2025年の映像伝送・配信関連機材のトレンドは、IP技術を基盤としたワークフローの普及と、それに伴う運用の簡素化である。専門知識を要したIP設定をプリセットで簡略化するスイッチや、異なるメーカーの映像・音響機器を連携させるソリューションが登場している。また、Dante AV Ultraなど標準的なネットワーク上で高品質な映像と音声を低遅延で伝送する規格が実用化され、品質と効率の両立が進む。さらに、複数機能を集約した高密度なコンバーターや、用途に応じて機能を拡張できるモジュール型プラットフォームも主流となりつつある。

ネットギアはAVプロファイル搭載スイッチでIP構築を簡略化し、ローランドはスイッチャーと他社製音響ミキサーとの連携を実現した。エーディテクノはDante AV規格、イメージニクスはDANTEオーディオによる高品質・低遅延な伝送を提案している。さらに、AJAはエンコードやトランスコードなど複数機能を1台に集約した製品を、Kiloviewはモジュール型プラットフォームを発表し、IPを軸としたシステム構築の効率化と多機能化が進んでいる。

01 ネットギアジャパン合同会社(#4213)
マネージドスイッチ「M4350」シリーズ

複雑な設定が必須であった放送・映像業界のIP伝送を、専門知識不要で実現するその革新性に注目したい。GUIベースの管理ツールは、ネットワークの専門知識がなくとも高度な設定を可能にする。DanteやNDI、SMPTEといった業界標準のAVプロファイルがプリセットされており、複雑なIP伝送システムの構築を大幅に簡略化する。特にSMPTE ST2110対応モデルはPTPグランドマスターにも対応し、放送品質の厳密な同期を実現するフルマネージドスイッチである。

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02 ローランド(#5116)
ビデオ・スイッチャー「V-160HD」Ver.3.5

ローランドブースでは、「AV設備」「イベント演出」「ライブプロダクション」の3つのテーマを軸に、ビデオ製品の活用シーンを提案。ビデオ・スイッチャーやAVミキサーの主要モデルに加え、リモート・コントロール・アプリ「VenuSet」やタイトル/グラフィックス生成ソフト「Graphics Presenter」と組み合わせた最適なソリューションを展示する。

中でも注目は、ビデオ・スイッチャー「V-160HD」Ver.3.5の展示。今回のアップデートで、ヤマハのデジタル・ミキシング・コンソール「DM3シリーズ」との連携が可能になった。Inter BEEブースでは、ローランドとヤマハの機材が並ぶ"夢の共演"を実現。オーディオと映像のシームレスな連携を実際に体感できる、見逃せない展示となっている。

V-160HDは、コンパクトな筐体にSDI/HDMI入出力端子と高度な映像合成機能を搭載したビデオ・スイッチャーで、イベント演出やライブ配信などさまざまな現場で導入されている。今回のシステム・プログラムVer.3.5では、ヤマハDM3シリーズとの連携機能を新たに追加。ユーザーからの要望に応え、2025年6月にV-80HD Ver.1.1で導入されたDM3シリーズとの連携機能をV-160HDにも搭載した。

V-160HD Ver.3.5 ヤマハDM3シリーズ連携機能概要

  • 両機をLANケーブルでつないでIPアドレスを設定するだけで接続完了
  • V-160HD内蔵オーディオ・ミキサーのレベル、ミュートON/OFFをDM3のフェーダー、ミュート・ボタンからリモート操作可能。リモート対象のオーディオ・チャンネルは任意に設定
  • V-160HDのユーザー・ボタンからDM3のシーンを呼出し可能
  • V-160HDのマクロ機能により、両機のシーンを同時に呼び出し可能

さらに、ローランドブースではV-160HDデザインのTシャツが当たるキャンペーンも実施予定。V-160HDとDM3はイベント業界やライブ配信の現場で定番機材だけに、今回の連携展示は特に注目を集めそうだ。

03 エーディテクノ(#5307)
エンコーダ/デコーダ「Dante AV Ultra」シリーズ

DAV-03SBLは、Intel Smart Display Module対応ディスプレイやプロジェクターにシームレスに統合できる次世代AV over IPソリューションである。世界的に採用が進むプロフェッショナルAV over IP規格「Dante AV Ultra」に準拠し、1GbEネットワーク上で4K UHD 60p 4:4:4の超高精細映像と8チャンネルのオーディオを、知覚できないほどの低遅延かつ完全同期で伝送する。本年のエーディテクノブースでは、発売済みのDAV-01シリーズ及びDAV-02シリーズとともにDante AV Ultra関連製品が展示される。知覚できないほどの低遅延と高精細映像をブースにて体感できる。

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04 イメージニクス(#5404)
4K HDMI対応 16入力 16出力マトリックススイッチャー「BMS-1616」

イメージニクスブースでは、4K60p444 HDMI信号に対応した16入力16出力のマトリクススイッチャー「BMS-1616」を展示。入出力ボードは4K HDMI、IMG.LINK Rev2、HDBaseTの組み換え、音声はアナログ信号とDanteオーディオに対応、本体のみでの映像音声の任意時間シーケンシャルや信号検知による自動切替、動作履歴や信号入出力イベントを記録するログ取得が可能。ブースでは、4K IMG.LINK Rev2、HDBaseT、4K HDMI、Danteオーディオの入出力ボードを実装して実機を展示。

05 AJA Video Systems(#8216)
IP映像規格 ST 2110と従来のSDI/HDMIをつなぐ小型コンバーター「IP25-R」

あらゆる映像IP伝送の入出力と変換を、1台の高密度な筐体に集約したその統合力に注目したい。1RUの筐体に4系統の双方向12G-SDIを搭載し、エンコード、デコードはもちろん、NDIとH.265間といったIPコーデック間のトランスコードも柔軟に行う。SRTやRTMPなど多様な伝送プロトコルにも対応しており、リモートプロダクションからCDNへのマルチ配信まで、1台で幅広いワークフローを構築できる点が最大の特徴である。

06 アスク・エムイー(#8404)
Kiloviewユニファイド メディアセンター「RF02」

IP映像伝送の現場で多用される機器群を、モジュールとして1台に集約できるそのシステム設計思想が注目される。「Kiloview RF02」は、最大18枚のエンコード/デコードモジュールを2RUシャーシに集約し、遠隔地からの高品質な映像伝送を省スペースかつ低コストで実現する次世代IP映像伝送プラットフォームである。KiloLink Server Proによる集中管理で複数拠点を一括制御でき、イベント配信や報道現場における運用効率を大幅に改善する。オペレーターの負担を軽減しつつ、既存のSDI/IP混在環境にも柔軟に対応する。国内では2025年7月から取り扱いを開始し、放送局・イベント・教育機関などでの導入が進んでいる。会場では実機による伝送デモを体験できる。