2607416_QBEE_BMD_top51RnWFGx

今年のBlackmagic Design(以下:BMD)は、新製品ラッシュと言ってもいいほど多くの発表が続いている。その中でも注目を集めたのがIP関連製品群だ。今回の九州放送機器展では、その新製品群が九州地区で初めてまとまって展示されていた。

ラック運用を意識した新しい筐体デザイン

最初に目を引いたのは、本体デザインの変更だ。従来のモデルは側面方向へ排気する構造だったが、新シリーズでは前面吸気・背面排気へと大きく変更された。

2607416_QBEE_BMD_01ussWBTus

一見すると小さな変更に思えるが、ラックへ多数の機器を実装する現場では非常に意味がある。データセンターなどでも採用されているエアフローを意識した設計を取り入れたことで、冷却効率を向上させているという。ラック内に機材を高密度に実装する放送設備や中継車では、熱対策は常に課題となるだけに、この変更は大歓迎だ。

ATEMがIPネイティブへ

2607416_QBEE_BMD_02YOjMce8d

今回最大のトピックは、やはりIP対応ビデオスイッチャーの登場だろう。これまでBMDのIP製品は、SDIとSMPTE ST 2110を接続するゲートウェイ製品が中心だった。しかし今回はATEMスイッチャーそのものがIPへ対応し、さらにHyperDeckシリーズも加わり、BMDだけでIPスタジオ全体を構築できる環境が整った。

これによりカメラからスイッチング、収録、編集、そしてDaVinci Resolveによるポストプロダクション、さらにはアーカイビング迄の一連のワークフローを一つのブランドで完結できるようになったことは非常に大きい。ちょっと考えてみるとこのフローをできているのはBMD以外だとソニーしか想像ができない。

いつもの"ATEM"として使える安心感

IPという言葉を聞くと、設定が難しいというイメージを持つ人も少なくない。しかし担当者が強調していたのは、「これまでATEMを使ってきた人なら、そのまま移行できる」という点だった。ATEM Miniから大型のATEM Constellationまで、基本的な操作体系やソフトウェアは共通。さらに、これまで使用していたハードウェアコントロールパネルも、そのまま新しいIPシステムで利用できる。つまり、新しいシステムでありながら、新しい操作を覚え直す必要がない。これは現場のオペレーターにとって非常に大きなメリットだ。

SDIユーザーからも注目される新製品

興味深かったのは、現在もっとも問い合わせが多い製品がIPスイッチャーだけではないということだ。特に反響が大きいのは「SDIエクスパンダー」で8系統のSDI信号を1本の100GbE回線へ集約できる製品で、既存のSDI設備を活かしながら、ケーブル配線を大幅にシンプルにできる。必ずしも2110環境へ全面移行しなくても恩恵を受けられることから、放送局やスタジオだけでなく、イベント制作会社からの問い合わせも多いとのこと。

IP化は「システム全体」を変える

さらにHyperDeckを組み合わせれば、多チャンネル収録システムも非常にコンパクトに構築できる。以前であればラック数本に及ぶようなシステムも、驚くほど省スペースでまとめられる。IP化というと「映像をネットワークで送る技術」というイメージが先行しがちだが、実際には配線の簡素化や機材構成の最適化など、現場全体の効率化というメリットが大きい。

IPは、もう特別な技術ではない

数年前までSMPTE ST 2110は、大規模放送局だけの技術という印象があったが、今回の展示を見る限りその距離は確実に縮まっている。ATEMを使い慣れたユーザーが、その延長線上でIPシステムへ移行できる。

BMDが目指しているのは「IPだから難しい」のではなく「いつものATEMが、そのままIPになった」という世界なのだろう。今年は新製品発表も非常に活発だっただけに、次のInter BEEでどんなラインアップが追加されるのか、今から楽しみでならない。