、KAIROSは放送業界におけるIP伝送スイッチャーの新たなスタンダードとなる可能性を秘めており、今後のさらなる機能拡張とサービスの充実に期待したい。