「毎年やるとは思わなかったですね(笑)」
北陸放送機器展2026は今回で第3回を迎えた。第1回から継続して開催してきた神成株式会社 AVC事業部 部長の泉悠斗氏に、これまでの歩みと今回の見どころ、そして北陸でこの展示会を続ける意味について話を聞いた。
第1回の時点から継続開催は意識していたものの、当初は毎年開催することまでは考えていなかったという。
継続してやった方がいいだろうなとは思っていました。でも、毎年やるとは思わなかったですね。最初は数年おきでもいいかなと思っていたんですけど、「毎年やってほしい」という要望があったので。もう今、来年に向けての会場選定を始めています(笑)
数年おきの開催も想定していた展示会が、来場者や関係者からの声を受けて毎年開催され、3回目を迎えた。そして今回の開催を前に、すでに次回へ向けた準備も始まっている。
そして第3回では、会場や展示内容にも大きな変化が生まれた。

「やっぱり会場ですよね」劇場を展示空間として活用
今回の大きな変化について、泉氏が最初に挙げたのが会場である。
やっぱり会場ですよね。今回は劇場ホールを使っています。技術や文化の発信拠点のような形で新しく整備された場所でもあるので、ここを使ってイベントができればいいなと思っていました。
北陸放送機器展2026の会場は、富山駅近くのオーバード・ホール/中ホール。本来は劇場として使われる空間だが、可動式客席を収納してフルフラットの平土間に転換でき、今回はその機能を生かして展示会場として利用している。
実際に会場へ入ると、劇場の中央部分に各社の展示ブースが並ぶ。通常の展示ホールとは異なる空間の中に、展示ブースとステージが一つにまとまっている。
普通の劇場だと客席があって、なかなか展示会スタイルでは使えないんですけど、ここは転換してフルフラットの平土間にできます。展示会スタイルで使えるホールというのは、全国的に見ても結構珍しい劇場だと思います
これまでの北陸放送機器展では、展示やステージなどが複数の空間に分かれていた。今回はそれらが一つの大きな空間に集まり、展示会全体を見渡しやすくなった。
今まではステージが別の空間だったり、会議室みたいなところを使ったりしていたので、一体感というところは少しなかった。今回はそこが結構、一体感のある会場になったのかなという感じがします。
会場の中央から周囲を見渡せば、どのブースに人が集まっているのか、どこで何が行われているのかが分かる。気になる展示を見つけ、そのまま隣のブースへ移動する。今回の会場は、そうした形で各ブースを回遊しやすい構成となっている。
富山駅から徒歩圏内となったことも大きな変化だ。
駅からもう歩いてすぐなので、利便性的にも良くなったんじゃないかなと思います
「映像業界はIP化が進んでいる」ネットワーク分野が拡大
今回の展示内容で大きく変わったのが、ネットワーク関連企業の増加である。
今回は例年と違って、ネットワーク系の会社も結構多く出ています。ティーピーリンクジャパンさんだったり、エレコムさんだったり、TOAさんだったり。そこがまず一つ、大きく変わったところです。
映像制作や放送の現場ではIP化が進み、カメラやスイッチャー、モニターなどの単体機器だけではなく、それらをどのようにつなぎ、伝送し、運用するのかまで含めたシステム全体を見る必要が出てきた。
泉氏も、ネットワーク分野の拡大を現在の映像業界における自然な流れと捉えている。
今、映像業界はIP化が進んでいるので、必然的な流れだと思います。
今回の会場では、映像制作/放送関連機材、オーディオ/アクセサリーに加えて、ネットワーク/ソリューションという分野が存在感を増している。放送機器展という名称から想像する従来の機材展示だけではなく、現在の制作ワークフロー全体を横断して見られる構成へと広がってきた。
さらに、もう一つ力を入れているのがクリエイター分野である。
富山からクリエイターを発信するという意味で、今回はクリエイターも2組出ています。そこもちょっと増えたところですね。
機材や技術だけではなく、それを使って作品を生み出すクリエイターにも焦点を当てる。セミナーでは、クリエイターとしての経験を持つ衆議院議員の古井康介氏を迎え、クリエイターと国会議員の双方の視点から、業界の未来やこれからのクリエイターのあり方について語るトークショーも予定する。
映像、音響、ネットワーク、そしてクリエイター。それぞれを別々に扱うのではなく、同じ場所でつなげようとしていることが今回の展示構成から見えてくる。
「北陸では最新機材を触る機会が本当に少ない」
