2025年のシネマレンズ市場は、描写における個性の追求と、撮影現場の効率化を両立する製品がトレンドである。LeitzやTokinaは、往年のレンズが持つフレアやボケといった独特の描写を現代の光学技術で再構築したシリーズを発表した。これに対しシグマは、AFに対応したシネレンズを投入し、撮影の自由度を拡大させている。また、Laowaはズーム機能を備えたProbeレンズといったユニークな製品で新たな映像表現を可能にした。NiSiは、シリーズ内でサイズや明るさを統一することで、レンズ交換時の作業負担を軽減するなど、多様化する映像制作者の要求に応える製品が揃った。

01 焦点工房(#4612)
ポータブルレンズプロジェクター「Dulens Lens Projector MF60」

ポータブルレンズプロジェクター「DULENS MF60」を使い、ブース内でレンズ性能のチェックを体験できる。来場者自身のレンズをその場で投影し、解像力や個体差、フランジバックの状態を精密にチェックするものである。レンタルハウスや撮影現場の品質管理を劇的に変えるプロダクトとして、ラボ級の精度と携帯性を両立した本機の実力を、愛用のレンズで体感できる。

02 サイトロンジャパン(#5206)
ズームマクロレンズLaowa Probe Zoom Macro Lensシリーズ

InterBEE 2025のサイトロンブースでは、近日発売予定の「Probe Zoom 15-24mm T8 Macro」と「Probe Zoom 15-35mm T12 Macro」が参考出品される。被写体に肉薄するユニークな視点が特徴のProbeレンズに、ズーム機能が加わったものであり、これはマクロ撮影の常識を覆す一本であると言えよう。これまで単焦点でしか得られなかった虫の目線のような映像を、ズームでよりダイナミックに表現することが可能となる。さらに、フルフレーム対応の2倍アナモフィックズームレンズ「Sunlight」シリーズも注目される。

03 シグマ(#7208)
映像制作用交換レンズ「AF CINE LINE 28–45mm T2 FF」

AF CINE LINEより、2025年6月に開発発表された「28-45mm T2 FF」が登場する。AF Cine Lineは、映像制作の現場に革新をもたらす、Sigma初のAF対応シネレンズシリーズである。Sigma Artラインの光学系を受け継いだ高い描写力は言うまでもなく、高精度で優れた追従性を誇るAFと、シネマの現場で求められる機能を高次元で両立した。これにより、従来のスチル用レンズやシネレンズでは難しかった撮影スタイルや現場環境にも対応可能である。

04 ケンコープロフェショナルイメージング/マシューズ スタジオ エクイップメント/ミソニクス(#7415)
プライムレンズ「VISTA」シリーズ

一つのシリーズに三つの個性を宿すのが、Tokina Vistaシリーズである。新シリーズ「Vista-C」は光学設計を一新し、往年のレンズを思わせる色彩豊かなフレアが特徴だ。滑らかなフォーカスの変化で被写体を印象的に描き出す。一方、「Vista-P」は、ヴィンテージレンズのような渦巻き状のボケ(ペッツバール効果)を生み出し、フレーム中央へ視線を引きつける独特の表現を可能にする。そして、シリーズの核となる「Vista」は、フォーカスブリージングをほぼゼロに抑えた最新の光学設計で、ラージフォーマットセンサーに対応する卓越した描写性能を提供する。

05 三友(#8408)
Leitz Cine、ミラーレスカメラ用単焦点レンズ「Leitz Cine HEKTOR」

往年の球面レンズが持つ描写特性を、現代の映像制作技術で再構築したシネレンズである。1980~90年代の設計思想に基づき、豊かなフレアといった個性的なルックを意図的に再現する。一方で最新のコーティングが不要なグレアや色収差を抑制し、現代の品質基準も満たしている。フルフレームに対応し、マウントは利用者がソニーE、キヤノンRF、ニコンZ、Lの各規格に交換可能な仕様である。また、フォーカスリングなどの位置も統一され、現場での迅速なレンズ交換を可能にする。このレンズは三友株式会社のブースで展示される。さらに、ニコン、ソニー、ブラックマジックデザインの各ブースでも一台ずつカメラに取り付けて展示される予定だ。

06 NiSi(#8609)
シネマレンズ「ATHENA」

撮影現場の効率性と高い映像表現力を両立させる大口径単焦点シネマレンズ群である。超広角14mmから望遠135mmまでを網羅し、主要な5本はT1.9の明るさで統一されている。超低色収差設計とマイクロコントラストの制御により、柔らかなボケ味と繊細なディテール表現を両立し、フォーカスブリージングも最小限に抑制した。多くのレンズで重量とサイズが同一なため、ジンバルなどのアクセサリーと組み合わせた際のレンズ交換も迅速に行える。マウントはPL、キヤノンRF、ソニーEに対応し、RFとEマウントではドロップイン式のリアフィルターも使用可能である。

07 Elysas(#8405)
シネマレンズ「MUSE PRIME」

ELYSASのシネマレンズ「MUSE PRIME」は、フルフレームを超える広いイメージサークルを持ち、富士フイルムGFXセンサーもカバーする。特筆すべきは、各焦点距離で900g未満という市場最軽量クラスの軽さを実現したことだ。画質はヴィンテージの柔らかさと現代的なシャープさを兼ね備える。収差を緻密に制御することで生み出される「溶け込むボケ」と称される独特の描写は、被写体を自然に際立たせ、立体感のある映像表現を可能にする。