北陸放送機器展2026のLYNX Technikブースで、まず目に飛び込んできたのは黄色と黒を基調とした小さなボックスだった。カメラでもモニターでもない。並んでいたのは、映像や制御信号などを光ファイバーで伝送するためのコンバーターやモジュールである。
ドイツの放送機器メーカーLYNX Technikにとって、今回は北陸で初めての出展となる。アナログから8K、HDMIからIPまで幅広い信号フォーマットを扱う光伝送ソリューションを展開しており、ブースでは代表的な光伝送モジュールに加えて、PTZカメラを組み合わせたデモも行われていた。
IPベースの映像伝送が広がる現在、ベースバンド信号や制御信号を光ファイバーで長距離伝送することには、どのようなメリットがあるのか。そんな疑問を持ちながら説明を聞いていくと、単に「遠くまで信号を送る」だけではない、光伝送ならではのシステム構築の考え方が見えてきた。
黄色と黒の「yellobrik」に詰め込まれた光伝送
ブースに並んでいたのは、LYNX Technikのコンパクトな信号処理・光伝送製品群「yellobrik」だ。ドイツで設計・製造され、放送やプロフェッショナルAVのさまざまな信号伝送に対応する。
担当者の説明で印象に残ったのは、伝送できる信号の種類の広さだった。放送やプロフェッショナルAVの現場では、映像だけを送れば済むとは限らない。設備によって扱う信号や制御方式が異なり、それぞれに合わせた伝送経路が必要になる。
LYNX Technikでは、映像だけでなくEthernetやシリアルデータ、GPIなど幅広い信号に対応する製品をラインアップしており、用途に応じて光伝送モジュールを組み合わせられる。
小さなボックスを一つずつ見ていると単機能のコンバーターに見える。しかし話を聞くにつれ、一つの製品だけを見るのではなく、それらをどう組み合わせて必要な信号を運ぶかがLYNX Technikの光伝送を見るポイントだと分かってきた。
複数の信号を1本の光ファイバーへ
その考え方が分かりやすく表れていたのが、CWDM(粗波長分割多重)を利用した多重伝送だ。
通常、複数の光信号をまとめるシステムでは、用途に応じた各モジュールと、それらを多重化するマルチプレクサなどを組み合わせて構成する。LYNX Technikでは、多重化に必要な機能を内部に組み込んだ製品も用意し、複数の信号をまとめて1本の光ファイバーで伝送できる。
説明を聞きながら興味を引かれたのは、内部では複数の信号を扱う仕組みを持ちながら、運用する側から見ると「複数本を入れて、1本の光ファイバーで運び、先で再び分ける」というシンプルな構成にできることだった。
担当者によると、最大18波長を利用したCWDM構成に対応し、複数の信号を1本の光ファイバーへ集約できるという。限られた光ファイバーを使って複数の信号を運びたい場合、どの信号をどのようにまとめるかというシステム設計の選択肢が広がる。
PTZカメラの映像と制御を光で延ばす
今回の展示で、その仕組みを最も具体的に理解できたのがPTZカメラを使ったデモだった。
カメラから出力されるSDI映像とリモート制御用の信号をそれぞれ対応するコンバーターへ入力し、光ファイバーで離れた場所まで伝送する。受信側では再び各信号を取り出し、映像とカメラ制御の環境を構築する仕組みだ。
担当者によると、このデモで想定する構成では最大10km程度まで伝送距離を延ばせるという。カメラとコントローラーを直接接続する場合はケーブル長の制約を受けるが、その間に光伝送を組み込むことで、カメラと操作側を大きく離したシステムを構築できる。
展示台の上では、カメラ、コントローラー、数台の小さなボックスが接続されている。しかし信号の流れを一つずつ追っていくと、映像だけではなくカメラを動かすための信号まで含めて「距離を延ばす」という考え方が見えてくる。製品単体を並べるだけでなく、実際の運用をイメージできる形で展示されていたことが印象に残った。
光伝送モジュールを国内の運用に合わせてボックス化
もう一つ興味深かったのが、LYNX Technikのモジュールを用途に応じて専用筐体へ組み込み、一つの放送機器として扱える形に仕立てる構成だ。
必要なモジュールを2台、3台と専用筐体に収めることで、複数のコンバーターを個別に扱うのではなく、一つの機器として運用できる。光伝送モジュールそのものはLYNX Technik製だが、用途に合わせた筐体や実装を組み合わせることで、必要な機能を一つの機器として扱える形にまとめている。
最初に目に入ったのは黄色と黒の小さなyellobrikだった。しかしブースを見終える頃には、印象に残っていたのは製品単体ではなく、それらを組み合わせることで構築できる光伝送システムだった。
IPベースの映像伝送が広がる中でも、既存のベースバンド設備との接続や長距離伝送、複数種類の信号をまとめて運ぶ用途では、光ファイバーを利用した伝送が選択肢となる。北陸初出展となったLYNX Technikブースは、「何km送れるか」だけではなく、「何を、どうまとめて送るか」を考える展示だった。