スマートグラスとAIグラス

時代は繰り返す。Google Glassの利活用でメルセデスベンツではスマートウォッチとの連携も考えられていたCES2014

2013年に登場したGoogle Glassは、CES 2014で多くの企業がその活用方法を提案するきっかけとなった。例えば、メルセデスはGoogle Glassをナビゲーションサポートに活用する可能性を示唆していた。

昨年はApple Vision Proに関連するデバイスが多く展示され、今年はそのアイコンタクト機能を意識したUltraReality Technologyの「EyeBliss」が注目を集めた。このデバイスは、ゴーグルを装着したままでもアイコンタクトを取れるよう、顔をプリレコードして使用する仕組みを採用している。Apple Vision Proが提案するアイコンタクトとは少し異なるものの、CESのユニークなガジェットとして存在感を示していた。

「スマートグラス」は「AIグラス」へと変貌

本題に入ると、今年のCESでは昨年まで「スマートグラス」として展示されていた製品の多くが「AIグラス」としてリブランディングされていた。スタートアップエリアやデジタルヘルスエリア、エイジテックエリアなど、どのエリアでもAIグラスが目を引いていた。このことは、メガネ型デバイスがもたらす新たな知的体験への期待感が依然として高いことを示している。

かつてApple Watchが登場し、時計型デバイスが急成長を遂げたが、現在ではその市場は成熟し、安定を見せている。スマートグラスやAIグラスも同様に、「決定打」となる製品の登場を待つ段階にあり、今後も多くの企業が参入を続けるだろう。例えば、AmazonのスマートグラスやRay-BanとMetaのコラボ製品は、まだ市場を席巻するような存在には至っていない。

スマートグラスやAIグラスが展示されていたのか

今年のCESでは、どのようなスマートグラスやAIグラスが展示されていたのか。具体的な製品を紹介しよう。

Everysight社スマートグラス

特に印象的だったのは、Everysight社のスマートグラスだ。軽量でエルゴノミクスを考慮したフレームは47g未満で、特にアウトドアスポーツに適している。ディスプレイにはソニー製のカラーマイクロOLEDを採用し、鮮やかな色彩とシャープなディテールを実現していた。バッテリーは8時間以上の連続使用が可能で、充電の心配なく一日中使用できるのが魅力的だ。

注目すべきは「Line of Sight(LOS)」機能で、3D加速度センサーやジャイロ、マグネトメーターを駆使して、AR環境内の仮想オブジェクトがリアルワールドと自然に調和する体験を提供している。

Loomos社 AIグラス

LoomosのAIグラスも注目を集めており、16MPのカメラを搭載し、4K写真や1080P動画を撮影できる。さらに、AIウィジェットを追加することで機能を拡張でき、独自のAIプロセッサを搭載しているため、「Hey Loomos」と話しかけるだけで即座に応答する。また、Hi-Fiオープンイヤーオーディオにより、会話や音楽を耳を塞がずに楽しめるのも魅力だ。

VIZUXスマートグラス活用「XanderGlasses」

エイジテック向けには、日本のVIZUX社のスマートグラスを活用した「XanderGlasses」が展示され、聴覚や音声理解に課題を抱える人々をサポートする技術が注目された。AIによるテキスト変換機能で、話された言葉が即座に字幕として表示され、周囲の音もキャプション表示される。また、26言語に対応したクラウドベースの多言語翻訳機能が搭載されており、認知症の方々の医療面でも役立つ可能性がある。

AGC AR/MRグラス向けガラス基板

さらに、AGCが展示したAR/MRグラス向けガラス基板は、これまでのスマートグラスの常識を覆す技術で、フレーム内部にプロジェクターを埋め込むことにより、全体の軽量化を実現している。この技術は、スマートグラスの未来を大きく変える可能性を秘めている。また、AGCが展示した透明μLED封入サイドウィンドウ技術は、車用の窓ガラスに透明なμLEDディスプレイを埋め込んだもので、タッチパネル機能を備え、車内エンターテインメントやナビゲーションの新しい形を提案している。

次年度の進化が楽しみ

今年のCESでは、スマートグラスやAIグラスが中心的な存在となり、ハードウェアの進化とともにAIやAR技術の融合が新たな可能性を切り拓いている。市場としてはまだ決定打が生まれていないが、企業の多様なアプローチが未来への希望を膨らませている。これらのデバイスが私たちの生活にどのように取り入れられ、どのような価値を提供するのか、今後の展開が非常に楽しみである。