Inter BEE 2024のキヤノンブースでは、プロフェッショナル向けの新製品や技術展示が数多く行われていた。その中でも特に注目を集めたのは、新しい4K放送用ポータブルズームレンズ「CJ27e×7.3B IASE T」や、今年発表されたデジタルシネマカメラ「C80」「C400」、そして参考出品として展示された「マルチカメラオーケストレーション」に注目が集まった。
4K放送用ポータブルズームレンズ「CJ27e×7.3B IASE T」
今年8月に発売された「CJ27ex7.3B」は、キヤノンのポータブルズームレンズのフラッグシップモデルとして位置づけられている。焦点距離が大幅に進化し、7.3mmの広角から197mmの望遠までをカバーするクラス最高倍率の27倍ズームを実現している。従来の標準クラスのレンズからはさらに広角化・望遠化し、撮影現場での使い勝手が向上している。
実際にブースで映像を確認したところ、ズーム全域で画面の隅々までクリアな描写が得られていた。色収差や歪みが抑えられており、高い光学性能が感じられた。キヤノン独自の「大口径非球面レンズ」や「UDレンズ」の採用によって、4K映像の持つ繊細なディテールや質感を余すところなく表現できるのだろう。
このレンズは、スタジオ撮影やスポーツ中継、報道現場など、スペースの限られた場所や被写体に接近した撮影において、その広角性能と高倍率が活躍しそうだ。また、遠くの被写体を大きく迫力のある映像で撮影できるため、多様な撮影シーンに対応できる。重さを感じにくい重心位置・重量バランス設計により、長時間の撮影でもオペレーターの負担を軽減する工夫もなされている。
最新型ドライブユニット「e-Xs V」
「CJ27ex7.3B」に付属するドライブユニット「e-Xs V」は、10年ぶりに刷新された最新型である。USB Type-C端子を初めて搭載し、USBメモリーを介してレンズ設定データの保存や読み込みが可能になった。これにより、ユーザー自身でファームウェアの更新が行えるようになり、新機能の追加や不具合の修正が迅速に対応できる。
また、ドライブユニットの天面にディスプレイを配置することで視認性が向上し、撮影中でも設定状況を一目で確認できるようになった。操作性も向上しており、ボタン配置やグリップ感が改善されている。現場での使い勝手を重視した細かな改良が施されており、オペレーターからの評価も高いのではないかと感じた。
EOS C400
以前のモデルであるC300 Mark III、C500 Mark IIと同様のBOX形状を採用しているが、より小型軽量を実現。BOX形状とすることで、このクラスのニーズに合わせて手持ち、ジンバル、ドローンなど様々なスタイルに対応できる。
今回のモデルからRFマウントを採用し、6Kフルサイズセンサーを搭載、60Pに対応している。また、今回からトリプルBase ISOを採用し、ISO800/3200/12800と自動切り替えの4種類から選択が可能となった。
さらに、キヤノンのバーチャルプロダクションシステムに対応し、RFマウントシステムの高速通信により、レンズとカメラの撮影情報をリアルタイムに取り出すことが可能。これまで負担となっていたレンズ交換時のキャリブレーションも不要になるため、CG合成がより容易になる。
EOS C80
「EOS C80」は「EOS C400」と同様にRFマウントを採用し、6Kフルサイズセンサーを搭載している。主要な機能は「EOS C400」と共通しているが、6K解像度でのフレームレートは最大30Pまでの対応となる。その代わりに、スチルカメラライクな筐体を採用し、さらなる小型軽量化を実現している。高い機動性が特徴であり、手持ち撮影やジンバル、ドローンへの搭載も容易だ。
実際にブースで「EOS C80」を手に取ってみると、その軽さとコンパクトさが際立っていた。長時間の手持ち撮影でも疲れにくい設計だと感じた。操作性にも配慮がなされており、バリアングル液晶モニターや直感的なボタン配置が採用されている。デュアルピクセルCMOS AFによる高速・高精度なオートフォーカス機能を搭載しながら、CINEMA EOSならではの、合焦直前にゆるやかに減速するなどプロのフォーカス操作に近づける細やかな調整機能も備わっている。
「EOS C80」は、小型軽量ながらプロフェッショナル向けの機能をしっかりと備えており、多様な映像制作のニーズに応えるカメラと言えるだろう。高品質な映像を手軽に撮影したいクリエイターにとって、非常に魅力的な選択肢となるのではないか。
リモートカメラの大型ファームウェアアップデート
CR-N700、CR-N500、CR-N300、CR-N100の各モデルにおいて、今年7月のファームウェアアップデートにより自動追尾アプリケーションの基本機能がカメラ本体に内蔵され購入後すぐに自動追尾機能を利用可能となった。有償ライセンスと比較すると、被写体の位置やサイズのバリエーションなどに制限はあるものの、基本機能で十分なシチュエーションも多いだろう。
マルチカメラソリューション
複数のリモートカメラをメインカメラの動きに連動させるシステム「マルチカメラ オーケストレーション」の技術展示が行われていた。
1人のカメラマンが使えるカメラの台数を増やすために、AI技術を活用してメインの被写体の上手下手にいる人物を自動検知し、メインカメラとは異なる人物や構図での撮影をサブのカメラが連動して行うというものだ。
サブとなるリモートカメラに、メインカメラと異なる人物や、同じ人物の異なる構図、グループショットなどを設定しておくことで、メインカメラがターゲットとする人物やショットサイズを変更するとサブカメラが連動して他の人物やメインカメラとは異なるショットサイズに変更される。メインカメラのズームデータも共有されるので、メインカメラがズームインするとサブカメラも連動してズームさせることもできる。また、グループショットについては、人の配置が変わるとそれに合わせてズームを行う。
現在、様々なシチュエーションで実証実験を行なっているとのこと。