InterBEE 2024のグラスバレーブースでは、AMPP(Agile Media Processing Platform)の展示が行われていた。AMPPは、グラスバレーが提供するハードウェア、ソフトウェア、クラウドネイティブなワークフローを統合し、ライブコンテンツの制作と配信を効率的かつ柔軟にサポートするプラットフォームであり、GV Media Universeの中心を成すソリューションだ。
このプラットフォームは自社製品のみならず、多くの他社製品も動作可能で、多くの協力メーカーの製品が既にAMPPに対応しており、グラフィック制作アプリケーションからAMPPをリモートで操作するような大規模なオートメーションシステムまで多岐にわたる。
AMPPは単なるクラウドソフトウェアではなく、クライアントの多様なニーズに応じたソリューションを提供するシステムの中核に位置するプラットフォームだ。一部の他社製品はAMPP上のマーケットプレイスから購入・組み込みが可能で、導入の手間を軽減できる。
AMPPのアプリケーション群
グラスバレーは長年、スタジオ向けのライブスイッチャー、オーディオパネル、スポーツ中継向けリプレーデバイスなどを提供してきた。AMPPでは、従来の操作感を維持しつつ、クラウドベースの利便性を加えた以下のアプリケーションが揃っている。
LiveTouch X
映像の切り替えや可変速リプレイの操作が可能で、対応するハードウェアデバイスでも操作できる。
Audio MIX X
最大64系統のオーディオを制御し、高品質のEQやコンプレッサーを搭載。物理フェーダーにも対応している。
MAVERIK X
2M/E、32入力6出力のプロダクションスイッチャーで、ソフトウェアだけでなくハードウェアパネルでも操作可能。
Live Producer X
1人のオペレーターが映像、音声、テロップを一元管理できるため、小規模なインターネット配信に最適。
Framelight X
素材の管理、プレビュー、尺調整、並べ替えといった簡易編集が可能。
EDIUS
EDIUSを使ってAMPP上で管理している映像素材を編集することもできる。込み入った編集が必要な場合はスピードや効率が大幅に向上するだろう。
Playout X
マルチチャンネル対応で、YouTube、TikTok、地上波テレビなどOTT、リニアテレビなど複数プラットフォームへの同時配信を一元管理できる。
Masterpiece X
緊急時のスイッチングや特定のテロップ挿入を行うためのアプリケーションで、緊急速報や重要なメッセージを迅速に挿入したり、バックアップチャンネルとしての機能もある。
Billing Portal
各アプリケーションの利用料金はブラウザ経由でいつでも確認可能で、1時間単位や月額固定料金などニーズに合わせたプランを選択できる。
AMPP Edgeによるオンプレミスでの運用
AMPPは、パブリッククラウド(Amazon Web Serviceなど)、プライベートクラウド、さらにはオンプレミスのサーバーを組み合わせての運用が可能だ。基本的に、アプリケーションはLinux環境であればどこでも稼働するように設計されており、SaaSで提供される管理アプリケーションが、全体の課金と稼働状況を一元的に管理する。
AMPP Edgeサーバーは、オンプレミス環境での運用を希望する企業向けのソリューションとして、クラウドとローカル環境の利便性を両立させる。特に、低遅延が求められるライブ配信やリアルタイム処理では、エッジデバイス上で全ての入出力と映像・音声の処理を完結できるため、クラウドへのデータ転送による遅延の影響を最小限に抑えることができる。また、SDI出力を装備することもでき、YouTubeや地上波テレビといった複数のプラットフォームへの同時出力も可能で、柔軟な運用が求められるメディア制作現場に適している。
株式会社AbemaTVの導入事例
株式会社AbemaTVは今年の春、AMPPの運用を開始した。現在はAMPP Edgeをプラットフォームにして、Live Producer X、Densité X、Clip Recorderといったアプリケーションを使用。将来的には、SRT伝送を使ってクラウドと直結するワークフローの構築も検討している。
制作拠点が分散している状況でも、クラウドベースのAMPPにより、柔軟な制作が可能。スタジオ設備の物理的な制約を超え、効率的な制作とリソースの最適化ができることをメリットとして挙げている。
今後はスポーツ中継など、国際フィードへの実況解説やテロップ付けをする番組にAMPPを活用し、効率的な制作体制を構築していくことを検討している。