北陸放送機器展2026の富士フイルムイメージングシステムズブースで、まず目に入ったのが4K対応プロジェクター「FP-ZUH12000」だった。
富士フイルムのプロジェクターといえば、壁やスクリーンの近くから大画面を投写できる超短焦点モデルが印象に残っている。以前にも実機を見る機会があったが、今回展示されていたFP-ZUH12000は最大1万2000ルーメンの高輝度に対応し、さらに「Zシリーズ」で初めてレンズ交換式を採用したモデルである。
ブースで話を聞いてみると、単純に「従来機より明るくなった」というだけではなかった。高輝度化によって使用できる空間の選択肢を増やし、交換レンズによって投写距離にも対応の幅を持たせる。従来のZシリーズが得意としてきた超短焦点投写にも対応しながら、より多様な設置環境を想定したモデルになっていた。
1万2000ルーメンで変わるFP-ZUH12000の用途
FP-ZUH12000は、最大1万2000ルーメンの高輝度と4K投写に対応するプロジェクターだ。なお、最大1万2000ルーメンは標準ズームレンズ「FP-ZL125」を装着した場合の明るさとなる。
担当者によると、これまでの6000ルーメンや8000ルーメンクラスでは、常設設備や照明をある程度コントロールできる環境を中心に提案してきた。一方、1万2000ルーメンまで明るくなることで、多少の外光が入る空間やイベントでの映像演出などにも提案しやすくなるという。
1万ルーメンを超えるモデルを求める声は、富士フイルムがプロジェクター事業を展開し始めた頃から寄せられていたという。展示では100インチ程度の画面に投写していたが、実際の運用では200インチ、300インチといった、さらに大きな画面での使用も想定する。
もう一つ興味深かったのが色再現だ。FP-ZUH12000では従来の光学エンジンを進化させ、色再現や階調表現を向上。担当者によると、特に赤や黄色といった暖色系の再現性を従来モデルから改善したという。開発には、富士フイルム社内でデジタルカメラの画像評価に携わる部門も参加したと説明していた。
1万2000ルーメンという数字だけでなく、大画面に投写したときに映像をどう見せるか。カメラや画像処理を手掛ける富士フイルムの技術がプロジェクターにも生かされているという話は興味深かった。
超短焦点だけではない。レンズ交換で変わる投写距離
FP-ZUH12000でさらに気になったのがレンズ交換への対応である。「Zシリーズ」で初めてレンズ交換式を採用し、超短焦点ズームレンズ「FP-ZL034」、短焦点ズームレンズ「FP-ZL050」、標準ズームレンズ「FP-ZL125」の3種類を用意する。
実機に装着されていたFP-ZL034を見ると、プロジェクター本体から大きく張り出したレンズの形状が目に入る。カメラ用レンズを見慣れていても、プロジェクター用として見ると独特の存在感がある。
ブースでの説明では、超短焦点の構成で約75cmから100インチを投写できるという。一方、別のレンズを組み合わせれば、同じ100インチでも約1.5m、さらに別の構成では約2.5m離れた位置から投写できるという説明だった。
最初は「近くから大きく映せるなら、それで十分ではないか」と思った。しかし話を聞くと、設置場所によっては近すぎることが問題になる。客席の上など、あらかじめプロジェクターの設置位置が決まっている施設では、スクリーンとの距離に応じたレンズが必要になるからだ。
超短焦点だけに限定せず、設置環境に応じて投写距離を選択できる。FP-ZUH12000を実際に見て、従来のZシリーズから大きく変わったと感じたのはこの部分だった。
今度は「映すレンズ」から「撮るレンズ」へ
FP-ZUH12000の話を聞き終え、ブースでもう一つ気になっていた展示へ移った。プロジェクターでは映像を投写するためのレンズを見ていたが、今度は映像を撮るためのレンズである。
展示されていたのは、2/3型センサーを搭載した放送用カメラに対応する4K放送用ズームレンズ「FUJINON UA22x4.8BERD」。22倍ズームで、焦点距離4.8mmから106mmまでをカバーする。
最近の富士フイルムの映像制作用レンズというと、大型センサーに対応する「Duvo」シリーズに目が向きがちだった。自分自身も展示会ではDuvoを紹介する機会が多かっただけに、今回B4マウントの放送用レンズを前にして、あらためて従来の放送システムで使われるレンズへ目を向けることになった。
担当者によると、放送局や音楽ライブなどでは、現在も2/3型B4マウントのカメラと放送用レンズが多く使われているという。その中でUA22x4.8BERDが狙ったのが、広角側と望遠側を1本でカバーする使い勝手だった。
UA22x4.8BERDのワイド端は4.8mm、テレ端は106mm。ロケでは、撮影内容によって標準ズームとワイドズームの2本を持ち出す場合があるが、このレンズは4.8mmの広角から106mmの望遠までを22倍ズームでカバーする。
これはスペック表だけを見ていると見落としやすい部分だった。4.8mmという数字だけなら「広角に強いレンズ」と捉えてしまう。しかし106mmまでズームできることを合わせて考えると、狙いは単なる広角化ではない。レンズ交換や複数本の持ち運びを減らしながら、多様な画角に1本で対応することにある。
全長は約251mm、質量は約2.17kg。ズーム全域で4K光学性能を確保し、16bitエンコーダーも搭載する。従来の放送用レンズの運用を踏襲しながら、4.8mmから106mmまでを1本でカバーする機動性が特徴となる。
「映す」と「撮る」をつなぐ富士フイルムの光学技術
今回、FP-ZUH12000とUA22x4.8BERDを続けて見たのは偶然だったが、振り返ってみると、この2製品を同じブースで見られたこと自体が興味深かった。
最初に見たFP-ZUH12000では、「プロジェクターはスクリーンの近くに置けるほど便利」という自分の先入観が、交換レンズの話を聞くことで変わった。近くから投写できることだけではなく、設置場所に合わせて適切な距離を選べることも重要だった。
その直後に見たUA22x4.8BERDでも、似たことを感じた。4.8mmという広角側の数字に目が向いていたが、実際に話を聞いて印象に残ったのは、106mmまでを含めて1本のレンズとしてどう使えるかという部分だった。
展示会では新製品のスペックに目が行きがちだ。しかし実機を前にして担当者の話を聞いてみると、その数字が現場で何を変えるのかが見えてくる。今回の富士フイルムブースでは、映像をスクリーンへ送り出すプロジェクターと、映像をカメラへ取り込む放送用レンズという異なる製品から、レンズによって現場の自由度を高めるという共通した考え方を見ることができた。