2025年の映像制作周辺機材のトレンドは、撮影現場における機動性と効率性を追求する方向性が鮮明である。三脚やフルードヘッドではカーボン素材の採用による軽量化と、高ペイロードを両立する精密な制御技術が進化している。モニターレコーダーはSDI接続に加え、クラウド連携やタイムコード同期といったワイヤレス機能を標準で統合し、1台で多様なワークフローに対応する。ポストプロダクションでは、ストレージの転送速度が飛躍的に向上し、大容量データの扱いを効率化。編集ソフトウェアでは生成AIの統合が進み、制作プロセスそのものの変革が始まっている。

平和精機工業は三脚「QL40C」で軽量化と現場での運用性を両立させ、ヴィデンダムのフルードヘッド「Vinten Versine 240」は軽量ながら高ペイロードに対応する。EIZOはSDI端子搭載モニター「CG2400SV」で現場の接続を簡略化し、Nextorageのモニターレコーダー「Atomos Ninja TX」はSDI、クラウド連携、タイムコード同期を1台に統合した。ポストプロダクションでは、SamsungのSSD「T9」が高速データ転送で作業効率を高め、アドビはPremiere Proへの生成AI統合やカラーマネジメント強化により、ソフトウェア面での進化を示している。

01 平和精機工業/Libec(#4309)
三脚システム「QL40C」

大人気のクイックリリース三脚「QL40B」のカーボンバージョン「QL40C」が展示される。QL40Bは利便性の高いクイックロック機能に加え、181.9cmという高伸長が特徴であったが、QL40Cは軽量さを重視して開発された。制作現場で使用されることを想定し、QL40Bよりも最低縮長は低く設定されている。特許出願中の独自ロック機構、同じく特許出願中のフリップロック、便利なアクセサリーポートやキャリングハンドル、メンテナンス性能等、定番三脚となる要素を多数兼ね備えている。「QL40C」を組み合わせたビデオ三脚システムも、NXシリーズとHSシリーズから発表予定である。

02 EIZO(#7101)
24.1型 カラーマネージメント液晶モニター「ColorEdge CG2400SV」

CG2400SVは、放送・映像制作業界のニーズに応え、SDI信号入出力端子を搭載したColorEdgeである。撮影現場でSDI出力端子を備えた撮影カメラと直接接続して撮影映像をプレビューする場合や、放送局で複数台のモニターを並べて放送映像をリファレンスする場合に、SDIコンバータを介さないシンプルな構成で接続できる。現行のSDI対応の映像制作用モニターは、30.5型フラッグシップモデル「ColorEdge PROMINENCE CG1」のみであったが、新たにCG2400SVをラインナップに追加することでユーザーの選択肢を拡げるものである。CG2400SVは、24.1型の省スペース設計で、放送局の調整室や中継の現場などの限られたスペースにも設置ができるほか、運搬時に便利なハンドルも装備しており、撮影現場への持ち運びも容易である。

03 Nextorage(#8312)
モニターレコーダー「Atomos Ninja TX」

プロの現場で必須となるSDI接続と、クラウドやタイムコード同期といったワイヤレス機能を一台に統合したその完成度の高さが注目される。12G-SDIとHDMIの両入出力を備え、記録メディアもCFexpressやUSB-Cストレージに対応する。これまでオプションであったクラウド連携(C2C)やワイヤレスタイムコード同期(AirGlu)機能も本体に内蔵し、あらゆる撮影スタイルに一台で応える仕様は、モニターレコーダーの一つの到達点と言えるものである。

04 Samsung SSD(#8401)
Samsung Portable SSD T9

注目されるのは、大容量データの転送時間を劇的に短縮するその圧倒的な性能である。サムスン電子の外付けSSD「T9」は、USB 3.2 Gen 2×2インターフェースに対応し、最大2,000MB/sという読み出し・書き込み速度を実現した。これは高画質な映像など4GBのデータを約2秒で転送できる速度に相当し、プロのクリエイターの作業効率を飛躍的に高める可能性を秘めている。高速化に伴う発熱は、独自の熱制御技術で効果的に分散させ、表面温度を国際安全規格(IEC 62368-1)の基準内に維持する設計である。加えて、クレジットカードほどのコンパクトな本体は携帯性に優れ、WindowsやmacOS、Android端末など幅広いデバイスとの互換性も確保している。

05 ヴィデンダムプロダクションソリューションズ(#8409)
フルードヘッド「Vinten Versine 240」

注目されるのは、軽量な筐体で最大25kgものペイロードを支え、完璧なバランスを実現するその高度な制御技術である。Vintenのプロ仕様フルードヘッド「Versine 240」は、独自の「Perfect Balance」技術により、どのティルト角でもカメラの重力を完全に相殺し、長時間の撮影でも安定したフレーミングを維持する。さらに、薄膜ドラッグ機構が低速での精密な操作と、スポーツ中継などで求められる素早いウィップパンの両立を実現した。コントロール部を左側に集約した設計は直感的な操作を可能にし、軽量マグネシウム合金シャーシが高い機動性を確保。過酷なライブプロダクションやENGの現場で威力を発揮する製品である。

06 アドビ(#展示ホール8 特別企画オープンステージ)
特別開催「Adobe Day 2025」

注目されるのは、Inter BEE 2025の会場内で開催される、アドビ主催の一連のセミナーイベント「Adobe Day 2025」である。今年のAdobe Day 2025では、Premiere Proに深く統合された生成AI(Firefly)が、アイデア創出から編集作業の自動化まで制作ワークフローをいかに変革するかが示される。さらに、新たに追加されたエフェクト群や、Log、RAW素材を正確に扱うためのカラーマネジメントシステムの導入など、プロの現場で求められる機能強化についても詳しく解説される。Substance 3Dとの連携による3D表現の拡張にも触れ、クリエイティブの可能性を広げる具体的な手法が提示される。