では、なぜ北陸で放送機器展を続けるのか。その理由を象徴するのが、泉氏のこの言葉だった。
北陸では、最新の機材、カメラだったり音響機材だったり、ネットワーク機材だったりを触る機会が本当に少ないんですよね
東京ではInter BEE、大阪では関西放送機器展などが開催される。しかし、北陸から参加するには移動時間や費用が必要となる。
北陸新幹線もまだ関西まで行っていないので、関西放送機器展へ行くのも大変だし、Inter BEEに行くとしてもやっぱり一苦労です。そういうユーザー層からも、すごくありがたいと言われています。
メーカー担当者から直接説明を聞きながら最新機材に触れる。この展示会では当たり前に見える体験そのものが、北陸では貴重な機会となっている。
一方で、北陸放送機器展を開催したことによって、別の動きも生まれているという。
うちのイベントを知ってもらったことで、Inter BEEとか関西放送機器展とか、Interopとかにも行ってみようかな、という話が富山や石川で結構出るようになったんですよ。そういうほかの展示会にもつなげていけたことは、よかったなと感じています
富山で機材に触れたことをきっかけに、より大規模な展示会にも興味を持つ。地域で開催する展示会が外への関心を閉ざすのではなく、むしろ次の展示会や新しい技術へつながる入口として機能し始めている。
北陸で最新機材に触れる場所を作り、そこからさらに外へつなげる。この循環は、3年間継続したからこそ見えてきた変化の一つだろう。
「ブースをじっくり回ってほしい」スタンプラリーに込めた狙い
今回新たに用意した企画の一つが、会場内を巡るスタンプラリー抽選会だ。
会場に来て、ブースで話をじっくり聞いて回るというところが今まで少なかったのかなと思っていて。今回はスタンプラリーでブースを回ってもらって、その上で抽選会をやるという企画を用意しました。
目当てのメーカーだけを見て帰るのではなく、普段なら足を止めないブースにも立ち寄ってもらう。そこで担当者の説明を聞き、知らなかった機材や技術に触れる。スタンプラリーには、来場者と出展社の接点を増やす狙いがある。
抽選には、神成が自社開発したアプリを使用する。
実際に操作すると、ボタンを押した瞬間にファンファーレが鳴り、抽選結果が表示される。デモンストレーションで出てきたのは「USBメモリー」だった。
外れなしです。最低でもうまい棒が当たります(笑)
もちろん景品はうまい棒だけではない。マイクなどの機材に加え、国内での正式販売前となるカメラ「NearStream VM20 Pro」も用意されている。
やっぱりこの日本未発売のカメラ「NearStream VM20 Pro」ですね。海外の展示会では結構出ているらしいんですけど、日本デジタル・プロセシング・システムズさんが今後取り扱われるということで、日本に入ってきた1台を今回こっちに持ってきています。
今回会場に持ち込まれたNearStream VM20 Proは、抽選会の景品にもなっている。このカメラは会期中の9月18日16:00より行われるセミナー「VM20 Proはイベント撮影の救世主になれるのか?現場プロの本音討論」でも紹介する予定だ。
ただし、スタンプラリーで重要なのは景品そのものではない。ブースを巡る理由を作り、その途中で予定していなかった製品や技術と出会ってもらうことにある。展示会を単に「見る場所」ではなく、「歩いて、話して、発見する場所」にしようという考えが、この企画にも表れている。
「もう来年に向けて会場選定を始めています」
3回目を迎えた北陸放送機器展は、すでに次回へ向けて動き始めている。
これまでの開催を経て会場は変わり、出展分野も広がった。映像・放送機器だけでなく、ネットワークやクリエイターまでが同じ空間に集まるようになった。さらにスタンプラリーなど、来場者がブースを回りやすくする新しい仕掛けも加わっている。
そして泉氏は、今回の開催を迎える前からすでに次を見ている。
もう今、来年に向けての会場選定を始めています(笑)
この一言は、3回目を迎えた北陸放送機器展の現在地をよく表している。
最新機材を見るだけのイベントではなく、北陸のユーザーとメーカーが直接出会い、クリエイターが集まり、そこから別の展示会や新しい技術へ関心が広がっていく場所へ。泉氏の言葉を追っていくと、北陸放送機器展が目指している方向が少しずつ見えてくる。
3回目を迎えた会場では何が生まれるのか。そして、その先の第4回はどのような姿になるのか。まずは新しい会場となったオーバード・ホール/中ホールで、この2日間が始まる。